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zoom RSS 『わが母の記』: 号泣厳禁、抑制の効いた情動 @試写会

<<   作成日時 : 2012/04/03 23:27   >>

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久し振りに試写会で観ました。
原田眞人監督の、作家井上靖とその母を題材にした物語です。

巻頭、いきなりビックリしました。
通りを挟んで、豪雨降りしきる中で、軒下で向かい合った男女。
片方は子供を連れた若い母親、もう片方は中学生ぐらいの少年。

シチュエーションは判らずとも、撮り方は小津安二郎監督『浮草』のワンシーンそっくり。
原田眞人監督が小津安二郎に挑戦したのか、と思わせるオープニングです。
このシーンが、少年と母親との長年を経た再会場面だということは後々判るのですが、このシーンの緊迫感はここ数年の日本映画では漲るばかりの迫力であります。

『浮草』では、この豪雨軒下では男女の罵り合いが始まるのですが、この映画ではひとことも発せず、情感を抑えた映画だということを指し示しています。

映画は、幼い頃に母親に見捨てられたと思っている長男と、息子を捨てたことなどないと思っている母親との意志の疎通の物語です。
母親は徐々に老いていき、いまでいう痴呆症の症状を示していますが、息子を捨てたことなど決してなく、縁者に奪われたものだと思っています。
薄れていく記憶の中で、思い出すのは、幼いときの長男のこと。

母が息子を捨てたのかどうかは映画の終盤で明らかにされるのですが、この映画では、そんなシーンでもサラリと描いていきます。
役者の演技を抑え、ロングで引いた画の中で、情感や情動を描いていくのであります。

ふむふむ、と思ったのは、巻頭しばらくして語られる主人公の父親の死とその葬式の場面です。
新仏をまつった墓に参る家族。
その背景で大きくたゆたう雲。
ゆったりとした雲の動き。

おおぉ、この演出は、ジョン・フォードではありますまいか。
しっとりと、泣かせどころ満載な題材を原田眞人監督は役者の情感を抑えて、画作りと編集のリズムで魅せようとしています。

号泣厳禁のこの姿勢、大いに評価をすることとして、★4つとしておきます。

 

 

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2012年映画鑑賞記録

 新作:2012年度作品
  外国映画 4本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 0本)
  日本映画 4本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 0本)←カウントアップ

 旧作:2012年以前の作品
  外国映画11本(うち劇場 0本)
  日本映画 4本(うち劇場 2本)
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内 容 ニックネーム/日時
『わが母の記』
観させていただきました。
心の動きのような、雲の動き。雨の日もあれば、晴天もある。
次第に変化してゆく、登場人物おのおのの、
感情のやりとりの見せ方が上手いと思いました。また、伊上洪作という人物だからこそ、ここまでの家族のつながりができたのではと思います。母、妹二人、妻、三人の娘。七人の女性
のはざまで上手く個々を尊重する。
一見、頑固者でも、行くあてない瀬川を引き取きとったり、三人の娘をそれぞれの特徴に合わせて良き方向へみちびいたりするあたり、なかなかな人物であると思います。洪作の三人の娘が自然に祖母の八重を受け入れ、痴呆になりかけの時点でも、受け入れていく。ここが、特に
共感しました。特に琴子は一番の理解者である。ふとしたきっかけや、ふと漏れた言葉から、気になってたこと、知りたかったことなど、人生の真実が見えてくる。母さんには、母さんなりの考えと想いがあった。
テンポのいい流れでそれなりの年月も不自然なく、自然に事が進行してゆく演出力はなかなかです。琴子と瀬川 いいふたりだなあ!!
そして、特ににっぽん丸から飛び出て、沼津の海の母のもとへ向かうところ、やはり何があっても親子だなと。押しつけでなく、自然な時の流れが答えをくれる。この家族がうらやましい。大きな自然の中で、精一杯生きる人達。
見ごたえ十分な映画ですね。
そして、八重を演じる樹木希林さんは絶妙です。志賀子を演じるキムラ緑子さんも。
★4つ納得です。









mizu223
2012/05/02 04:38

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