『ハムーンとダーリャ』:神話的味わいのあるイランの少年と少女の物語@東京国際映画祭プレイベント上映会
昨年2008年度東京国際映画祭コンペティション部門に出品された映画です。
審査委員長だったアメリカ男優ジョン・ヴォイト(アンジェリーナ・ジョリーのお父さんですね)が大層気に入り、「機会があれば再度上映をして欲しい」と言い残したとのこと。
タイトルの『ハムーンとダーリャ』とは、イランの貧しい村で生活をしている少年と少女の名前です。
ふたりは、いとこ同士。
ダーリャは器量好しの少女で、ペルシャ絨毯の染色・機織の家庭で、働き者だがお金に厳しい母親と少々気の荒い兄と暮らしている。
兄は、村の青年たちのリーダ的存在でもある。
村には年頃の少女が他に居ないため、始終、縁談が持ち込まれている。
それに対してハムーン。
楽器と歌は上手く、心根も優しいのだけれど、おばあさんと二人暮しで、村の中でも極貧の一家。
隣同士の筒井筒。
互いに好意を抱いているが、村でふたりの仲を噂されて、ハムーンを村を出て、男を上げることに。
向かった先は、薔薇園を持ち、薔薇水を製造している叔父さんの許(もと)。
ハムーンは、元来の働き者の性質が発揮されて、農園工場でのビシバシと働くようになり、叔父のひとり娘(彼女もいとこ同士ですね)の夫として家に入らないかと持ちかけられます。
ここまでのところは、貧しい村の様子や、裕福な薔薇園での暮らしぶりなど、「普通のイラン映画」という印象です。
しかしながら、後半、映画はガラリとトーンを変えます。
ダーリャのことが忘れられず、薔薇園の叔父の許を辞去したハムーン。
村へ戻ってくると、ダーリャが原因不明の病魔に冒され、臥せっていました。
医者から処方された薬でも快復せず、ついには村の呪い師(まじないし)の老女の助けを乞うことに。
その呪い師の告げることには、「砂漠の外れの泉に行って、小指ほどの小さな魚を生きたまま二匹捕らえて、ダーリャに生きたまま食べさせなさい」と。
徒歩で砂漠を行くハムーン。
ラクダや馬で一群を組んで砂漠を行く他の求婚者たち。
砂漠での難行苦行が、それまでの生活描写と打って変わって、まるで神話のようなのです。
徒党を組んだ一群は、蛇に驚いて馬が逃げられる者、有識な叔父に砂漠の恐ろしさを諭されて引き返す者、盗賊に襲われる者と、仲間が減っていくのに対して、ハムーンを独り黙々と歩き続けます。
果たして、泉に到着するのか、ダーリャを救うことはできるのか・・・・・
詳しくは記しませんが、タイトルに示すような『ハムーンとダーリャ』目出度し目出度し物語とならなあたり、寓意というよりも神話のような感じを受けました。
もしかしたら、イランに古くから伝わる物語が下敷きになっているのかもしれません。
ただし、個人的には結末の意図するところがピンと来ないため、★3つ半の評価としておきます。
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