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zoom RSS 『ベニスに死す』:真の美に魅せられた男の滑稽で至福の死 @ロードショウ・ミニシアター

<<   作成日時 : 2011/10/02 15:14   >>

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ルキノ・ヴィスコンティ監督の代表作『ベニスに死す』。
ニュープリントでのリバイバル上映。
初めて観たのはわたしが美少年タジオぐらいの歳のとき。
いまや初老のグスタフ・フォン・アッシェンバッハ教授の歳になってしまいました。

歳月を経て改めて観ると、なんとも、非常に判りやすい映画ではありますまいか。
さすがに若かりし頃、タジオぐらいの美少年だったのなら、判ったのかもしれませんが・・・

主役のアッシェンバッハ教授はドイツ・ミュンヘンの作曲家。
人間の英知、尊厳を持って、弛(たゆ)まぬ努力をすれば、究極の美に到達できると考えていた。
しかしながら、彼が目指した音楽は、一般市民には受け容れられず、さらには幼い娘を亡くし、妻もなくしてしまいました。
心労が重なり、静養のためにイタリア・ベニスを訪れます。
ベニスのリゾート地リド島のホテルで眼にしたのは、家族でホテルに訪れていたフランスの美少年。
その美しさに目を奪われてしまいます・・・

映画は、現在と過去を行き来する構成をとっており、当初、アッシェンバッハ教授の背景が判らないため、少々判りづらいかもしれません。
ですが、彼の過去が判るにつれて、彼の戸惑いも理解でき、共感できるようになります。

すなわち・・・

人間の英知、尊厳、弛まぬ努力などと係わらず、自然に生まれた美。
美に魅せられ、それは、恋に落ちる瞬間です。
あれほど、妻と娘を愛していた初老の男が、美少年に心を奪われるのです。
過去の自分自身を否定するとしかいえない、この感情。
到底、受け容れることはできず、拒否し、ベニスから逃げ出そうとします。

しかし・・・

ミュンヘンへ送る手続きをしたはずの荷物一式が、手違いから北イタリアのコモ湖へ送られることになってしまいました。
なんということ。
ミュンヘンに帰るな、ベニスに残れ、という、天の自然の采配ではありますまいか。
ベニスに残り、この新たに湧いて出てきた感情を受け容れることに決めたとたんに、歓びが溢れてきます。
人目を憚(はばか)らず、美少年を見つめ、心の内から音楽が湧き出し、五線譜に書き留めていきます。

ですが・・・

ベニスの街にはコレラが蔓延し始めています。
アッシェンバッハ教授は、美を感じ、あの感情を受け容れ、生きる喜びを感じ始めた矢先に、死の恐怖に怯えます。

あの美しい少年を失いたくない。
妻や娘のように亡くしたくない。

陽気な音楽に彩られたベニスの街に暗い影を感じ、奔走をし、美少年の一家にベニスを去るように忠告をします。

そのとき、アッシェンバッハ教授は、はじめて美少年に触れます。
微かに、やさしく、その美しい髪に。

そして・・・

アッシェンバッハは美の対象と一体化すべく、若さを取り戻そうとします。
一家がベニスを去ることを知った日、彼は浜辺で息を引き取ります・・・


ヴィスコンティ監督は、アッシェンバッハ教授の心の動き、感情をゆったりと丁寧に格調高く描いています。
アッシェンバッハ教授の心の動きが判ると、そのさまは、少なからず、滑稽であります。

美少年を見つめてはならないと押し殺した感情。
しかしながら、一瞥でも見てしまう、止めることができない感情。
美少年に見返されてどぎまぎしてしまう感情。
ベニスを離れなくてすむ、と思ったときに、図らずも湧いて出てしまう喜びと微笑などなど。

そして迎える死は、若作りをした初老の男性という、見た目だけでいえば醜悪なのかもしれません。
ですが、アッシェンバッハ本人にとってその死は、美と喜びに満たされた至福の死であります。

若い頃に観たときは、理解できなかったのですが、歳を経て改めて観ると、非常に判り易く、頗(すこぶ)るつきの面白さでした。

評価は★5つです。

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2011年映画鑑賞記録

 新作:2011年度作品
  外国映画33本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 6本)
  日本映画12本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 2本)

 旧作:2011年以前の作品
  外国映画34本(うち劇場 6本)←カウントアップ
  日本映画 8本(うち劇場 0本)
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ご無沙汰しています、私も昨日「ベニスに死す」ニュープリント版を観てきました、素晴らしいレビューですね。
私も本作は何度も観ていますが、若いころには理解できなかったことの多さに驚かされます。
ダーク・ボガード、一世一代の名演です。
私もかつてレビューしていたのですが、大いに不満な内容で削除しています。
簡単には言い表せない深さを持った映画です。
じゃむとまるこ
2011/10/03 19:54
じゃむとまるこさま、コメントありがとうございます。
レビューを褒められると嬉しくなります。
やはり、観る年代によって、判る/判らない映画というのはありますね。
ちなみにヴィスコンティ作品のMyベストは『山猫』です。

りゃんひさ
2011/10/05 22:41

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