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zoom RSS 『デビルズ・ノット』:だれもが悪魔な、米国の恥部・暗部を描く @ロードショウ・単館系

<<   作成日時 : 2014/11/21 23:21   >>

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『スウィート ヒアアフター』『アララトの聖母』のアトム・エゴヤン監督の最新作『デビルズ・ノット』を鑑賞しました。
謳い文句が「悪魔は、だれか。」なので、1990年代に米国中南部のアーカンソー州で起こった猟奇事件の真相に迫るサスペンス映画かと思いきや・・・という映画。
さて、映画。

1993年、夏の始まりのアーカンソー州の田舎町。
三人の男児が自転車で町はずれの森に出かける。
が、三人は一向に帰って来ず。
町中総出で探索に出たところ、翌日、全裸で両手両足を縛られた三人の遺体が、森を流れる川の中から発見される・・・

で、犯人はだれか・・・
という映画ではないのは冒頭述べたとおり。

警察は、当初、流れ者ののアイスクリーム売りの青年に嫌疑をかけたが、早々に矛先を変えて、近くに住むヘヴィメタル好きで黒づくめの少年を含む三人の少年を容疑者として逮捕し、早々に検挙してしまう。
少年のうちひとりは発達障害で、満足に尋問に答えられないにも関わらず、だ。

そう、この映画は、現代でもまだ根強く残る米国の暗部・恥部を描いた映画であり、犯人探しのミステリーでは決してない。

そのような観点でみると、この映画は興味深い。

冒頭の、少年たちは殺されて数時間と思しき時刻に、血まみれ泥だらけでキャットフィッシュ・レストランにやってくる(逃げ込んでくる?)黒人青年を除き、黒人が登場しない。
その他の登場人物たちは、真面目に教会に通う信者の白人たち。

いわゆるプア・ホワイトのひとびとである。

彼らには、異分子を排除排斥しようとする偏見・予断は強く、異分子を排除することで、貧しいコミュニティの秩序が保たれているのかもしれない。

なので、謳い文句が示す「悪魔」とは、特定のだれかを指すのですなく、このコミュニティに暮らすひとびと全員であり、それを黙認・許容している米国そのものである、といえよう。

そう考えると、興味深い人物がひとり、登場人物にいる。

リース・ウィザースプーン演じる、被害者の母親のひとり。

彼女は、生前の息子のことを思い出し、テレビカメラの前で笑顔をこぼしてしまう。
喪中であることを理由に、それを夫は見とがめ、厳しく釘をさす。
そう、それは、異分子ならないように、ということ。

裁判を傍聴する彼女は、杜撰な調査に(静かに)憤慨するが、それも夫にとがめられてしまう。

心の平静を得ようとして、それまで受けていなかった教会での儀式「洗礼」も受けるが、結局のところ疑義も晴れず、心の平安も得られないまま、容疑者たちの判決を聞いてしまう。

彼らの犯行だとは信じられないが、さりとてどうすればよいのか、途方に暮れ、生す術もなくしてしまう・・・
それは、常識をもって観ている我々と同じ反応だろうと思う。

そう、いまでもまだ、こんな「魔女狩り」もどきが米国に残っているのかと考えると、遣る瀬無くなってしまう。

評価は★3つ半としておきます。

<追記>
アトム・エゴヤン監督は他の諸作と異なり(『クロエ』に続いて)脚本を書いていないので、今回は雇われ監督の立場だろう。
アルメニア出身の両親を持ち、エジプト・カイロに生まれ、カナダで育った彼は、そんな米国の恥部・暗部について、特に何かを加えることもなく、特に何かを引くこともなく、撮ったのだろうと推測する。
まぁ、米国出身の監督だったら、こう淡々とは撮らなかったでしょうね。



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2014年映画鑑賞記録

新作:2014年度作品:86本(日韓合作1本あり)
 外国映画55本(うちDVDなど 9本)←カウントアップ
 日本映画32本(うちDVDなど 0本)

旧作:2014年以前の作品:145本
 外国映画118本(うち劇場15本)
 日本映画 27本(うち劇場 5本)
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「デビルズ・ノット」
デビルズ・ノット…悪魔の結び目。永遠に絡まり続ける…。決して後味がいい作品ではない。冒頭からして男の子の子持ちの身として心臓がばくばく。恐れていた最悪の結末がやってくるが、実は本作の問題はそこから始まる…。1993年、アメリカのアーカンソー州ウエスト・メンフィスで、8歳の男の子が3人、自転車で出掛けて夜になっても戻って来ない。町は総出で行方を探すが、「悪魔の巣窟」と呼ばれる森の奥の沼地の底から、3人は無残な遺体となって発見される。全裸で。暴行され。靴紐で縛られ自由を奪われたまま。この3人と途中ま... ...続きを見る
ここなつ映画レビュー
2014/12/09 15:27

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
りゃん久さんのレビューはとても参考になりました。
ありがとうございます。
アーカンソーはアメリカでも最も保守的な洲ですから村社会独特のものがあるようですね。
jyamutomaruko
2014/11/22 10:12
あ、大変失礼しました、このところ老眼がすすみ、変換間違いに気が付かないことが多くなっています。
お名前を間違えるなど申し訳ございません。
それと洲→州ですすみません・・・汗
jyamutomaruko
2014/11/23 01:34
jyamutomarukoさま、コメントありがとうございます。
誤字など気にせず、今後ともご贔屓くださいませ。
りゃんひさ
2014/11/23 17:49
こういう閉鎖的社会は、アメリカに限らず、どこの国にでも存在します。八つ墓村のモデルともなった津山33人殺傷事件も、もしかしたら背景にはこういう社会があったかもしれませんね。
ぷ〜太郎
2014/12/07 00:03
こんにちは。当方のブログにご訪問&コメントを下さりありがとうございました。
単なるミステリーではないこの作品、大変見応えがありました。
でも、…暗い!こういう猟奇的な犯罪は無くなれば良いのだけれど。
ここなつ
2015/01/28 07:58

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