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zoom RSS 『ハンナ・アーレント』:深遠なる善を追求のため人は思考する @DVD・レンタル

<<   作成日時 : 2015/10/06 11:19   >>

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2013年秋に単館系で大ヒットしたドイツ映画『ハンナ・アーレント』、DVDで鑑賞しました。
近所のショップでは、準新作から旧作になった途端に姿を消してしまい、少々遠出をして借りに出かけた次第。
さて、映画。

ハンナ・アーレント(バルバラ・スコヴァ)はドイツに生まれたユダヤ人。
ハイデガーに師事した哲学者。
ナチスによるユダヤ人虐殺から生き延び、1960年初めの現在は夫のハインリッヒ(アクセル・ミルベルク)とともに米国で暮らしている。

ある日、イスラエルのモサドにより捕えられたナチス戦犯アドルフ・アイヒマンのイスラエルでの裁判を傍聴し、その記録を発表しないかと雑誌「ニューヨーカー」の編集長から持ちかけられる。
雑誌に発表した記録論文により、ハンナの世間、特にユダヤ人社会から激しいバッシングを受けることになる・・・

というハナシ。

映画前半はそれほど面白くない。
ハンナが置かれている情況を丹念に説明するにとどまっているからだ。

ナチスによるユダヤ人虐殺から生き延びたこと。
ハイデガーに師事し、彼と恋愛関係にあったこと。
そのハイデガーがナチスに同調するようになったこと。
ハンナが米国社会(特にユダヤ人社会)で尊敬を受けていること。
夫ハインリッヒが多恋な性格であること、などなど。

過去の出来事で映像として表現されるのは、ハイデガーとの関係だけ。
ドラマとしてインパクトがあるであろうナチスからの逃亡は描かれない。
この過去のどの部分を映像として見せるか、それが多分に、この映画の本質に関係しているだろう。

中盤のアイヒマンの裁判は、当時の記録映像が用いられている。
この部分も、俳優によるドラマを避けることで、ハンナが主張する真理に重みを与えている。

そして、後半。
ハンナが発表した記録論文により、それまでおとなしかった映画に、急激にドラマが生まれる。

記録論文の焦点はふたつあり、ひとつは、収容所への輸送責任者でアイヒマンがすこぶる平凡な人物であること。
これは、後に「悪の凡庸さ」と表現され、クライマックスのハンナの公開講座の主張で詳しく論じられる。

もうひとつは、ユダヤ人の中にナチスに協力したひとが少なからず(かなりの数が)いた、ということ。
これが、ひとつめの「アイヒマン=平凡」以上に、ユダヤ人社会からのバッシングを招くことになる。

このナチスに協力したユダヤ人という話題は、ユダヤ人社会ではタブーなのだろう。
つまり、ナチス=悪、ユダヤ=善、というシンプルな図式であるべき(「べき」を強調)なのだ。

この映画のクライマックス、ハンナの長広舌の主旨は、
「思考するとは、善と悪の区別ができるようになること。思考を停止することで、凡庸なる悪は蔓延る」
というものなのだが、ドイツ人女性監督のマルガレーテ・フォン・トロッタは、それをもうひとひねりしているようにも感じられた。

すなわち、ユダヤ人社会で考えられているシンプルな図式、ユダヤ=善も思考停止のひとつではなかろうか、と。

この映画の時代背景は1960年代。
つまり、いまから50年ほど前。
ユダヤ人が実権を握っている米国のその後の行動を考えると、この50年、思考停止の中にいたのではないか。
そういうメッセージが隠されてはいないだろうか。

映画後半に、ハンナとハインリッヒのふたりが交わす言葉に、非常に興味深いものがあった。
「深遠な悪などない。深遠なのは、善だけだ」

善とは何か、をハンナはその後も追求し続けた・・・

評価は★★★★☆(4つ半)としておきます。






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2015年映画鑑賞記録

新作:2015年度作品:86本
 外国映画64本(うちDVDなど11本)
 日本映画22本(うちDVDなど 4本)

旧作:2015年以前の作品:111本
 外国映画91本(うち劇場15本)←カウントアップ
 日本映画20本(うち劇場 5本)
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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
いやはや、久々にがっつりした作品を鑑賞しました。彼女がこのような意見になった原点には、恩師との恋愛と裏切りがあったことには興味をひかれました。
ぷ〜太郎
2015/10/26 18:25

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