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zoom RSS 『怪談』:因果因縁、愛憎愛欲=日本の怪談噺の王道

<<   作成日時 : 2007/07/22 22:23   >>

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中田秀夫監督、尾上菊之助黒木瞳主演『怪談』のレビュー。

日本の怪談噺の王道は、愛憎、愛欲、因果、因縁の物語です。
未知の恐ろしいなにものかが現われて私たちを恐怖に陥れる物語ではなく、愛と欲に目がくらみ犯した罪のその果てが、因果は巡る糸車、廻り廻って己の元へ、という一種教条的な側面があると同時に、ひとつの出来事が次から次へと拡大し、終いには修羅場を繰り広げるという物語のエスカレーションも特長です。

今回の作品は、若い煙草売り・新吉が年増美人の富本節(*1)の師匠・豊志賀と恋仲になるが、二人は親の代からの因縁があり・・・さらに、豊志賀の新吉への執着はすさまじいものがあり、新吉から別れ話を切り出された際に三味線の撥(ばち)で付いた顔への傷が悪化し、結果死に至る間際に「このあと女房をもてば必ずやとり殺すからそうおもえ」に書き残して死んでしまう。

さて、この物語、「因果因縁」と「愛憎愛欲」のどちらに起因しているかというと、巻頭に講談師一龍斎貞水の語りと二人の親の因縁をモノクロで描いていることから、「因果因縁」の物語の様相が濃い。

新吉・豊志賀の色恋の「愛憎愛欲」がベースとなっていない分、新吉に非が100%ある訳ではない分、後半、新吉を巡って繰り広げられる愁嘆場・修羅場で、観客としては「憎き新吉」となっていかない(少々同情したりもする)。これは、『四谷怪談』の民谷伊右衛門が自身の利得・利欲のために岩の愛情を利用したのと比べれば判るはず。

また、満たされなかった豊志賀の愛欲の物語としては、エスカレーションの度合いが甚(はなは)だしすぎて、徐々に共感できなくなってしまう。

三遊亭円朝の落語を忠実に(とはいえ未だ全てではないとも聞いたが)描いたことは評価すべきだが、ここは映画的な翻案も欲しかったところ。

とはいえ、 こけおどしのショッカー演出を極力排除して(一部無きにしも非ずだが)、蚊遣りなどを透した画面づくりや真綿で締めるがごとくのジワジワとした演出は特筆できるし、豊志賀役の黒木瞳は相変わらず妖艶であり、前作『犬神家の一族』ではその色男ぶりが仇(あだ)となった尾上菊之助も今回の艶は正に「水もしたたるいい男」振りである。

本格的な日本の怪談噺を堪能したこともあり、全体としては★★★☆としておく。

<追記>
*1: 富本節(とみもとぶし)とは、浄瑠璃の流派のひとつで、常磐津節(ときわずぶし)から分かれたもの。
公式HPでは、豊志賀のことを富本節の師匠と紹介している。いくつかの媒体で「三味線の師匠」と紹介しているのは、劇中で三味線の稽古はつけていないことからも明らかに誤り。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
MYムービー拝見致しました。個人的には菊之助の超甘い顔立ちは好みではありませんが、この映画の設定には大いに合っていたとは思います。立ち居振る舞いも、さすが梨園の御曹司だけあって、実にきれいだったし・・・・・。
ただそれに比べて女性陣がどうも。黒木瞳は妖艶なのだけど、もう少し演技に重さがあってもよかったような気がするし、他の女性はTVの時代劇を見ているような・・・。
松坂慶子がもっと若くて細かったら豊志賀役にと思ってしまいました。
ぷ〜太郎
2007/07/23 16:20
毎度コメントありがとうございます。
日本映画の女優陣って、意外と層が薄いのでしょうね。
瀬戸朝香などは何だか最近続けざまに観た記憶があります(『それでもボクはやってない』『DEATH NOTE』と最近ひっぱりだこな印象があります)。
りゃんひさ
2007/07/23 22:08

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