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zoom RSS 『判決、ふたつの希望』 :痛みをもたらした過去も受容するしかない @試写会

<<   作成日時 : 2018/07/12 01:40   >>

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ことしの米国アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた『判決、ふたつの希望』、ひと足早く、試写会で鑑賞しました。
珍しいレバノン・フランスの合作映画。
レバノンの映画というと、過去には『キャラメル』という美容室を舞台にした映画がありましたが、それ以外では・・・あまり記憶がない。
検索エンジンで「レバノン 映画」と入力してサーチすると、『レバノン』という映画がヒットするのだけれど、それはイスラエル・フランス・イギリスの合作映画で、1982年にイスラエルがレバノンに侵攻した際の戦争映画でした。
さて、映画。

レバノンの首都ベイルート。
レバノン人トニー(アデル・カラム)と妊娠中の妻が暮らすマンションのある一帯は不法建築が多い地区で、住宅補修の工事がはいった。
現場監督のヤーセル(カメル・エル=バシャ)はパレスチナからの難民。
トニーとヤーセルで間でちょっとしたことからイザコザが起こるが、それは国を揺るがすような大事へと発展していく・・・

といったところから始まる物語なのだけれど、まず、レバノンというお国柄を知らないとはじめで躓きかねないので、映画でわかることとと調べてたことを記しておきます。

レバノンという国は中東にあり、西は地中海に面しているが、東はシリア、南はイスラエルと国境を接しています。
中東というと、アラブ、イスラム教というイメージが強いのですが、レバノン国民の4割はキリスト教徒です。
残りはイスラム教徒ですが、イスラム教徒は、スンニ派とシーア派に分かれており、まぁとにかく険悪な関係。
で、問題は南の隣国イスラエル。
そこは、ユダヤ人国家なのですが、イスラエルは第二次世界大戦後に建国され、その後の内戦やなんやで、もともとそこで暮らしていたイスラム教徒のパレスチナ人の多くがレバノンに難民としてやって来、現在は、もともとレバノンで暮らしていたレバノン人とは関係がよろしくない。
しかし、レバノン政府としては、パレスチナの難民を見過ごすこともできず、保護政策も打ち出している・・・

というのが現状。

現在の日本では、そこいらあたりがあまり知られていないので、はじめの方は、状況を理解するのに時間がかかりました。

で、レバノン人トニーは、毎朝の日課であるベランダでの水やりをしていたところ、壊れた雨どいから漏れた水が、下で作業していたヤーセルと同僚にかかってしまう。
下で作業するから・・・と苦情を言いに行ったヤーセルに対して、トニーは、けんもほろろ、取り付く島もない。

というのは、トニーは、レバノンの民族政党のような党のメンバーであり、いまの難民政策を快く思っていない。
そんな彼には、パレスチナ人は、はなから憎しな相手、というわけである。

相手にされなかったヤーセルは、その後、野外の作業場からトニーに対して侮蔑的発言をし、それに腹を立てたトニーは、修理した雨どいを壊してしまう・・・と物語は展開する。

その後、態度を硬化したトニーに対して修理作業を請け負っている会社のレバノン人のボスとともにトニーの仕事場に訪れたヤーセルは、さらに侮蔑的な発言(イスラエルで殺されていればよかったんだ、というような意味)を浴びせられ、暴力行為に及んでしまう。
そして、法廷闘争へ発展する・・・

かなり長々とあらすじを書いたけれども、ここまでが20分程度。

ここまでで、ふたりの社会的な立場が分からないと、映画この後の展開が理解しづらい、です。
(といっても、この後、もっと複雑な過去がわかるので、ここまでは前提みたいなもの)

トニー=レバノン人。キリスト教徒、(小さいながらも)BMW専用の修理工場を営んでいる。そして、パレスチナ人には悪感情を抱いている。
ヤーセル=パレスチナ人。イスラム教徒。難民収容所で暮らしている。が、仕事への信頼は厚く、レバノン人の会社で(不法であるが)就労している。ただし、かっとなる一面は否めない。

まとめると、こう。

このふたりの小さな事件は、その後、レバノン人のパレスチナ人への感情をあらわにし、パレスチナ人の立場を明らかにし、彼らの過去を詳らかにし、プライヴェートの領域にも踏み込んでいく。
そして、レバノンの70〜80年代にかけての内戦とそれによる傷跡を明らかにしていきます。

それらの傷は、いまはもう痛まない傷跡ではなく、ただ、痛いことから目をつむっているだけだということも明らかにして、その痛さをどこかしら別のところ(難民=異人といってもよい)に目を向け、内部に抱えた痛みはさらに増幅させていることが描かれていきます。

そんな傷を癒すには・・・

それは、傷は傷、痛みは痛み、そういったものをもたらした過去は過去として受け容れて許容するしかない。
それが「希望」であるだろう・・・とそういう意味で付けられた日本タイトルは、なかなか奥深いものがありました。

原題「THE INSULT」というのは、侮辱の意味だそうです。

評価は★★★★☆(4つ半)としておきます。

<追記>
中盤から1991年のマイケル・アプテッド監督作品『訴訟』に似たシチュエーションになり、ちょっとニヤニヤさせられました。
ミニシアター隆盛時期によく映画を観た方々にお薦めしたい一本です。

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2018年映画鑑賞記録

新作:2018年度作品:45本
 外国映画36本(うちDVDなど 3本)←カウントアップ
 日本映画 9本(うちDVDなど 0本)

旧作:2018年以前の作品:38本
 外国映画31本(うち劇場鑑賞 3本)
 日本映画 7本(うち劇場鑑賞 1本)
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