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zoom RSS 『ジプシーのとき』『アンダーグラウンド』:エミール・クストリッツァ2本立て @名画座

<<   作成日時 : 2016/07/26 01:04   >>

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ことしの初めに特集上映が組まれていたエミール・クストリッツァ監督。
ユーゴスラビア出身の巨匠監督だけれども、これまで観たのはデビュー作の『パパは、出張中!』と1998年製作の『黒猫・白猫』ぐらい。
後者のコメディタッチがどうも肌にあわなくて、その他の作品は観ないでいました。
とはいえ、この巨匠の代表作を観ていないというのもなんなので、長尺2本立てに出かけた次第。
さて、映画。

ジプシーのとき』1989年製作の長編第3作。

フォークを飛ばすぐらいにしか役に立たないチンケな超能力を持っているジプシーの青年ベルハン。
彼の家族は、魔女と呼ばれる祖母、脚の悪い妹、それに博打三昧の放蕩な伯父。
ベンハルは、アズラという名の少女と恋仲であるが、ベンハルに稼ぎがないために、彼女の両親から結婚の申し出を断られてしまう。
そんな中、村の大立者アーメドがイタリアから戻ってくる。
アーメドの幼い息子の病気をベンハルの祖母が治したのと引き換えに、アーメドは、ベンハルの妹の脚を医者に診せて治すと約束し、ベンハルとともにイタリアに連れていく・・・

というハナシで、中心になるのはベンハルとアズラの悲恋。
アーメドの下でどんどん成り上がっていくベンハルの成功と挫折を織り交ぜつつ描いていきます。

とにかく、ジプシーの生活描写がリアルで、画面から体臭までにおってきそうなほど。
ハナシのメインストリームは悲劇なのだが、悲喜交々(こもごも)の描き方は、それほど悲惨でもない。
『黒猫・白猫』に感じた、コメディの上滑り感もなく、かなり気に入りました。
そして、冒頭描かれるベンハルのチンケな超能力、これが終盤、アッというところで活かされており、ここいいらあたりもなかなか憎いです。

評価は★★★★(4つ)としておきます。

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アンダーグラウンド』1995年カンヌ映画祭グランプリ受賞作。

1941年、ナチスに侵攻されたユーゴスラビア。
詩人で劇作家のマルコは、友人の電気技師クロを抵抗地下組織(パルチザン)に誘って抵抗活動を行う。
ある日、観劇中ナチスの高官フランツを殺害したクロは、仲間とともに文字どおり地下に潜伏する。
そして、そのまま第二次世界大戦は終結するが、マルコの謀略によって、戦争は続けられていると地下の仲間たちは信じ込まされてしまう・・・

というハナシで、基本的にはマルコ、クロ、それに女優のナタリアの三角関係のハナシなんだけれども、それにユーゴスラビアの動乱の歴史を重ねていくという、大胆な作劇が用いられている。

国家の歴史と、男女の三角関係。
どちらも、真っ向から描くとかなり重苦しいものなるが、この映画では、かなりのコメディタッチで描かれていて、そのタッチもどちらかといえば演劇的、それも新喜劇のようなタッチで描かれている。

そして、このタッチがどうも、肌に合わなくて、困った。
あはははは、と簡単に笑えなくて、うーむ、神妙に観ていればいいのかしらん。

さらに、映画の構造はもっと複雑怪奇になり、戦後15年ほど経って、マルコ、クロ、ナタリアの戦時中の活躍が映画になり、その映画に出演する俳優たちの役を、マルコ、クロ、ナタリアを演じている役者が演じるのだから、二重三重にややこしい。
そこへ、地下から這い出したクロとクロの息子が、映画の撮影現場を実際の戦争と勘違いをして・・・となってくる。

ここいらあたりまでくると、フィリップ・ド・ブロカ監督の『まぼろしの市街戦』が、頭の片隅をよぎったりもした。

最終的にはユーゴスラビアは崩壊するも動乱は続き、マルコ、クロ、ナタリアの三角関係も悲劇に終わる。
映画としての試み、目指している高みは素晴らしいが、全編を通じては、それほど買わない。

しかし、この映画でもっとも好感の持てるシーンが、最後の最後にやってくる。

死んでしまった全員が一堂に集う海に突き出した緑の崖のシーン。
そこでは好悪はあるものの、みな笑顔でスラブの音楽に興じている。
そして、いつしかその緑の崖は、一同を乗せたまま海へと旅立っていく・・・

ああ、なるほど、このシーンが撮りたかったのか、クストリッツァ。

ラストシーンで大いに加点し、評価は★★★★(4つ)としておきます。



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2016年映画鑑賞記録

新作:2016年度作品:56本
 外国映画39本(うちDVDなど 3本)
 日本映画17本(うちDVDなど 2本)

旧作:2016年以前の作品:67本
 外国映画54本(うち劇場11本)←カウントアップ
 日本映画13本(うち劇場 5本)
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映画【ジプシーのとき】
神秘に包まれた流浪のジプシーたちの世界を、一人の青年の成長を通して描いた叙事詩的作品。監督は「パパは、出張中!」のエミール・クストリッツァ、エグゼクティブ・プロデューサーはミラン・マルティノヴィッチ、製作はミルザ・バシッチ、脚本はエミール・クストリッツァとゴルダン・ミヒッチ、撮影はヴィルコ・フィラチ、音楽はゴラン・ブレゴヴィッチが担当。出演はダヴォール・ドゥモヴィッチ、ボラ・トドロヴィッチほか、リュビシャ・アジョヴィッチなど本物のジプシーが多数参加している。               Movi... ...続きを見る
じゃむまるのシネマデイズ
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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
「アンダーグラウンド」は私的好みでは大傑作なんですよ(笑)愚かな人間だが・・・されど・・・というところが良いです、「ジプシーの時」も同じなんですが。
死者の葬儀の時目の上にコインを乗せていましたが「マクベス」でも石を乗せていました、どういう意味かな?と思い調べましたがわかりませんでした。
jyamutomaruko
2016/07/26 10:19
jyamutomarukoさん、コメントありがとうございました。
『アンダーグラウンド』は評価が異なりましたね。
それはさておき、死者を弔う際に目の上に置くコインは、六文銭、三途の川の渡し賃です。
ローマ・ギリシア神話にも、日本と言い伝えと同じようなものがあるみたいです。
まぁ、世の東西を問わず、地獄の沙汰も金次第、かな(ちょっと意味が違うか)
りゃんひさ
2016/07/26 21:22

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