『ナバット』:寓意も詩情も溢れるアゼルバイジャンの映画 @東京国際映画祭アンコール上映

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昨年2014年の東京国際映画祭で好評だった作品のアンコール上映会。
先にレビュー記載の『メルボルン』とともに観たのが、この作品『ナバット』。
アゼルバイジャンの映画です。
そもそもアゼルバイジャンって、どこかしらん?
名前は聞いたことがあるけど、よく知らない。
調べてみると、イランの北に隣接、ロシアの南に隣接、トルコの東側、国の東側はカスピ海。
と、やはり、あまりなじみのない地域。
さて、映画。

遠くで銃声が聞こえる不安定な情勢の下、丘の上の小さな家に、病身の夫と暮らす女性ナバットの物語。
毎朝、ナバットは谷向こうの村まで牛乳を届けているが、やがて時代の波が地域を覆う・・・
(以上、東京国際映画祭公式ページより抜粋)

おお、こういう映画が映画祭で観たいんだよなぁ、と思う類の映画です。

前半はナバットの生活ぶりを丹念に描いていきます。

村から4キロか5キロほど離れたところに暮らすナバット。
病身の夫は寝たきり。
痩せた牛を飼い、牛から搾る広口ビン2本分の牛乳が現金収入の途。
毎朝、その2本のビンを村に住む妹夫婦のもとへ運んでいる。

オープニングの映像から見入ってしまいました。

岩が目立つ丘、曲がりくねった道、道の向こうに人家は見えない。
暫くすると、手前側の坂の陰から牛乳ビンを抱えたナバットが現われ、どんどんと近づいてくる。
カメラの前を通り過ぎ、さらに歩いていく。
カメラが左へパンすると、曲がった道はさらに続いており、その続いた道をナバットが歩いていく。
道のはるか向こうに、ちらちらほらと人家がみえ、村があることがわかる。

このワンカットだけで、暮らしぶりがわかるという優れたものです。

で、後半は寓意と詩情に溢れた物語が、静かに静かに展開していきます。

夫は死に、戦争は厳しさを増し、村も戦渦に見舞われる。
しかし、村から遠く離れたナバットはそれを知らない。

いつものように牛乳ビンを抱えたナバットが向かった村は、もぬけの殻。
村民全員が逃げ出していた。
夜になって、村の方をみやると、そこは真っ暗闇。
いつも灯されているあかりが見えない。

翌日、ナバットは無人の家を訪れ、家に残されたオイルランプを灯していく。
一日ごとにあかりの数が増えていく。
それとともに、彼女は戦死した息子のことを思い出す。

そして、この地を離れなかった仲間を見つけ出す。
それは一匹の雌狼。
雌狼は、子育てのために、ナバットの痩せ牛を狙っている・・・

この後半では、無人の家の中の様子を写すカメラが素晴らしい。
ある家では食事の最中、ある家では洗濯をしていた最中、がらんとした礼拝堂には崩れた壁の欠片が散らばり、といったように、ただ静かに写すだけなのだが、それが素晴らしい。
そして、ランプを灯すナバット。

夜、少しずつ増えていくランプのあかりも美しい。

後半はほとんど台詞がありません。
しかしながら、片時も画面から目を離せません。

いやぁ、ホント素晴らしかった。
こういう映画が観られるのが映画祭の価値といいうもの。

評価は★4つ半としておきます。

<追記>
一般公開してほしい作品ですが、以前のようなミニシアター全盛期ならいざしらず、さすがに厳しいでしょうね。

(ポスター、プレス画像 追加2015.05.15)
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2015年映画鑑賞記録

新作:2015年度作品:11本
 外国映画 8本(うちDVDなど 0本)
 日本映画 3本(うちDVDなど 0本)

旧作:2015年以前の作品:28本
 外国映画21本(うち劇場 6本)←カウントアップ
 日本映画 7本(うち劇場 0本)
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