『父を探して』:とにかく画で魅せる秀作アニメーション @DVD・レンタル
昨年3月にロードショウされたブラジル製アニメーション『父を探して』、DVDで鑑賞しました。
ブラジル製のアニメーションを観るのは初めてではなかろうか。
簡単な線描の、ぽよぽよ髪の毛の少年が主人公で、このタイトルだから、ほのぼのした映画かしらん、と思っていたのですが・・・
さて、映画。
ブラジルの田舎町、少年は父と母との三人暮らし。
農家の生活は苦しく、父は都会へ出稼ぎに行ってしまい、帰ってこない。
寂しく思った少年は、父を探して、ひとりで列車に乗るのでした・・・
という物語で、父親を探す物語を描きながら、ブラジルの近代史を描こうという試み。
田舎の生活は苦しくなり、都会へ出稼ぎし、都会では搾取され、人々の生活はスラム化し、自然は荒廃してしまう。
そんな中で父親を見つけられない少年は、荒れ果てた故郷へ戻り・・・と字で書くと、これまで何度もみたようなハナシ。
何度もみたようなハナシだが、それを描くアニメーションが素晴らしい。
万華鏡のような幾何学模様が中央から現れては消えていくオープニングから、まるでクレヨンや水彩画のような冒頭。
かと思えば、スタイリッシュにデザインされた群舞のような都会で働く人々など、シークエンスごとに表現方法が異なっている。
しかし、それがバラバラではなく、全体的に統一がとれているように感じられる演出は、素晴らしいの一言。
そして、観終わって気づくのだが、父親探しのさ中に少年が出逢う人々は、成長した少年自身。
それも、老年期、壮年期、少年期と若返っていき、最後は、少年自身が最初に出逢った老人と化す、というあたりなどはシンプルな物語を語るのに、かなり工夫されている。
惜しむらくは、一部実写が使われていること。
環境破壊の映像なのだが、これがかなりインパクトがある。
ここのところは、監督が主張したいところなのだろうが、ちょっとインパクトが強すぎた感じ。
全編ハッキリとしたセリフなどなく、とにかく画で魅せることに徹しており、昨年では『レッドタートル ある島の物語』と並ぶ(もしくは凌駕する)秀作である。
評価は★★★★☆(4つ半)としておきます。
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2017年映画鑑賞記録
新作:2017年度作品:22本
外国映画18本(うちDVDなど 3本)
日本映画 4本(うちDVDなど 0本)
旧作:2017年以前の作品:25本
外国映画21本(うち劇場鑑賞 5本)←カウントアップ
日本映画 4本(うち劇場鑑賞 0本)
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この記事へのコメント
この手のアニメは、短編はまだしも、長編は日本ではなかなか作られないですね。下地がないのかもしれません。