『ドーバー海峡殺人事件』:探偵そのものに焦点を当てた異色ミステリ @VHS

画像

アガサ・クリスティの小説『無実はさいなむ』の映画化作品『ドーバー海峡殺人事件』、中古VHSで鑑賞しました。
製作されたのは1984年。
日本公開は1985年のお正月作品として同年の年末。
ロードショウ当時も観ているのですが、英国BBCでミニシリーズ化されるという情報を得て、再鑑賞した次第。
なお、日本国内ではDVD化されていないため、少々探し回ったりしました。
さて、映画。

1950年代前半の英国。
岬の突端にあるアーガイル家に中年男性が訪ねてくる。
彼の名前はカルガリー博士(ドナルド・サザーランド)。
「2年前のある日、お宅の息子さんのジャッコ君をヒッチハイクで拾ったが、彼が車を降りた後、住所録が忘れていった。生憎、私は翌日から調査旅行で2年間海外に出かけていたため、返すのが遅くなってしまった」という。
するとアーガイル家の主人リオ(クリストファー・プラマー)から「ジャッコは母親殺しの罪で死刑になった。警察にはヒッチハイクをしたのでアリバイがあると訴えていたが、証人は見つからず、生来の粗暴な性格から、アリバイ云々も信用してもらえなかった。しかし、もう事件は片が付いているのだから、掘り返さないでほしい」と告げられる・・・

というところから始まる物語。

お馴染みの探偵エルキュール・ポワロもミス・マープルも登場しない地味な作品だが、原作小説『無実はさいなむ』はアガサ・クリスティ自選ベストテンの1本。

無実の青年を死刑にしてしまったと自責の念に駆られたカルガリー博士が、事件の真実を暴き、ジャッコ青年の無実を証明しようとするが・・・とストーリーは展開していく。

映画は、暗く渋いカラーで現在を描き、アーガイル家の面々から語られる過去の出来事をモノクロで描き、さらにカルガリー博士が想像するジャッコの絞首刑の場面をブルー系のモノクロで表現するという念の入れよう。
さらに現在のシーンは、カルガリー博士がアーガイル家の人々に聞き込みをする場面がほとんで、おそろしく地味。
なので、ロードショウ当時は面白くないミステリーだなぁ、と思っていたのですが、今回見直してみると、意外に興味深い。

事件を調査しながらも、無実の青年の死に苛まれるカルガリー博士の心情が、ドナルド・サザーランドの渋い演技から伝わってくるし、証言者のフレーズがオフで繰り返されるという演出で逡巡している彼の様子がさらに強調されている。

調査が進むに従い、新たな殺人事件が発生し、カルガリー博士の苦悩は否応なく増し、さらに極めつけは事件の真相。
トリックや事件の概要などは大したことないのだが、真相を知ることで、カルガリー博士は懊悩することになってしまう。

探偵としては割り切れないもので、観客の気持ちとしてもスッキリと晴れることがない。
アガサ・クリスティの底意地の悪さをみるようである。

全編を彩るデイヴ・ブルーベックのジャズミュージックは強烈で、音楽に合わせた編集方法は、市川崑監督の金田一耕助シリーズを思い出しました。

謎解きミステリとしてはいまひとつながら、事件を探る探偵そのものに焦点を当てたあたりが興味深い異色作品といえるでしょう。

評価は★★★☆(3つ半)としておきます。

------------------
2017年映画鑑賞記録

新作:2017年度作品:81本
 外国映画63本(うちDVDなど16本)
 日本映画18本(うちDVDなど 0本)

旧作:2017年以前の作品:52本
 外国映画44本(うち劇場鑑賞11本)←カウントアップ
 日本映画 8本(うち劇場鑑賞 3本)
------------------

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

ぷ~太郎
2018年03月29日 17:32
これは「真実を知ってもは誰も幸福にはならない」というミステリーで、クリスティ作品の中の一ジャンルでしょう。私の好きな「ホロー荘の殺人」もある意味このジャンルですね。これはこれで面白いものです。が、映像で観るには適さないような気がします。
りゃんひさ
2018年03月30日 00:08
ぷ~太郎さん、コメントありがとうございました。
原作は、クリスティ自選ベスト10作品で、映画化するのはかなり難しい類のミステリーですね。
おっしゃるとおり、「真実を知ってもは誰も幸福にはならない」というのが本旨なので、もっと遣る瀬無さが出ていると秀作になったのですが・・・

この記事へのトラックバック