『シリアの花嫁』:国境なんて修正液で消してしまいたい的な家族の映画@レンタルDVD

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2009年の2月に東京は岩波ホールで公開された映画です。
「岩波ホール」「女性映画」「民族問題」と三題噺ではありませんが、ちょっと二の足を踏む要素が個人的にはありまして、見逃していた次第。
今回レンタルされたDVDのジャケットをみれば、そんな憂鬱さなんて何処へやら。
イスラエルとシリアの国際情勢は重要な要素ですが、それよりも何よりも、「家族の映画」の側面が強く、いたく感動をしました。

舞台は、イスラエル・シリア国境のゴラン高原の村。
そもそもはシリアのアラブ民族あが暮らす地域だったものをイスラエルが侵攻・統治し、管轄化に置いたもの。
突然の出来事だったらしく、周辺で暮らすアラブの家族・親族たちは、否応無く民族分裂と相成った。
映画は、イスラエル管轄の村で暮らすアラブ人一家の、婚礼のお話。

その一家の長は、親シリア派で投獄されており、最近保護観察の処分となった
一家は二女三男の家族である。
末娘が結婚することとなり、一家が久々に故郷に揃うこととなる。

長女はヒアム・アッバス。『扉をたたく人』『画家と庭師とカンパーニュ』で印象的な女優さん。
彼女は、民族の慣習に則り、予め決められていた夫と結婚し、娘二人をもうけている。
夫は、一度だけ屋根の修理に来ただけの男性で、本人も自由意識が高く、夫の支配や旧い因習から逃れでたいと思っている。

長男は、ロシア女性と結婚し、現在はモスクワ在住。一男をもうけている。
ただし、ロシア女性と結婚をしたために、イスラム宗教社会からは疎外されている。

次男は、恋多き自由人。
村に滞在する赤十字勤務の女性とイイ仲であるが、ヨーロッパ各国を飛び回って、ビジネスと恋愛に現(うつつ)を抜かしている。
ひとことで云えば、「チャラい」アラブ人。

三男は、これが驚くことだが、イスラエルが侵攻して統治した際にシリア側にいたために、戻るに戻れずシリアで暮らしている。

そして末妹。今回、一度も会ったことがない従兄弟の男性と結婚をすることになっている。
相手はシリアでは有名なテレビ俳優。
過去に結婚で上手くいかなかったことがセリフで語られるが、下世話な理由でないことは、映画の後半の展開で察しがつく。

このように多種多彩なキャラクターが、末娘の結婚というひとつのイベントに集結することになる。
映画は、シリア新大統領誕生や、国境・民族問題をからめつつも、「家族の映画」としてユーモラスに撮っていきます。

チャラい次男の恋愛問題。
和解しがたい長男と父親。
夫から自由になりたい長女。
そして誰もがみんな末妹の結婚に、幸多かれと慮っています。

なにせ、末妹が婚約者と初めて会うのが、結婚式の当日。
式は、イスラエル・シリア間の非武装中立地域。
イスラエルからシリアに渡ってしまうと、二度とイスラエル側にも戻れない過酷さ。

この映画の良さは、そんな重い問題を抱えつつも、極東の遠い地域に住む日本人のわたしにも判るように、それもユーモラスに撮っているところにあります。


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終盤、国境の非武装地帯での結婚となるわけですが、これも一筋縄ではいきません。
ゴラン高原の当地域をイスラエルと認めたくないシリア側。
あくまでも統治地として通したいイスラエル側。

国境なんて消してしまいたい。
それが、パスポートに押されたスタンプならば、修正液で消してしまいたい。
いや、消せばいいんだ・・・

「国境はない。ただ空があるだけ」。
ジョン・レノンの『イマジン』の一節を思い出します。

とはいえ、国境は修正液で消せません。

映画は現実を見つめながらも、ひとつの踏ん切りをつけた結末を用意します。
それは、幸せ/不幸せ、泣ける/泣けない、というような、どちらかひとつの結論ではありません。

苦くて切ない結論ではありますが、「ひとつの踏ん切り」として評価したいエンディングでした。

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劇場で観る機会は少ないでしょうが、DVD化されたこの機会に是非とも観ていただきたい一本です。

推薦の意味も含めて、★5つを進呈します。

↓Myムービーのレビュー&採点はコチラから↓
http://info.movies.yahoo.co.jp/userreview/tyem/id332245/rid25/p0/s0/c0/

↓DVDはコチラから↓


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