『ぐるりのこと。』:ぐるりひっくるめて人間のこと愛のこと:Myムービー掲載

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『ハッシュ!』以来の橋口亮輔監督の新作には「やられた!まいった!」というしかない。
ストーリーは、簡単に言えば、なんとなく法廷画家になってしもうた飄々として生きるカナオと、ちゃんとしていたいのにちゃんとしていられな一義な妻・翔子との30代から40代に渡る10年間の物語である。
巻頭から何処となく若いのに倦怠期である。
その後、娘を授かるが、幼くして喪ってしまい、妻が鬱になってしまう・・・
と、こう書くと、いやはやなんだか暗くて厭だなぁ、なんて思われそうだが、そんなことはない。

柳に風、暖簾に腕押し、糠に釘、人間は考える葦である、みたいなカナオの存在が、人間の、夫婦の間の愛おしさのようなやわらかさを醸し出していて、「そう、そんなにちゃんとやらんでもエエんよ」みたいな感じで、包み込んでくれるというか寄り添ってくれるような感じが安堵を誘う。

監督曰く、「これまでの登場人物たちは、多からず少なからず、自分の分身のようなものでしたが、リリー・フランキー演ずる金男(カナオ)は、自分にはないものでした」。

たぶん、この監督の発言の指すところが、この作品を豊かなものにしたに違いない。

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妻の翔子が、過去の幼子を失った悲しみから、徐々に、そしてどんどんどん自分を追い詰め、自分を袋小路の問いかけで攻め立て、鬱へと追い込んでいく描写は、淡々とした描写であるが、少々息苦しい。
たとえば、カナオが知らぬ間に描いていた娘のスケッチを見つけるシーン、勤務先の弱小出版社でのヒット作品が「愛しき子供たち」というような翻訳ものであるシーンとか。

橋口監督の描く人物は、どことなく、一義で重さや硬さを感じることがあり、その重ッ苦しさに対して風穴を開けたのが、カナオの人物造型だろう。
このカナオは、まるでリリー・フランキーのあて書きのようにハマリ役だ。

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鬱になった妻・翔子はこのカナオの存在により助けられ、またカナオも助けられるのだが(ほんとうに愛おしいものがそこにあることに気づくってことですけど)、その時代背景の確証が、充実の脇役陣を擁した法廷シーンである。

オウム事件、池田小学校児童殺傷事件を彷彿とさせる裁判を、法廷画家のカナオの眼を通して見つめる。
それも、ただの時代背景としてだけでなく、法廷に立つ被告・原告の人間性の何かを見つめていく。
映画は、カナオの眼を通したカットを用いて、幼女殺人犯の意外と美しい手指だとか、幼子を殺された母親のアンクレットだとか、その犯人のずり落ちた靴下だとか。

この描写があるからこそ、欝から抜け出した夫婦の愛の美しさなんて、言葉に出すと恥ずかしいような、絵空事のような結末に持っていかない。
映画のシメは、ひとつ何事かを乗り越えたカナオが、町を行き交う人々を観てつぶやく「人、ひと、人・・」という言葉である。

そう、ぐるりひっくるめて、人間のこと愛のことを描いた紛れもない傑作として評価する。
迷わず★5つです。

↓Myムービーのレビュー&採点はコチラから↓
http://info.movies.yahoo.co.jp/userreview/tyem/id328806/rid3/p1/s0/c1/

チラシ画像は後ほど掲載予定。
2008年6月公開です。

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<追記>
観る前は、ふたりの娘が「ぐるり」という名前で、親子の物語かと思っていました。
わが妻は「バカっじゃない?」と言いましたので、当然にして「バカって言うなよ」と返答してみました。
「バカって言うなよ」の使い方が適切かどうかは、映画を観れば判るかと・・・・。

↓橋口監督作品DVD↓
 

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この記事へのコメント

優駿
2009年05月17日 16:15
「失われた肌」を渋谷で見て、その晩にDVDで「ぐるりのこと」を見ました。
どちらも、ある夫婦の約10年の物語(すごい2本立て)
外国人の夫婦の話は、強烈すぎて(ニオイがキツくて?)ついていけませんでした。
ガエル君夫婦は、カレンダーに×印なんか、絶対つけないだろし。

>カナオは、まるでリリー・フランキーのあて書きのようにハマリ役だ。
ホント。良かったですね~。リリー・フランキー!
何があっても『まぁ、ええんちゃう? お前はそれで、いいやん』と肯定してくれる。
ふにゃふにゃと(それまでは定職にもついてなくて)生き方も柔軟。

>包み込んでくれるというか寄り添ってくれるような感じが安堵を誘う。
こういう性格って、以前は“理想の女性”のものだったけど、
今は、こういう男性が求められてるのネ。

>オウム事件、池田小学校児童殺傷事件を彷彿とさせる裁判
傍聴席から見る、時代を映す数々の事件。
う~ん、すごい!上手い!

私も迷わず、昨年度の邦画「ベスト1」です!

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