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zoom RSS 『この世界の片隅に』:戦争の「当事者」としての庶民 @ロードショウ・シネコン

<<   作成日時 : 2016/11/21 17:36   >>

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戦時下の庶民の暮らしを描いたアニメーション『この世界の片隅に』、ロードショウで鑑賞しました。
観る前は、期待と不安がない交ぜ。
というのも、こんな時代に戦争の話をアニメーションで描こうという志は買うものの、真面目一辺倒の今井正的作品だったらイヤだし・・・といったところ。
結果は・・・
さて、映画。

昭和19年、広島で暮らす19歳の浦野すず。
突然、見初められれ、呉の北條家に嫁ぐことになった。
大らかで、鷹揚で、かなり世間知らずのすず。
嫁いだ先でも、性格は変わらない。
しかし、海軍鎮守府のある呉は、敵機の襲来を繰り返し繰り返し受けることになる・・・

といったハナシを、映画は丁寧に描いていく。

まず、目を見張るのは、その画力。
当時の町の様子をリアルな、それでいて、柔らかいタッチで描いている。
冒頭、広島の街が描かれ、ザ・フォーク・クルセダーズの名曲『悲しくてやりきれない』のカバーが流れただけで、涙腺が危うくなる。
この街が、後の8月6日の原爆により喪われてしまうのか、と思っただけで、やりきれない。
画の筆致が、まさに「記憶」というに相応しい筆致だからだ。

だが、この冒頭で不安がたまる。
よもや、原爆によって命が失わるハナシ、そこへ至るまでの「犠牲者」としての庶民の暮らしを描いたものではありますまいか、と。

その後につづく物語は、のほほんとしたすずの性格によって、やわらげられていく。
困窮も糧とし、工夫によって生活を続ける。

この前半で、じっくり生活を描くことで、終盤が活きてきた。

映画のタッチが変化するは、終盤、昭和20年に入ってから。
呉に初めての敵機が襲来するシーン。
青い空に踊る爆雲を、すずが描く絵筆から落ちる絵の具を用いて、表現する。
このシーンの表現手法が素晴らしい。

そして、もうひとつ表現手法で素晴らしいのは、すずが幼い義姪を連れて、不発弾の爆発に遭うシーン。
一コマ一コマ、黒背景に白い手書きの線描アニメ。
ギザギザのエッジが心を搔きむしる。

このふたつのシーンのあとに、物語として瞠目するシーンが続く。

戦争も末期。
すずの心が、知らず知らずのうちに変化している。
銃後を守る女たちは「困窮も糧とし、代用できるものは代用で、工夫する。それが私たちの戦い方だ」という。

そして、8月15日の玉音放送。
ここで、すずは号泣する。
「勝ちたかった。なんのために戦ったの。みんな、みんな犬死じゃないの」と。

そう、庶民もみな悔しかったのだ。
8月15日の庶民は「被害者」ではなく、戦争「当事者」だったのだ。

あんなにも、のほほんとしていた少女だって、知らず知らずのうちに「当事者」になってしまう。
だからこそ、戦争は恐ろしい。

こんな時代に戦争の話をアニメーションで描こうとした意義はあった。
大いにあった。

評価は★★★★☆(4つ半)としておきます。

<追記>
こんな時代=もしかしたら、もう戦前かもしれない時代・・・
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2016年映画鑑賞記録

新作:2016年度作品:115本
 外国映画76本(うちDVDなど14本)
 日本映画39本(うちDVDなど 6本)←カウントアップ

旧作:2016年以前の作品:100本
 外国映画79本(うち劇場17本)
 日本映画21本(うち劇場 7本)
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この世界の片隅に
第二次世界大戦中の昭和19(1944)年、広島。 絵が得意な18歳の少女すずは、呉の海軍に勤務する文官・北條周作の妻となる。 夫の両親、義姉の径子や姪の晴美、ご近所との付き合いの中で、すずはだんだん主婦らしくなっていく。 戦争であらゆるものが欠乏していき、日本海軍の一大拠点で軍港の街として栄えていた呉は、何度も空襲に襲われる。 そして、昭和20(1945)年の夏がやってきた…。 アニメーション。 ...続きを見る
象のロケット
2016/12/10 10:18

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
みあ評判がいいので観てみました。何か特別な仕掛けがあるわけでもなく、ただ淡々と日々の暮らしを描いていくだけなのに、興味深く見入ってしまいました。戦中戦後、ただ必死で生きていくしかなかった庶民の想いが、素直に心に染み入ってきた感じでしたね。
ぷ〜太郎
2016/11/24 14:27
ぷ〜太郎さん、コメントありがとうございました。
物語の展開としては、特別な仕掛けはなかったですが、それを魅せきる力は、かなりのものでしたね。多くのひとに観てもらいたい一本です。
りゃんひさ
2016/11/26 10:23

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