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zoom RSS 『イーダ』:引き裂かれた国で、引き裂かれてしまったひとの決意を描く秀作 @名画座

<<   作成日時 : 2015/04/07 16:46   >>

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今年の米国アカデミー賞で外国語映画賞を受賞したポーランド映画『イーダ』。
昨年ロードショウの際に見逃していたのが、近くの名画座へ廻ってきました。
モノクロ、スタンダードのこの手の映画は、DVDでの自宅鑑賞ではどうも・・・というわけで、勇んで出かけました。
さて、映画。

1960年初頭のポーランドの寒村。
カトリック修道院で育った見習い尼僧アンナは、正式に修道女となる誓願式を前に「唯一の肉親である伯母に逢ってはどうか」と院長から勧められる。
地方都市で検察官をしている伯母ヴァンダのもとを訪ねると「あなたの名前は、イーダ・ベルシュタイン。ユダヤ人だ」と告げられる。
イーダは、伯母とふたりで、両親の墓所を探す旅に出かける・・・

じつに静謐な映画。

登場人物を画面下半分(もしくは4分の1)に収める構図をフィックスのキャメラで撮る。
セリフも少なく、ストーリーは単純でも、ポーランドに馴染みのない日本人には判りづらい作品です。

ポーランドといえば、アンジェイ・ワイダやロマン・ポランスキーの監督が頭に浮かぶ。

映像を通して社会と戦うアンジェイ・ワイダ。
エキセントリックで神経過敏ともいえるロマン・ポランスキー。

パヴェウ・パヴリコフスキ監督が撮ったこの映画は、そのどちらとも異なる。
しかし、どこか似ている。

独特の構図は、どういえばいいのだろうか、神の視点とでもいえばいいのか、すこし離れて視ている感じ。
しかし、「凝視」している。
静かな神経過敏(ポランスキー的)。

そして、淡々と進んでいく物語は、ポーランドの過去を現在の視点で見つめ直す感じ。
声高ではないワイダという感じ。

物語のなかで少しずつ判ってくるのだけれど、「ポーランド=ドイツ・ソヴィエトから蹂躙され続けた国」というイメージがあるのだけれど、そう単純なものでないことが判る。

ポーランド人によるユダヤ人殺害の事実。
戦時下の一言で片づけられない事実。
なぜなら、ユダヤ人はポーランドの敵国ではない(そもそもユダヤ人には国がない)。
戦時下を利用してそれまで根強かった反ユダヤの感情が噴出してしまった、ということ。

しかしながら、そんな世にもヒューマニズムはあり、カトリック教会がユダヤ人の孤児たちを引き取り、カトリック教徒として育てた。
ユダヤ教とカトリック・キリスト教とは相容れないものであるにもかかわらず。

この物語は、ユダヤとカトリックのあいだで引き裂かれてしまったアンナ/イーダが、ひとりの「人間イーダ」として教会に戻っていく話といえる。

だから、ラストシーン、教会へ戻っていくイーダを正面からとらえたショットだけが、通常のバストアップサイズで激しく揺れているわけである。
この「移動撮影によるキャメラの揺れ」が、イーダの「決意と、人間としての揺れ」を表している。

教会の神のもとへ戻るのではなく、人間として戻ることは、伯母ヴァンダとともに旅立つ際のヴァンダの台詞にも表現されている。
両親の墓所を探すことが、「神が存在しないと知ることになってもか?」

*----*

引き裂かれてしまったのは伯母のヴァンダも同様。
ただし、彼女の場合は「社会の中で」ということだった。

第二次大戦中、ドイツとソヴィエトとで分割されていたポーランドは、戦後、共産党による統一国家となる。
統一されたとはいえ、それまでの反ユダヤの感情が根強い。
そんな中で、ヴァンダは検察官という国家の仕える身となる。

映画では描かれないが、凄まじい重圧と自由に対する欲求。
それが彼女を、自堕落といっていいほど奔放な生活へと導いていったのでしょう。

そして、イーダとともにイーダの両親の墓所を探す旅の中で、イーダの人間として決意をみた後、自らの命を絶つ。

葬儀の席で、ヴァンダに贈られる言葉「彼女のようなひとびとが、いまのような安定した国家をつくった」は、なんとも皮肉に聞こえてきました。

ドイツとソヴィエトにより引き裂かれた被害者国ポーランド。
反ユダヤが高じて、ユダヤ人虐殺に至った加害者国ポーランド。
引き裂かれた国のなかで引き裂かれてしまったイーダとヴァンダ。

その上で、人間として歩き出す。
そのことを、静謐に描き出した秀作だと思います。

評価は★4つとしておきます。



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2015年映画鑑賞記録

新作:2015年度作品:17本
 外国映画13本(うちDVDなど 0本)
 日本映画 4本(うちDVDなど 0本)

旧作:2015年以前の作品:47本
 外国映画36本(うち劇場11本)←カウントアップ
 日本映画11本(うち劇場 3本)
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