『恥』 イングマール・ベルイマン監督作品:恥=非人間性と解釈いたしました @DVD・レンタル

画像


イングマール・ベルイマン監督の1966年製作、日本での劇場未公開作品『恥』をDVDで鑑賞しました。
昨年2013年暮に観たドキュメンタリー『リヴ&イングマール ある愛の風景』中にかなり用いられた映画だったので、どんな映画なのか興味を持った次第。
さて、映画。

北欧のとある島。
元交響楽団員の夫婦(マックス・フォン・シドーとリヴ・ウルマン)が都会から離れて暮らしいる。
夫はかなり鬱気味で、なにかあると二階に通じる階段でうずくまってしまう。
妻は夫との間に子どもが出来ないことを悩んでいる。
島から離れた本土では内乱が続いており、それが都会を離れた理由のひとつでもある。
しかし、平和にみえた島にも、政府軍の部隊は上陸し、頭上を戦闘機が飛び交うようになってきている。
ある日、解放軍の軍隊がやって来て夫婦を姿を映画として撮るが、解放軍はその映像に自分たちに都合がいいようなセリフを重ねて宣伝に使っていしまう。
政府軍は、それを知り、他の島に暮らすひとびととともに夫婦を捕えてしまう・・・

それほどベルイマン監督の映画を観ているわけではないが、これほど直截的に戦争をモチーフにした映画は初めて観ました。
大規模な戦闘シーンなどは少ないのですが、爆破や暴力が轟音とともに描かれ、凄まじい迫力で恐ろしくなります。
スヴェン・ニクヴィストの撮影が素晴らしいです。

で、映画でありますが、ベルイマンの映画ですので戦争を描くのが目的ではありません。
戦争を通じて、人間性が崩壊していくさまを描くのが目的です。

ですので、場所の詳細や戦争の背景などは描かれません。
あくまでも、架空の島、架空の戦争です。
(スウェーデンの歴史に疎かったので、こんな戦争があったのかしらん、と観ている間ずっと思っていました)

人間性の崩壊は、主として夫マックス・フォン・シドーに起こります。
初めは、食用の鶏も殺せず、爆音に恐れおののいていただけですが、政府軍に捕えられたこととその後の妻と市長とのやり取りを通じて、人格が崩壊し、ひとを殺すことを厭わなくなってきます。
このあっというまの変化をマックス・フォン・シドーが恐ろしい迫力で演じています。

反対に、妻リヴ・ウルマンは、戦場での死を目の当たりにして、気丈だった精神が急速に不安になっていきます。
そして最後には、絶望に辿り着いてしまいます。

夫婦は、戦地となった島から何人かのひとびとと小舟にのって海に漕ぎ出しますが、何日経っても陸地は見えず、船頭は海に身を投げ、終いには夥しい数の兵隊たちの屍の中に小舟は彷徨い出てしまいます。
小舟の中で妻は夫にささやきかけます。
それは、自分たちが持ちえなかった赤ちゃんの姿をみた夢の話。
その夢のなかで、何か言葉を聞いた、でもその聞いたことがある言葉は思い出せない、というもの。

たぶんその言葉は、祝福や希望やそれら明るい兆しを意味する言葉なのでしょう。
思い出せないことから、絶望に辿り着いた解釈しました。

タイトルの『恥』とは、「人間性」に対する対義語ではありますまいか。
人間的要素をどんどんと喪っていく究極のものが、戦争。
そう解釈したりゃんひさでありました。

評価は★4つとしておきます。

<追記>
舞台が架空の戦争と判れば、ベルイマン監督作品の中でも判り易い部類の映画だと思います。

そのほかのベルイマン監督作品のレビュー
第七の封印
秋のソナタ

            

------------------
2014年映画鑑賞記録

 新作:2014年度作品
  外国映画 9本(うちDVDなど 1本)
  日本映画 6本(うちDVDなど 0本)

 旧作:2014年以前の作品
  外国映画37本(うち劇場 3本)←カウントアップ
  日本映画12本(うち劇場 3本)
------------------

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

ぷ~太郎
2014年04月22日 00:24
認知症と同じく、人間性を奪ってしまうものが戦争です。これはそれを描いた作品。戦場で戦う者ばかりでなく、被害をうける側も自分というものが壊されていく恐ろしさ、虚しさ。小舟の中で妻が言う、夢の中で聞いた思い出せない言葉は、神の言葉だと私は解釈しました。

この記事へのトラックバック