『ボルベール <帰郷> 』:男性は非常に居心地が悪いはず

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アルモドバル監督『ボルベール <帰郷> 』のレビュー。

アルモドバル監督の新作なので、期待と不安とが同居した状態で観に出かけた。彼の作品の場合、女性の生理に寄った作品(最近では『オール・アバウト・マイ・マザー』が筆頭)は辛うじて理解できるが、受け容れがたい場合がある。

本作品はまさしく女性の生理に寄った作品で(その意味ではまさしく女性賛歌)であり、男性に私としては素直に共感できない部分がある。

登場する女性たちは全て大なり小なりの秘密(や問題)を抱えており、最も大きいものがペネロペ・クルス扮するライムンダとその母親である。
その秘密の部分は、映画ストーリー上では大きな価値を有していない。
ストーリーテリングとして、秘密や問題に対する伏線は巧みに張られてりるし、内容の開示タイミングも的確である。

しかし、映画の焦点は、そのような秘密や問題のストーリーテリングにあるのではなく、女性たちが抱えた秘密や問題を受け容れられるか、許せるかということに集約されていく。

そして、すべての秘密や問題を、最終的には、アルモドバルは女性感覚・女性の立場で寛容し受容し許容していく。慈悲深く懐の深い母親のように。

秘密や問題の共有者や利害関係者が女性のみならず男性も含まれるならば、物語はもっと対立や葛藤を軸にしてドラマチックに展開していくはずである。

で、男性観客の私としては、すべての秘密や問題のタネが男性にあることもさりながら、女性たちの寛容さそのものに非常に居心地の悪さを感じてしまう。
その感じは、例えていうなら、女性専用車両に誤って乗ったような気分である。

(なお、アルモドバルは対女性、対男性感覚を観客に意識させる演出として、女性性を強調する場合は俯瞰を使用し、男性性を強調させる場合は横からの醒めたカットを使っている)

前半の死体を始末するシーンではヒッチコック張りの演出を見せてストーリーテリングの映画かと思わせておいて、後半はストーリー展開に重きを置かず、女性たちの寛容・受容・共感の物語として展開していき、さらに、男性として非常に居心地の悪い内容を受け容れざるを得ないため、本作品の評価は、男性から観た★★★☆としておく。

<追記>
ちなみに、一緒に観た妻は、非常によく判る・共感できる、と申しておりました。

<追加2007.09.01>
2種類のチラシ画像が美しいのでアップします。
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この記事へのコメント

ぷ~太郎
2007年07月06日 14:42
この映画、男性よりは女性に受けがいいのではと思います。私の知人で、この映画が「よかった、大好き」と言っている中年男性がいますけれど、彼の心は女性なのか????
いずれにせよ、奥さまによろしくお伝え下さい。
2007年07月08日 21:44
いつもコメントありがとうございます。
> 男性よりは女性に受けがいいのではと思います。
とは同感です。

> この映画が「よかった、大好き」と言っている中年男性がいます
とは驚き至極です。故淀川長治さんが言うのなら判らなくもないのですが・・・。

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