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zoom RSS 『ミス・シェパードをお手本に』:英国的二面性をシニカルに笑うコメディ @DVD・レンタル

<<   作成日時 : 2017/04/30 21:38   >>

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昨年末ロードショウされたマギー・スミス主演の『ミス・シェパードをお手本に』、DVDで鑑賞しました。
気になってはいたのですが、劇場もちょっと苦手なところでもあったので、DVDでもいいかなぁってパスしていた作品。
さて、映画。

1970年、ロンドン北部、文化人が多く暮らすカムデンタウン。
最近そこへ越してきた劇作家のアラン・ベネット(アレックス・ジェニングス)は、ひょんなことからその町の通りで黄色いバンに乗って暮らすミス・シェパード(マギー・スミス)と懇意になる。
何週間か他人の家の前の道路にバンを停めて生活している彼女。
住人たちのお目こぼしを受けていたが、とうとう行き場を失い、新たに越してきたベネット氏宅の前庭にバンを駐車して暮らすこととなった。
せいぜいが数週間だろうと高をくくっていたベネット氏だが、その暮らしは15年に及ぶことになり・・・

というハナシで、はじめに「ほとんど実話」という字幕も出、元となった戯曲も書き、本作の脚本も担当しているアラン・ベネットが経験したことらしい。

原題は「THE LADY IN THE VAN」と至ってシンプルだが、それに『ミス・シェパードをお手本に』というヒューマン映画っぽいタイトルを付けたあたりに、この映画の難しさがある。

ま、日本タイトルから想像すると、老女と中年男性の心温まる交流の物語のようにみえるが、どうにもこうにも意地の悪いコメディに見えて仕方がなかった。

根底にあるのは、英国人の二面性。
本音と建て前、というのとも違う感じの、なんだか厭らしさを感じる性質。
ホームレスのミス・シェパードに対して、カムデンタウンの人々は親切にしているように取り繕っているだけで、心底から彼女について知ろうともしない。
あくまでも「お目こぼし」の似非親切。

たぶん根底にあるのは「ノブレス・オブリージュ」の考え方で、「財産、権力、社会的地位(の保持)には(それを持たないものへの)責任が伴う」というもので、この映画では「体面を保つために仕方なくやっている」というように受け取れる。
で、持たざる者はそれを利用して、過度な要求をする。
そして、また、その過度な要求を突っぱねるだけの強い意志を持っていない者は、自己を「やさしさ」という誤魔化しの理由付けで、受け容れてしまう。
さらに、最悪なのは、「社会的地位を手に入れたことに、漠然と、罪悪感」を持っている場合。

という、非常にややこしい人間関係のなかで繰り広げられる物語で、とにかく、出てくる人物人物に共感できない。

その上、ベネット氏を、書き手のベネット氏と生活者のベネット氏といった具合にふたりに分けて登場させているのだから、ややこしい。
英国人の二面性の象徴としての演じ分けなのだろうが、舞台の演劇では成功しても、映画では成功しているのかどうかは微妙なところ。

終盤、バン暮らしをしているミス・シェパードの過去が明らかになり、彼女の孤独の理由も説明されるのだが、省略されている部分もあってわかりづらく、これまた共感しづらいようにつくられている。

省略されているところは次のところ。

ピアニストであったミス・シェパードが、師事したピアニストに付き添ってパリに行き、その後、英国に戻って教会の修道女となる件。
時期的に考えると、渡仏は第二次世界大戦の頃。
想像するに、師事したピアニストがナチスの活動に貢献したか何かで、大戦後にはミス・シェパードも何らかの責めを受け、結果として修道女とならざるを得なかったのだろう。
そして、教会では、ピアノ(特に師事したピアニストの曲)を弾くことを禁じられ、そして、逃げ出した・・・

気になったので、観終わって調べてみると果たしてそうであった。
ピアニストの名前はアルフレッド・コルトーで、親ナチスだったらしい。

このあたりのエピソードを丹念に描けば、ヒューマン映画としての感動もあったかもしれない。
が、映画はそんな感動なんて求めていない。

やはり最後まで、英国的二面性をシニカルに笑わせようとしたのだろう。
ちょっと、このシニカルさは、肌に合わない。

評価は★★★(3つ)としておきます。

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2017年映画鑑賞記録

新作:2017年度作品:31本
 外国映画25本(うちDVDなど 4本)←カウントアップ
 日本映画 6本(うちDVDなど 0本)

旧作:2017年以前の作品:32本
 外国映画27本(うち劇場鑑賞 9本)
 日本映画 5本(うち劇場鑑賞 1本)
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
コルトーは親ナチでしたか。
この方はフランスを代表するピアニストですね〜、ミス・シェパードはその弟子ですから天与の才があったのだと思われます。
何故に、と思っていましたが、そういう事情か・・

戸惑ってしまうところのある映画でした。
じゃむとまるこ
2017/04/30 22:24
じゃむとまるこさん、コメントありがとうございました。
コルトーは、かなり何度もナチスの前で演奏会を開いたらしいです。
そういうあたりが描かれていれば、いわゆる悲劇になったのでしょうが、狙いはそんなあたりにはなかったと感じました。英国ってむずかしい・・・
りゃんひさ
2017/05/01 14:23
思っていたのと全く違う映画でした。英国人なら苦笑いしながら観るのでしょうけど、日本人には合わないタイプの作品でした。
ぷ〜太郎
2017/06/29 17:01
ぷ〜太郎さん、コメントありがとうございました。
日本人向きではないですね、やはり。
かなり想像していたのとはちがった映画でした。
りゃんひさ
2017/07/01 14:29

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