『ノクターナル・アニマルズ』:格好つけすぎ @DVD・レンタル

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昨秋ロードショウの『ノクターナル・アニマルズ』、DVDで鑑賞しました。
オースティン・ライトによる同名小説を『シングルマン』で監督デビューしたカリスマ・デザイナー、トム・フォードが脚本・監督した作品。
さて、映画。

美術商兼コーディネーターとして活躍するスーザン(エイミー・アダムス)。
先鋭的な美術展のオープニング初日のある夜、20年前に離婚した元夫のエドワード(ジェイク・ギレンホール)から、「ノクターナル・アニマルズ(夜の獣(けだもの)たち)」と題する小説が送られてきた。
自身に献辞されたその小説を読み始めたスーザンは、そこに描かれた内容に衝撃を受ける・・・

といったところからはじまる物語で、映画の大部を占めるのが、その小説を映像化したもの。

その小説の内容は・・・
妻と娘とともに夜のハイウェイを自動車を走らせていたトニー(ジェイク・ギレンホール)。
そこへ、二台の地元ドライバーの自動車が執拗に絡んでくる。
振り切ることもできず停めた車から、妻と娘を彼らに拉致され・・・
結果、妻と娘はレイプされた上に殺害されてしまう。
しかし、トニーは地元の保安官ボビー(マイケル・シャノン)とともに、妻と娘を殺した犯人たちを捜査し、追い詰めていく・・・

と展開する。

ま、小説の内容だけならば、米国地方都市の暗部を描いたクライムミステリーといったところで、目新しくはない。

この映画の眼目は、そんな小説を中心にしながらも、 エドワードと交際して結婚したスーザンの過去と、現在のスーザンの現在を織り交ぜて描くところにあり、過去の出来事が小説にリンクしていき、姿を現さない元夫からの手ひどい復讐が待ち構えている・・・というもの。

なので、この話を面白く魅せるには、かなりの映画的工夫がいるのだけれど、トム・フォードは監督としては上手く処理しているが、脚本としてはあまり上手くいっていない。

演出上の上手い点を上げると、

オープニングから登場する深紅を背景にした女性たちの図(オープニングでは肥った初老の女性たちが全裸で踊り、『ツイン・ピークス』を彷彿とさせる悪夢的ビジュアル)で、これは小説中の殺される妻と娘、およびスーザンと呼応するように撮られている、
つぎに、
小説、現在、過去のつなぎ、これは抜群に上手く、時制の連続性保ちながら転換するショットが多用され、ここいらあたりは、さすがカリスマ・デザイナーと思わせる。

これに対して、脚本が上手くなく、

スーザンがなぜ故に小説に驚き続けるのかがよくわからない。
過去のシーンで、エドワードに「あなたは、自分自身のことしか書けないのね」とか、エドワードから夜型人間であることを揶揄して「きみは夜のけだものだ」と言われるところから、現在のスーザンが別れた元夫が小説のような事件に巻き込まれたと思い込んでいる節があるのはわかるが、小説の最後には事実でない(事実であっても結末は違っている)ことがわかるので、小説の中の犯人たちが自分(スーザン)を揶揄していることがわかるようなワンシーンが是非とも欲しい。
これがあるかないかで、ラストのしっぺ返し(と思うのだが)のリアルさや重みが変わってくると思うのだけれど。

その他、
小説を読んでハッとするスーザンのショットがいつも同じ風で一本調子。
なにか小説のワンエピソードが現在のスーザンに影響を及ぼすようなところも欲しいし、オープニングの悪夢的美術エキシビションが後半、なんら活かされていないのも不満。

ということで、シーンシーン、ショットのつなぎには観どころはあるものの、物語のドライブ感が少々乏しい映画みたいで、平たく言えば「格好つけすぎ」というところではありますまいか。

評価は★★★☆(3つ半)としておきます。

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2018年映画鑑賞記録

新作:2018年度作品:46本
 外国映画37本(うちDVDなど 3本)
 日本映画 9本(うちDVDなど 0本)

旧作:2018年以前の作品:47本
 外国映画40本(うち劇場鑑賞 6本)←カウントアップ
 日本映画 7本(うち劇場鑑賞 1本)
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この記事へのコメント

じゃむとまるこ
2018年08月03日 22:20
こんにちは。
>小説の中の犯人たちが自分(スーザン)を揶揄していることがわかるようなワンシーンが是非とも欲しい。
そうなんですよ、これがわかりにくいので、現実と小説はリンクしているのはわかるのですが、どうつなげるのかどうにも悩みます。

太った女性の衝撃的芸術作は、言われてみれば、長い年月の間に肥大化して崩れようとしているスーザンの自我だというのも、そうか、と思うのですが放置プレイ的ですよね。

そのあたりをわかったうえでもう一度鑑賞するとよいのかもしれませんが、二度観たいというほど好みの映画でもないのですね~。
2018年08月04日 21:10
じゃむとまるこさん、コメントありがとうございました。
難解、理解にある種の何かを要する=上質という感じを作りてが感じているのが、不愉快な感じの映画でした。
こういうのをスノッブというのでしょうかねえ。

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