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zoom RSS 『CATERPILLAR キャタピラー』:ぐつぐつと煮詰まった人間の映画 @ロードショウ・一般劇場

<<   作成日時 : 2010/10/10 00:37   >>

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公開からかなり日を経ましたが、漸く鑑賞の運びとなりました。
タイトルの『キャタピラー』とは「芋虫」のこと。
江戸川乱歩の同名小説に着想を得ているのですが、方向性は異なっているのでしょう。
反戦映画、というくくり方で紹介されることが多いのですが、それにも何か違和感を感じます。

個人的には、「人間」の映画。
それも、ぐつぐつと煮詰まった人間の映画、という印象でした。

ぐつぐつと煮詰まった感じがするのは、周囲が戦争の坩堝(るつぼ)で、やれ、お国のため、と邁進する中で、四肢を失い、軍神さまとして帰還した夫と、それを世話する妻が、食べて寝て食べて寝ての生活で、人間としての感情を取り戻していくからです。

妻は、当初、四肢を失った夫に対して、狂ったように嘆き哀しみます。
しかしながら、夫の世話をするにしたがって、妻がいなければ何もできない夫に対して、主従の関係を入れ替えていきます。
その上、軍神さまという立場を利用して、村での生活の糧にするとともに、夫を辱めていきます。

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その逆転した主従関係は単に逆転しているだけでなく、「軍神さまの妻」という立場がなければ生きていけない妻にとっては、軍神さまである夫はなくてはならない存在であり、そこがまた、もどかしくも遣る瀬無いところでもあります。
このどちらが主、どちらが従と明確に線引きできない関係が、興味深いところです。

さて、それに対して、戦時下の村は、お国のための御旗のもとに生活するわけですから、天皇を主とする主従の関係は判りやすい。
ですが、盲目的でありますから、主従の「関係」だなんて、端から思っているはずもない。

ただただ、四肢を失った軍神さまが、床の間に飾られた天皇のご真影と授かった勲章と自らの武勲を称える新聞記事に目を向けることで、天皇との関係を見出し、納得し、自らの存在意義を確かめにすぎないのです。
床の間に飾られた三つのものが、彼の後ろ盾なのです。

四肢を失った軍神さまと妻の関係、軍神お国と国民の関係、このふたつを対比させているのが、この映画の特徴でありましょう。

ぐつぐつと煮詰まった軍神さまと妻の関係を他所に、戦争の末期には、武勲を称えた新聞記事は日に焼けて色褪せ、判然としなくなります。
そして、敗戦。

人間宣言を行った天皇の後ろ盾を失った元軍神さまと、主従の関係から解き放たれた妻の姿の対比も鮮やかです。

あの戦争をとおして現れた人間の醜さや愚かさ、そしてそれとは真逆の逞しさと、そんなぐつぐつ煮詰まった人間の姿を描いた映画だと思いました。

評価としては★4つです。



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