『ふがいない僕は空を見た』:遣る瀬無さに押し殺されそうになる @DVD・レンタル
『百万円と苦虫女』のタナダユキ監督の最新作『ふがいない僕は空を見た』は、山本周五郎賞受賞小説の映画化。
監督名に惹かれて、高校生の男子(永山絢斗)と、団地暮らしの人妻(田畑智子)が不倫する、それぐらいの前情報で鑑賞しました。
映画の本筋は、永山と田畑の不倫物語なのですが、かれらの不倫が暴露され、その波紋が広がり、関係するひとびとを変えていく、という物語。
「波紋が広がり・・・」云々って、あれれ、どこかで観たような。
あっ、『桐島、部活やめるってよ』に似ている。
あちらも、ひとつの出来事を異なる視点で何度か繰り返し描く手法をとっていましたが、この映画でも、主軸となる永山と田畑の不倫に至るまでは同じ手法です。
その後も、不倫が暴露されるに至るまでの経緯(田畑の夫婦関係、夫の母親との関係)を時間軸をさかのぼって描いていったり、と手法はかなり似ています。
ですが、登場するひとびとの感情というか、遣る瀬無さというか、そういうものを丹念に描いていくあたりは、『桐島』とは異なるところ。
妻の不倫の様子を盗撮してネットにアップする夫・・・
その映像を見つけて永山を貶めて、欲求不満を解消しようとする同級生たち・・・
そんな彼らを少しでも救おうとする青年・・・
だれもが遣る瀬無さ・ふがいなさを抱えていて、身近なところの社会がタコツボのようになっています。
登場人物が少々誇張されすぎかなぁ、なんて思わなくもないですが、観終わった後、遣る瀬無さに押し殺されそうになるほど、映画作品としての手ごたえを感じる作品でありました。
評価は★4つとしておきます。
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2013年映画鑑賞記録
新作:2013年度作品
外国映画13本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 3本)
日本映画 5本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 0本)
旧作:2013年以前の作品
外国映画31本(うち劇場 2本)
日本映画 5本(うち劇場 1本)←カウントアップ
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この記事へのコメント
何ともやるせない気持ちにさせられますが、それでも最後は前を向いているのがすごいところ。
ここまで人間を描けているので(多少誇張はあるにしろ)、これからこの監督に期待がもてます。