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zoom RSS 『きみはいい子』:視線と背中で大切な主題を描いていく秀作 @ロードショウ・シネコン

<<   作成日時 : 2015/07/05 11:02   >>

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昨年度の個人的ベストワン『そこのみにて光輝く』の呉美保監督最新作『きみはいい子』、ロードショウで鑑賞しました。
河瀬直美、西川美和、タナダユキなどの女性監督のなかで、いまいちばん信頼している監督なので、今回も!と勇んで出かけました。
その期待にたがわず、本作も素晴らしいものでした。
さて、映画。

海にほど近い、丘の上にある小学校。
新任教師の岡野(高良健吾)、根は真面目なんだけれど少々優柔不断、周りに振り回されている感じ。
なので、生徒の母親からの苦情をまともに受け止めすぎたり、生徒たちのわがままも受け容れすぎてしまう。

小学校近くの大規模マンションに住む水木(尾野真千子)。
夫は海外へ単身赴任中で、幼い娘とふたり暮らし。
近所のママ友ともそつなく交際っているが、どうしても気持ちがささくれ立ってしまうときは、娘に手をあげてしまう。
そんな彼女のことを、同じく幼いふたりの子どもを育てる陽子(池脇千鶴)は薄々気づいている。

小学校近くの一軒家でひとり暮らす老女・佐々木あきこ(喜多道枝)。
少々ボケが始まっており、知らず知らずのうちにスーパーで商品を持ち帰ろうとして見咎められてしまう。
唯一癒されるのは、学校の行き帰りの生徒を見ること。
そんななか、自閉症の男の子だけが、あきこに「こんにちは、さようなら」とあいさつをしてくれる。

というハナシ。

以上のような三様のエピソードがほぼ並行して描かれる。
いわゆる群像劇だと、これらのエピソードが絡み合って、最後にピタリとひとつになったりするのだけれど、この映画ではそんなことはない。
そういうおもしろさに着眼した映画ではない。

ただし、一貫した主題は核として存在する。

「誰かにやさしくしたことは、自分にも戻ってきて、やさしくしてくれる」

些細なこと(本人にとっては大層なことだけど)で落ち込んでいた岡野を慰める際に、岡野の姉が自分の幼い息子にいう台詞だ。

台詞は、こう続く。
「(幼い息子に向って)ほら、おじさん(岡野のこと)を抱きしめてあげなさい」と。

この抱きしめることがこの映画の主題なのだけれど、そこへ至るまでを呉美保監督は丁寧に演出しています。

この丁寧な演出は、登場人物たちの心の動きと、関係性の距離感を、ふたつの画で説得力をもって描きます。

ひとつは、視線。
登場人物たちは、何を見て、何から目をそらそうとしているか。
水木のエピソードでは、特に顕著です。

もうひとつは、背中。
登場人物たちは、周囲とどれぐらいの距離にいるのか、孤立しているのか、寄り添うひとはいるのか。
そういうことを、しばしば登場する背中を向けた画で観るものに働きかけていきます。
この背中の画は、岡野と佐々木あきこのエピソードで、顕著です。

この映画は、語っている内容も素晴らしいのですが、その語り口がさらに素晴らしいのです。

評価は★★★★☆(4つ半)としておきます。

<追記>
この映画の前後に、少年視線の映画『イロイロ ぬくもりの記憶』とイタリアの学校を舞台にした『ローマの教室で 〜我らの佳き日々〜』を観ていますが、どちらもいまひとつでした。
近くの名画座で、学校を舞台にしたドキュメンタリー『みんなの学校』『バベルの学校』が上映されているので、こちらも観てみたいと思います。



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2015年映画鑑賞記録

新作:2015年度作品:47本
 外国映画36本(うちDVDなど 6本)
 日本映画11本(うちDVDなど 0本)←カウントアップ

旧作:2015年以前の作品:77本
 外国映画63本(うち劇場15本)
 日本映画14本(うち劇場 3本)
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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
この監督さんの作品はすべて好きです。段々上手くなっているのですが、「そこのみにて光輝く」よりも、もっと普遍的なテーマを扱っている分、こちらの作品の方が好きですね。
大人が救われていく姿に心がほぐされました。
ぷ〜太郎
2015/07/07 23:32

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