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zoom RSS 『生きる』4Kデジタル:五分の魂すらみせられない一寸の虫たち @シネコン

<<   作成日時 : 2016/09/23 22:36   >>

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いわずとしれた黒澤明監督『生きる』、午前10時の映画祭で鑑賞しました。
黒澤明作品は大学生の頃にほとんど観た(『夢』だけ観ていない)のだが、そのとき以来の再鑑賞。
もう30年ぐらいになるかしらん。
当時もニュープリントだったけれど、とにかく音声が聞き取れない。
志村喬も、いわんや左卜全をやであった。
なので、画面のシャープさは当然として、今回はセリフが聞き取れることがなにより嬉しかった。
さて、映画。

昭和27年、東京郊外の役所。
市民課長の渡辺(志村喬)は、ハンコを押すだけの毎日。
生きているのだか死んでいるのだからわからない。
若い女性社員(小田切みき)は渡辺を陰で「ミイラ」とあだ名している。
そんなある日、渡辺は医者から胃がんを告げられる。
面と向かって告げられたわけではないが、物知りの患者(渡辺篤)から、これこれこういうわけで軽い胃潰瘍です、と医者から言われれば、それは十中八九(いや十の十)胃がんだという症状にピタリであった。
翌日から渡辺は自暴自棄になり、5日程のち近所の飲み屋で知り合った作家(伊藤雄之助)と享楽的な一夜を過ごすが、それでも生きている実感はない。
享楽的な一夜が明けたその朝、渡辺は件の若い女性社員と街角で出逢い、彼女の生きるバイタリティを得ようとする・・・

というハナシで、この後、若い女性と老いらくの恋に落ちる・・・となれば、ハハハハハと笑えるのだけれど、ヒューマニスト黒澤明監督は、そうはならない。
役所をやめて町工場で働き出した件の彼女から、「なにか作り上げることよ」というヒントを得た渡辺は、以前陳情に訪れてたらい回しされていた人々のために、陳情の地(水はけの悪く不衛生な土地)に公園を作ろうと奔走するのである。

というストーリーは、30年前に観た時から、好きではない。
小役人の、ささいな奮闘。
それを、なにが、生きる、であるか。
小市民は、死を前にしなければ、生きることがわからないというのか、と黒澤明に盾突きたい気持ちであった。

まぁ、これは、今回見直しても変わらなかった。
終始、肩をすぼめ、おどおどし、「つまり・・・」と言いながらも、言いたいことも言えない渡辺の姿は、やはり嫌悪感が先立つ。
この渡辺に代表される小市民は、一寸の虫。
「一寸の虫にも五分の魂」って、面と向かって言われると、かなり腹が立つ。

けれど、この映画の面白いのは、「五分の魂」ほどもないだろう、って面と向かって言っているところだ。

映画が面白くなるのは、先に書いた後から。

渡辺の奮闘・本葬ぶりはすっ飛ばして、いきなり「5か月後に彼は死んだ」として始まる通夜のシーンから。
通夜に集まった上司(役所の助役・中村伸郎)が、渡辺の奮闘の結果もたらした公園をわが物顔に横取りしようとする。
部長クラスは助役にへつらい、市民課の面々は何も言えない。
そんなところ、件の公園の近所の住人が焼香に来、助役はじめ上役たちは退散する。
そして、その後、渡辺の奮闘ぶりを思い出す同僚の語りと、当時の渡辺の行動をフラッシュバックで描いていく。

ここがすこぶる映画的で、渡辺の奮闘の動機が誰にも思いつけなかったり、結局は、運が良かっただけだと言い出すものまで出てくる。
さらには、自分も死を自覚したら、それぐらいの獅子奮迅は当然である、というものもいる。

渡辺(=一寸の虫)の奮闘(=五分の魂)に対して、それ以下の魂をカットバックでみせていく。

五分の魂をみせた一寸の虫と、五分の魂すらみせられない一寸の虫たち。

黒澤明のヒューマニズムが、すこし変化していたのかもしれない。
1947年の『素晴らしき日曜日』では、一寸の虫である観客たちに声援を呼び掛けていたけれど、この映画では称賛するとともに嫌悪もしている。
そして、この『生きる』から3年後の1955年『生きものの記録』では、世界は一寸の虫の力ではどうにもならないことに憤りを感じてしまう。

「命短し・・・」と歌った渡辺の魂を受け継ごうとし、その後沈黙した課員・木村(日守新一)で終わるこの映画、このときのヒューマニスト黒澤明に希望はあったのだろうか。

30年ぶりに観た感想である。

評価は★★★★☆(4つ半)としておきます。

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2016年映画鑑賞記録

新作:2016年度作品:84本
 外国映画59本(うちDVDなど 8本)
 日本映画25本(うちDVDなど 4本)

旧作:2016年以前の作品:92本
 外国映画73本(うち劇場14本)
 日本映画19本(うち劇場 6本)←カウントアップ
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