『イナゴの日』 :冷たく暗いヒューマニズム、虚飾の奥底でうごめく人間たち @DVD

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時間をみつけての買い置きDVD鑑賞、今回は『イナゴの日』 。
1975年製作のジョン・シュレシンジャー監督作品。
前置きはなしで、さて、映画。

1938年の米国ハリウッド。
エール大学を卒業したばかりの青年トッド(ウィリアム・アザートン)、映画界の美術畑での成功を夢見て、ハリウッドにやって来た。
間借りしたアパートメントは、大震災の名残りで壁にひびが入っている有様。
向かいに暮らすのはグリーナー父娘。
父(バージェス・メレディス)はかつて新聞にも好評記事が掲載された舞台の道化役者だが、いまはその日暮らしの台所用洗剤の訪問セールスマン。
娘のフェイ(カレン・ブラック)はスターを夢見ているが、いまはエキストラ出演がせいぜい。
そんな中、トッドは同じくエール大出身のパラマウント映画の美術部長に取り入り、大作映画のコンテ作成の仕事を得る・・・

といったところから始まる物語で、ハリウッドの映画界では下層の人々を中心にした、虚飾の物語が綴られていく。

記憶によれば、尊敬する故・双葉十三郎がこの映画を相当貶していた。
こんな幻滅世界を描く映画をいまさら撮ってどうするのか、と。

たしかに、この映画が公開された1976年初めは、アメリカンニューシネマも終盤を迎え、米国への幻滅さは最高潮だったかもしれない。
(なお、同じく米国幻滅映画『ナッシュビル』も同じ年に製作され、日本公開は76年4月だった)

なので、当時の雰囲気からすれば、今更・・・といった感じが強いのは仕方がない。

が、この手のリアルな幻滅映画は、相当、年を経てから観ると興味深いし、すこぶる面白い。

美術部での職を得たトッド青年とは裏腹に、エキストラ女優フェイは一向に芽が出ない。
そのうちフェイは、父親の死をきっかけに、熱心なキリスト教信徒の中年男性ホーマー(ドナルド・サザーランド)と同棲することになるが、浮ついた欲望は抑えることができず、カウボーイの元ボーイフレンドをホーマー宅に同宿させ、裏では生活のためにコールガールの仕事もするようになる。

さらに、禁欲的生活をし、その特異な風貌からナチスドイツのスパイと揶揄されるホーマーは、無軌道なフェイの行動を前に、次第に精神を病んでいく・・・

もう、とにかく、希望なんてないドラマ展開。

そして、最後の最後にタイトルの元となった一大カタストロフィがやって来る。
セシル・B・デミル監督の新作プレビューで沸き立つ大劇場の前、群衆の中で、覗き屋・スパイと隣家の子どもに囃子立てられたホーマーが、その子どもを踏み殺してしまうのを契機にして、劇場前に集まった観客たちがホーマーを血祭りにあげようと、暴徒と化してしまう。

その圧倒的なモブシーンは、先にトッド青年が絵コンテとして描いていた暗いシーンとオーバーラップし、さらにはヒトラーの侵攻・激化する戦争とも重なり合っていく・・・
このクライマックス、ほんとうに凄まじい。
もう、二度と観たくない・・・
いや、もしかしたら、また観たいかも。
自分のなかにも、暴走する群衆と同じような血はあるかもしれない。

というわけで、温かいヒューマニズムとは真逆の、冷たく暗いヒューマニズムの映画。
もっと評価されてもいい映画だと思いました。

評価は★★★★(4つ)としておきます。

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2018年映画鑑賞記録

新作:2018年度作品:31本
 外国映画25本(うちDVDなど 1本)
 日本映画 6本(うちDVDなど 0本)

旧作:2018年以前の作品:25本
 外国映画20本(うち劇場鑑賞 2本)←カウントアップ
 日本映画 5本(うち劇場鑑賞 1本)
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