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zoom RSS 『風の歌を聴け』『ヒポクラテスたち』:大森一樹監督のモラトリアム三部作 @名画座

<<   作成日時 : 2015/10/26 23:09   >>

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久々の新作『ベトナムの風に吹かれて』が公開された大森一樹監督。
その新作公開記念で近くの名画座で2本立て上映された『風の歌を聴け』『ヒポクラテスたち』は、商業映画デビュー作の『オレンジロード急行』と併せて、モラトリアム三部作と呼ぶのが相応しい。

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風の歌を聴け』は、村上春樹の同名小説の映画化。
村上作品ではもっともはやい映画化作品でもある。

1970年の夏休み、東京の大学に進んだ僕(小林薫)は深夜バスで故郷・神戸に帰ってくる。
馴染みのバーに行くと、マスターが「友だちが待っている」という。
友だちの名は鼠(巻上公一)。
僕は鼠との散々な日々と、かつて付き合っていた三人の女のことを思い出す・・・

というハナシには、一貫したストーリーはない。
感傷の中で、まだ、何者でもなかった青春の日を懐古する、ただそれだけのことだ。

僕と付き合った女たちは、だれもが上手くいかなく、その付き合いは無為のようなもの。
いや、無為といったら失礼だろう。
なにせ、三番目の女の子(室井滋)は自殺してしまうのだから。

甘ったるいような遣る瀬無いような事どもを、大森一樹はテクニックで魅せていく。

無人の夜の西宮球場で並んで話す僕と鼠を、カクテルライトが照らす、
小指のない女(真行寺君枝)と僕は思っていた女とのベッドで並んだ会話を字幕で処理する、といったような。

白眉は、鼠が撮り上げた8o映画。
足下に穴を掘り続ける映画。

足下を掘り下げることができるのだろうか・・・
そんなことを考えることが許されるのが、モラトリアムの特権。
特権の日々は、儚く消える。
10年ぶりに訪れた馴染みのバーは、ただ落花生の殻が積もりに積もっているだけ。

初公開当時すこぶる評判が悪かった映画(公開時にも観たが、その時の印象は、やはり悪かった)。
こんな懐古映画を29歳の青年が撮ったのだから、それも頷ける。
だけれど、観なおしてみると、案外面白い。

うーむ、歳月というのはおそろしいものだ。

評価は★★★☆(3つ半)としておきます。

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ヒポクラテスたち』は『風の歌を聴け』の前年の作品。
洛北医科大学に通うな何人かの学生の卒業前一年を描いた群像劇。

これは初公開時、すこぶる評判が良かった。

京都府立医大を卒業した監督自らの体験がそこかしこに散りばめられ、それが医学生たちの活き活きとした生態に繋がっているからだ。

しかし、この映画も大人になることを猶予されたモラトリアム時代の映画にほかならない。

それは冒頭のエピソードが如実に示している。
オートバイ事故の傍らに居合わせたふたりの医学生(古尾谷雅人、小倉一郎)。
運転者の脚が骨折していることが傍からみても判る情況なのに、ふたりはそれぞれ身を隠してその場を去ってしまう。

彼はまだ医者ではない、いや何者でもないから。
この無自覚な無責任さ。

古尾谷雅人扮する医学生は卒業後の専攻も決めておらず、現在交際している女性が妊娠した際も、無責任にもモグリの産婦人科医のもとに行かせて堕胎させる。
この無責任さは後々悲劇を引き起こすのだけれど、それとても、同情するにあたらない。

歳月を経て観なおすと、さまざななエピソードがリアルなだけに、モラトリアムの無自覚な無責任さに憤ってしまう。

普遍的なハナシのようで、あの時代特有のいやらしさが、どことなく漂ってきている。

評価は(少々微妙なところという意味で)★★★☆(3つ半)としておきます。

<追記>
大森一樹監督作品は翻ってみると三部作が多い。
このモラトリアム三部作の次が、『すかんぴんウォーク』から始まる吉川晃司三部作、その後が『恋する女たち』から始まる斉藤由貴。
『ゴジラVSビオランテ』『ゴジラVSキングギドラ』も脚本だけの『ゴジラVSモスラ 』を加えれば三部作だ(その後しばらく時間をおいて『ゴジラVSデストロイア』の脚本を手掛けているが)。
それらの中では、このモラトリアム三部作が大森一樹の作家性を感じさせるものがあります。




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2015年映画鑑賞記録

新作:2015年度作品:94本
 外国映画68本(うちDVDなど14本)
 日本映画26本(うちDVDなど 4本)

旧作:2015年以前の作品:114本
 外国映画92本(うち劇場15本)
 日本映画22本(うち劇場 7本)←カウントアップ
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