『祭の馬』:被災した馬をとおして見えること @ロードショウ・単館系

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福島県南相馬で東日本大震災を被った馬たちを追ったドキュメンタリー『祭の馬』をミニシアターにて鑑賞しました。
松林要樹監督による同じく被災後の南相馬を追ったドキュメンタリー『相馬看花』の第2部にあたります。
映画は、ミラーズクエストという元競走馬を中心につづられていきます。
観終わっての感想は、非常に興味深い、です。
さて、映画。

南相馬地方では古くから相馬野馬追と神事(祭)が行われており、それは戦国時代に敵方を滅ぼし、敵方の馬を奪った際、神に捧げたことに由来する。
野馬追では多数の馬が必要になるのだが、その多くは、引退した競走馬たちだ。
老齢で引退したのではなく、競争成績が悪く、引退を余儀なくされた、ということである。

ミラーズクエストもその一頭。
戦績は4戦全敗。4レースのうち抜いたのはただ1頭。
野馬追の馬として務めを果たすべく、南相馬の繋養施設にやってきた。
そして、そこで被災する。
津波からは生き延びたものの、福島第一原発からの放射能により、その繋養施設は立入制限区域にしていされてしまう・・・

この映画が興味深いところは、3つあります。

ひとつは、原発被災したミラーズクエストが被災したことにより生き延びていく、ということ。

すなわち、通常、競争成績が悪くて引退した馬は、いったんは繋養施設に乗馬名目で飼育されますが、神事なり何なり(神事がなければただ肥るだけ)が終わると、食肉用の馬として出荷されます。
ですが、ミラーズクエストは、原発被災したことにより、食肉市場に出回らせることはできません。
ですので、野馬追の神事を終えたのち、ミラーズクエストは放射能制限区域にいたことを示す焼印を押され、再び制限区域内に放擲されて生き延びるのです。
この運命の数奇さ。

ふたつめは、野馬追を描いた絵巻を途中途中で挿入して映し出すことで、いくつかの暗喩を感じさせること。

絵巻物に描かれた過去の神事と、現在の野馬追を対比することはもちろんですが、ほかにも次のような意味があるのでしょう。
つまり、絵巻に描かれた状況(戦さ)と、震災により被災(特に原発被災)の状況が同じ状況にある、ということです。
神事の起源が、戦国時代に敵方を滅ぼし、敵方の馬を奪った、というを忘れないでください。

みっつめは、ミラーズクエストやほかの馬たちは、被災したひとびとの縮図のようである、ということ。

馬たちは、人間の(国や県の)都合で(そのときどきの判断で)、右往左往します。
制限区域にしていする前に、一部の馬や牛は区域から出ていきました。
区域に残された馬たちは、二週間ものあいだ放っておかれ、その間には餓死する馬もでました。
避難所へ移されたものの、どこにも移動することはできず、たまたま、日高地方からの援助があり、日高へ移動してしばらくは英気を取り戻し、祭の馬として南相馬に還ってくる。
そしてその後は、先に書いたとおりです。

このいずれもが非常に興味深かったです。

松林要樹監督作品はデビュー作の『花と兵隊』でもそうでしたが、図らずも巡り合ってしまう運命の目撃者のように感じました。

評価は★4つとしておきます。

 

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2013年映画鑑賞記録

 新作:2013年度作品
  外国映画49本(うちDVD、Webなどスクリーン以外28本)
  日本映画28本(うちDVD、Webなどスクリーン以外 7本)←カウントアップ

 旧作:2013年以前の作品
  外国映画52本(うち劇場 2本)
  日本映画10本(うち劇場 1本)
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この記事へのコメント

ぷ~太郎
2014年01月11日 03:18
いや~、久々にいいドキュメンタリーを観たという感じです。「花と兵隊」の監督でしたか。思いテーマをしっかりと観せてくれますね。2013のベスト3にはいる作品です。

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