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zoom RSS 『家族の肖像』:ヴィスコンティ監督の遺言 @リバイバル・単館系

<<   作成日時 : 2017/03/19 21:17   >>

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ルキノ・ヴィスコンティ監督の『家族の肖像』、リバイバル上映で鑑賞しました。
今回はデジタル完全修復版。
1974年の製作だが、日本公開は1978年の秋。
はじめて観たのは翌年2月の大阪でのロードショウのとき。
当時は、この手の単館系の映画は、大阪では3か月ぐらい遅れるのが常だった。
ただし、得することもあり、この映画、アニエス・ヴァルダ監督『歌う女・歌わない女』との2本立てでの上映だった。
その後、1981年の暮れまでに都合4回ほど観た。
当時は、まだ、中学生から高校生。
この映画の多くはわからないながらも、なにがしかに惹かれていたのは確かだった。
あれから35年経ての再鑑賞・・・
さて、映画。

ローマ市内の高級アパートメントに暮らす初老の教授(バート・ランカスター)。
最上階とそのひとつ下のフロアが彼の持ち物で住居。
廊下といわず壁のほとんどには、18世紀ごろに描かれた「家族の肖像」と呼ばれる、風景とともに家族を描いた油絵が飾られている。
静かに暮らしたい教授であったが、あるとき、ブルモンティ伯爵夫人(シルヴァーナ・マンガーノ)が上のフロアを借りたいと申し出てくる。
気乗りのしない教授であったが、夫人の情人コンラッド(ヘルムート・バーガー)に惹かれた教授は、渋々、フロアを貸すことにする・・・

というところから始まる物語で、その後、闖入者である伯爵夫人の一家とコンラッドによって、教授の静かな暮らしが蝕まれていく・・・といった展開になる。

バート・ランカスターが初老の男性を演じていることもあって、脳裏に浮かぶのは、同じヴィスコンティ監督の『山猫』である。
『山猫』で彼が演じた公爵は、時代の転換の中で取り遺された、滅びゆく者であった。

たしかに、この映画での教授も、時代とはかけ離れている感がある。
しかし、教授は時代に取り遺されたのではなく、自ら、世間から退いていたものである。
退き、孤独を求め、静謐な美を求めている。

そこへ、現れるコンラッドは、美とともに醜を兼ね備えている。

美は、その容姿のみならず、教授が蒐集する絵画についても、その美しさを理解している。
美しいものに対する志向が同じなのだ。
それは価値観といってもいいだろう。

醜は、その世俗にまみれた若々しさ。
自ら右翼と名乗る金満家の伯爵夫人の情人の身でありながら、イタリアへ来る前はドイツで左翼の活動家だった。
世間を、たくみ渡る世知にも長けているが、それ故に身を滅ぼしそうな危うさもある。

綺麗は汚い、汚いは綺麗。
そのどちらもが教授には魅力的に映る。

そしてなによりも、彼は伯爵夫人一家と行動をともにしているが、常に孤独である。
この孤独感に、なによりも教授は惹かれている。

このコンラッドという青年に、自分の価値観のすべてを引き継ぐことが出来たら・・・
そう教授は思っている。

自分が持っている価値観と同じ価値観を持つ青年、そして同時に自分が経験してこなかった価値観を持つ青年。

その憧れが、初老の教授を過去の思い出に誘う。
美しかった母親(ドミニク・サンダ)・・・自分とは価値観が異なっていた妻(クラウディア・カルディナーレ)・・・

そういった一切合切のものが、コンラッドの爆死によって消え失せてしまう。

時代に取り遺され、滅び、静かに消え去る者が『山猫』の公爵ならば、『家族の肖像』の教授は静かに消えゆくことすら許されない。
死にゆく教授に対して、伯爵夫人は残酷な言葉を投げかける。

「わたしたちは、いつかコンラッドの存在を忘れるでしょう」

母親や妻の面影を思い出したように、コンラッドを思い出す時間は、もう教授には残されていない。

この映画は、ルキノ・ヴィスコンティ監督の遺言のような映画なのだろう。

評価は★★★★★(5つ)です。

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2017年映画鑑賞記録

新作:2017年度作品:23本
 外国映画19本(うちDVDなど 3本)
 日本映画 4本(うちDVDなど 0本)

旧作:2017年以前の作品:28本
 外国映画24本(うち劇場鑑賞 6本)←カウントアップ
 日本映画 4本(うち劇場鑑賞 0本)
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