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zoom RSS 『奇跡』:いま生きているということ @ロードショウ・シネコン

<<   作成日時 : 2011/06/16 23:07   >>

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九州新幹線全線開通に乗じて(というかアピールを目的にしてというか)企画された映画なのでしょうが、是枝監督の巧さがひかる佳作に仕上がったと思います。

両親の別居を機に、鹿児島と福岡で暮らすことになった兄弟。
小学6年生で母親とともに、母親の実家・鹿児島で暮らす兄。
父親とふたりで、福岡で気ままに暮らす弟。
再び家族四人で暮らしたいと願う兄の許に、九州新幹線の一番列車がすれ違うさまを目撃すれば願いが叶うというハナシが届いてきて・・・

大きな出来事は起こりません。
実に淡々と描いていきます。

ですが、是枝監督、実に計算している。

「奇跡」ということ。

核になるのは谷川俊太郎の詩「生きる」。

生きるということ。
いま生きるということ。
それは・・・

という、小学校の教科書に登場するあの詩です。

「奇跡」=「生きる」ということ、生命のエネルギーということに収斂していきます。

前半、鹿児島で暮らす兄が繰り返しつぶやく言葉「意味、判からへん」。
火山灰が毎日降る鹿児島、「なんで(どうして)火山灰が降るのだろう」とつぶやく言葉。
それは、いつしか、「そんななかで、なんで、そんななかで暮らしているのだろう」という意味に変化していきます。

そして中盤、兄たちが九州新幹線の一番列車のすれ違いを見るためにサボる授業の教材が谷川俊太郎の「生きる」の詩。
兄が朗読し、詩の内容が黒板に板書されています。

生きるということ。
いま生きるということ。
それは・・・の「それ」に赤丸が付けられて。

そしてクライマックスの「奇跡」。
兄は鹿児島の桜島が噴火して、そこに暮らすひとびとがどうしようもなるような状況になれば、再び家族四人で鹿児島を離れて暮らせるのではないかと願っていました。

しかしながら、兄の気持ちは変わっていきます。
離れて暮らす父親が電話口でふと漏らした言葉で。
「周りの生活より、もっと広いこと、もっと大事に思って欲しいことがある。そうやな、音楽とか世界とか」。
それに加えて、一番列車がすれ違う最寄り駅から見えた普賢岳。
噴火で死者を出した普賢岳の話を駅員から聞いたことで。

九州新幹線の一番列車がすれ違った瞬間に映し出されるのは、それまで兄・弟が暮らしてきた些細なものたち。

スイミングプールの水着。
ふたりで食べたポテトチップスの空き袋。底にたまったクズクズのポテチ。
一番列車目撃旅のために苦労して集めた自動販売機の下に落ちていた百円玉・・・などなど。

新幹線がすれ違う爆発的なエネルギーを、生命のエネルギーに喩(たと)え、「生きる」ことを「奇跡」に喩えます。

家族より、「もっと広いこと」を願う兄。

淡々としながらも、そこはかとない感慨があります。

3.11の大震災のあとだけに、その感慨も一入(ひとしお)であります。

評価は★4つです。

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2011年映画鑑賞記録

 新作:2011年度作品
  外国映画11本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 1本)
  日本映画 7本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 1本)←カウントアップ

 旧作:2011年以前の作品
  外国映画24本(うち劇場 4本)
  日本映画 1本(うち劇場 0本)
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ご無沙汰しています。
本作は良かったですね〜、しばらく余韻に浸りました。
脇を固めている強力なキャストがそれぞれの役割をきっちりこなして、しっかりした出来になっていました。
私は★五つです。
りゃんひささんのレビューを拝読、次の日に観に行きました、ありがとうございました。
じゃむとまるこ
2011/06/19 10:14
じゃむとまるこさん、コメントありがとうごあいました。
拙レビューが鑑賞の妨げにならなくてよかったです。
脇を固めるひとびと、『歩いても 歩いても』の面々でしたね。
是枝監督と息がよっぽど合うのだと思いました。
りゃんひさ
2011/06/19 14:51

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