『海炭市叙景』:観光客には判らない閉塞感 @ロードショウ・ミニシアター

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2010年、年の瀬も押し詰まって出かけた映画『海炭市叙景』。
5度芥川賞候補になりながらも、41歳で自殺した佐藤泰志の小説からの映画化です。

映画は5つのエピソードから成り立っています。

幼い時分に海炭市造船ドックの事故で両親を亡くした兄妹。
兄・妹ともドックで働いているが、不況の波は厳しく、3つあるドックのうち1つのドックの閉鎖とともに、兄は解雇されてしまう。
兄妹そろって臥牛山へ初日の出を参詣に出かけるのだが・・・

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商業地域として市が再開発を進める土地の一隅。
老いたネコ、ブタ、ヤギ、ニワトリと暮らす「ブタやのババァ」と呼ばれる老女。
若い甥が立ち退きの説得に訪れるのだが・・・

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老朽化したプラネタリウムの投影技師。
かつては、妻子とともに、ほんものの星を観に出かけたこともあった。
しかし、景気は悪くなり、妻は水商売に出かけていく。
技師の遣る瀬無さは募るばかり・・・

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老舗のプロパンガス屋の二代目。
新規事業として浄水器を取り扱うが、うまくいかず。
高校時分の同級生であった妻ともうまくいかず、妻は息子を密かに虐待している。
自分自身も同級生の女性と不倫をしているが・・・

年の瀬、帰郷したひとりの男。
路面電車の運転手をしている父親とは折り合いが悪く、ホテルへ投宿。
スナックの女に誘われるまま店に来たものの・・・

いずれも遣る瀬無いエピソードばかりです。

2010年の初夏に舞台のモデルとなった函館を訪れましたが、そのときは、港町らしく山と海が近く、その上、文化を感じさせる好い街だと感じたものです。
ですが、思い起こしてみると、夜(それも宵のうちともいえる時間でも)になるとひと通りもほとんどなく、道幅がひろい分、かえって寂しい感じを醸し出していたかもしれません。

映画では、観光客の目に触れないところを描いており、その遣る瀬無さは、観光客には判らないものばかりです。

特に遣る瀬無いのは冒頭の挙げた兄妹のエピソード。
初日の出を観て、新たな思いを・・・という結末でないところ、それも不慮の・・・ではなく、失意の・・・と思わせるところが切なく感じました。

しかしながら、監督は少しばかりの希望を残そうと描いています。

冬のうちに姿を消した「ブタやのババァ」の飼いネコ。
春になって戻ってきたときには腹ボテ。
「産め、産め」とささやきかけながらネコの腹を撫でる手に温かみを感じます。

評価は★3つ半としておきます。

ミニシアター系の日本映画のレビューはコチラから
⇒『死にゆく妻との旅路
⇒『スイート リトル ライズ
⇒『ゲゲゲの女房
⇒『マザーウォーター
⇒『ダーリンは外国人
⇒『パレード
⇒『ソラニン
⇒『CATERPILLAR キャタピラー
⇒『オカンの嫁入り
⇒『トイレット

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2010年映画鑑賞記録

 新作:2010年度作品
  外国映画46本(うちDVD、Webなどスクリーン以外10本)
  日本映画29本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 7本)←カウントアップ

 旧作:2010年以前の作品
  外国映画91本(うちDVD、Webなどスクリーン以外90本)
  日本映画22本(うちDVD、Webなどスクリーン以外20本)
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  • 『海炭市叙景』 故郷の呪縛

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