『あしたのパスタはアルデンテ』:今夜のパスタは、こんがらがって @ロードショウ・ミニシアター
なんだか美味しそうなタイトル。
それに、本国で大ヒット。
ということなら、トーゼン、イタリアンコメディなのだろうなぁと期待して出かけました。
保守的な田舎町で老舗のパスタ工場を営む両親。
息子がふたり。
兄は田舎に残って父親の仕事を継ぎ、弟はローマへ出て小説家を目指している。
祖母の誕生日を祝うかなにかで帰郷した弟。
たぶん、夜の家族揃っての会食では、父親の後継者の話題が出るはず。
弟としては、工場は継ぎたくない。
ローマで小説家を目指しているし、愛する彼もいる。
ならば、と先手を打って、その事実、その心情を兄に打ち明けたところ・・・
なんと、兄が先に、会食の席上で、自分には愛する「彼」がいると、爆弾発言!
イタリアコメディな感じのストーリーなんだけれども、どうにもこうにも演出がチグハグ。
巻頭からして、ありゃりゃ。
森の中を駆け抜けるウェディングドレス姿の花嫁。
石造りの古い建物の階段を登っていく。
男性がひとり、手にはピストル。
そのピストルを自らのほうに向ける・・・
なんだ、こりゃ?
演出も、堂々としすぎていて面食らう。
これは、どうも祖母の若かりし頃のエピソードらしい。
映画が進むうちに、おぼろげに判ってくるのだが、祖母はそもそも夫の兄だか弟だかのどちらかと恋仲だったのだが、訳あって、愛するひとではない方と結婚することになった。
件のピストル男は、愛するひとの方。
祖母は悲しみを乗り越えて、夫とパスタ工場を切り盛りしてきたのだった・・・
映画の根幹は、祖母の物語。
根幹に祖母の物語があって、その枝葉として、頑固な息子(祖母からみれば息子)、婚期を逃した娘(その妹)、ゲイの孫兄弟のエピソードがあるべきところのはずが、枝葉のエピソードに突出したハナシをもってきているので、幹が見えなくなった感じです。
祖母の物語が根幹である証左として、映画は祖母の死で締めくくられます。
そして、その祖母のお葬式が、冒頭の祖母の結婚式と渾然一体となります。
巨匠フェリーニを彷彿とさせる幻想的なシーンであります。
しかしながら、映画の大半を占める孫兄弟のエピソードや、父親との物語、婚期を逃した叔母、それぞれのエピソードの演出が泥臭く、時には爆笑を誘うが、大半はシンネリムッツリ顔だったりで、全体としてはチグハグな印象は否めません。
評価は★3つとしておきます。
<追記>
原題「Mine Vaganti」は海上機雷・水中機雷のことだそうです。
転じて、「爆弾発言」もしくは「いつ爆発するか判らないひと(ことがら)」の意味で、タイトルに付けられたのでしょう。
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⇒『未来を生きる君たちへ』
⇒『かぞくはじめました』←劇場未公開ですが
⇒『サラエボ、希望の街角』 @名画座
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2011年映画鑑賞記録
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日本映画 5本(うち劇場 0本)
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この記事へのコメント
想像するに、祖母は弟を愛していたのだが、何らかの事情、おそらく当時のいろんなしがらみの縛られて、駆け落ちもできず、兄の方と結婚せざるを得なかった。でもパスタ工場は、その弟と一緒に苦労しながらやってきたので、パスタに対する愛は弟への愛と重なって、パスタをいとおしいと思っている。(これも想像ですが、兄はあまり工場経営には関心がなく、弟にまかせっきりだったのではないでしょうか。)
自身のそんな人生を思い、せめて孫達には好きな生き方をしてほしいと考えるのは当然だし、
死ぬときは好きな死に方をしたいと思うのも、道理ですね。
うまく撮ればかなり面白い作品になったと思うのに、残念です。
でもいかにもイタリア人らしいやりとりなど描かれていたのには、大いに満足でした。