『天使が消えた街』:実際の事件で感じた監督自身の気持ち @試写会

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お気に入り監督のマイケル・ウィンターボトムの新作『天使が消えた街』、ひと足早く試写会で鑑賞しました。
先ごろ公開された『イタリアは呼んでいる』と同じく、イタリアを舞台にした作品です。
この作品は、イタリアで実際に起きた英国人女子留学生殺害事件(被疑者の名から、アマンダ・ノックス事件と称される)をモチーフにしていますが、通常のミステリー映画とはまったく異なります。
そこいらあたりは踏まえておかないと、なんじゃぁこりゃぁ的な映画になってしまいます(かくいう、りゃんひさはかなりこの状態でした)。
さて、映画。

英国人の映画監督トーマス(ダニエル・ブリュール)は、5年ほど前にシエナで起こった英国人女子留学生殺害事件について映画化するように製作者から依頼された。
彼は、先ごろ離婚したばかりで、英国の人気女優である元妻との間で、幼い娘の親権を争っている最中であり、それが故か、最近は監督業は振るわず、まったく映画が撮れていないような情況である。

イタリアに赴いた彼は、事件を取材する女性ジャーナリスト・シモーン(ケイト・ベッキンセイル)の助けを借りて、実際に事件が起きた現場や関係者たちに取材をするが、脚本は一向にはかどらない。
その上、ドラッグに溺れるようになったトーマスは、しばしば幻覚をみるようになっていた。

たとえば、事件があった日の様子や、彼がみてしまった妻の浮気現場などなど・・・

といったハナシ。

事件の再現や謎解きはまるでありません。
この映画で描かれるのは、映画監督トーマスの苦悩。
なにか、救いや慰めはないのか・・・
ただただ、ドラッグに溺れる彼の姿は痛々しく、観ていて陰鬱になってきます。

そんな彼が、劇中、2度ほどつぶやくセリフが印象的です。

暴力や死が溢れる映画を撮るのは、もういやだ。愛のある映画を撮るんだ」と。

このセリフは、マイケル・ウィンターボトム自身の心のうちなんでしょう。
『ウェルカム・トゥ・サラエボ』『イン・ディス・ワールド』『マイティ・ハート/愛と絆』と国際紛争を舞台にした映画や、『アイ ウォント ユー』『キラー・インサイド・ミー』などの暴力と死がモチーフの映画を撮ってきた彼にとっての。
なので、最近作は、ほとんど大きな出来事が起こらない日常を足かけ5年かけて描いた『いとしきエブリデイ』を撮ったのでしょう。

この映画には具体的な暴力や死のシーンはほとんど出てこないのですが、いくつか印象に残るシーンがあります。

ひとつはトーマスがみる幻影・幻覚(これは判り易い)。
もうひとつは、英国の元妻のもとで暮らす娘とのインターネット会話のシーン。
ここでは、一方的に通信が切断されることで、娘の画像が静止画のまま動かなくなってしまうシーンがあり、死を感じさせます。

このように、図らずも暴力や死に囚われたトーマスは、だれが犯人とか、なぜ殺したとかいう事件の内容よりも、事件の被害者がどのような女性であったのかに惹かれていきます。
被害者の劇中の役名はエリザベス、実際の事件ではメレディス・カーチャー。

この被害者の姿が、のちに女性ジャーナリスト・シモーンに替わってトーマスを案内する英国人大学生メラニー(カーラ・デルヴィーニュ)とダブっていきます。
そして、そのメラニーはトーマスの幼い娘の姿とも重なり合っていきます。

この事件で確かなことは、ひとりのエリザベスという被害者がいたということ。
幻影ではなく、それだけは確か。
そう、トーマスは感じるのでありました・・・

といった感じの映画なのだけれど、やはり、サスペンスやミステリー映画だという思い込みがあったせいか、どうにも曖昧模糊としていて、すんなりと入ってきませんでした。

評価は★★★(3つ)としておきます。

<追記>
マイケル・ナイマンに似た音楽ですが、担当はハリー・エスコットというひとでした。
SHAME/シェイム』『グアンタナモ、僕達が見た真実』を担当しています。

エンドクレジットの際に「だれそれに捧ぐ」というタイトルが出ますが、それは、実際の事件の被害者メレディス・カーチャーの名前です。



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2015年映画鑑賞記録

新作:2015年度作品:69本
 外国映画52本(うちDVDなど 8本)←カウントアップ
 日本映画17本(うちDVDなど 2本)

旧作:2015年以前の作品:96本
 外国映画78本(うち劇場15本)
 日本映画18本(うち劇場 5本)
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