『鏡の中にある如く』: 「神の沈黙」ではなく、「神との訣別」第1作 @特集上映

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イングマール・ベルイマン監督生誕100周年映画祭、3本目の鑑賞は『鏡の中にある如く』。
1961年製作作品で、『冬の光』『沈黙』とあわせて、「神の沈黙三部作」と呼ばれる三作品の第1作目です。
今回の映画祭での眼目がこの3本でした。
鑑賞順は製作順とは異なりましたが、3作品とも鑑賞でき、嬉しく思っています。
そして、ベルイマン監督について自分なりに考えを改めたこともありました。
さて、映画。

ある夏のバカンスの一幕。
老作家ダビッド(グンナール・ビヨルンストランド)は、娘カーリン(ハリエット・アンデルソン)、彼女の夫で医師のマーチン(マックス・フォン・シドー)、息子ミーナス(ラルス・パッスガルド)の家族四人で久しぶりにひと夏を過ごすことにした。
このところダビッドは執筆のために海外に赴いていることが多い。
まだ冷たい海で四人で過ごした朝、ダビッドはマーチンからカーリンの病状について告げられる。
統合失調症を患うカーリンは先ごろ退院したが完治の見込みはない、と。
ダビッドはそれを聞き、娘の様子をつぶさに観察し、小説にしたためたいと日記に記す。
というのも、最近、執筆活動が思わしくないからであった。
他方、息子のミーナスは性への目覚めが著しく、内面での葛藤が続いている。
また、早く母を失った彼は、親からの愛情を渇望しているが、父は常に不在で、いろいろと欲求不満がたまっている・・・

といったところから始まる物語で、物語中に何度も「神」について言及されるが故に、「神」についての物語だと誤解されるような映画である。

神についての言及で中心となるのは、カーリンの行動であり、統合失調症が酷くなってしまった状態の彼女は、自身で制御不能の状態となり、何らかの助けを求めざるをえない状態に陥り、彼女はそのとき、同じ状態にいる多数の人々の群れに属しているかのようになってしまう。
「神」に助けを求めるカーリンであるが、統合失調症であるのであって、当然のことながら「神」が現れて、助けてくれはしない。

観ているうちは、「神」といっているが「悪魔」か何か、邪悪なものの暗喩ではないかと感じるのだが、それは終盤、当たらずとも遠からずのような形で現れる。

父の日記を読み、自分を救うのではなく、ただ観察し、それを著作にしたためようとする父の態度に、極度に不安になったカーリンは、精神の均衡を崩して、パニックに陥ってしまう。
そのとき、傍にいた弟ミーナス(多感で、その多感ぶりをその直前カーリンにからかわれてしまう)と一線を越えてしまいそうになる(越えたかどうかは、そのときの描写ではわからない)。
クライマックス、病状が悪化したカーリンは、「神」が訪れる部屋で錯乱するが、彼女が観るのは、蜘蛛の姿をし、優しい顔をした「神」。
彼女は、それに邪悪な性質を感じ、必死で払い除けた、と錯乱しながらも語る・・・

このシーン、ハリエット・アンデルソンの演技もあってものすごいのだが、もっとすごいのはカットのつなぎで、「神」が現れるという扉がゆっくりと開く画があり、カットが変わって人影(その形に注目)、そして叫ぶカーリンと繋がる。

重要なのは「人影」で、これはのちに、カーリンとマーチンが島を去る際、ひとり玄関口に残されたミーナスの影と同じ形をしている。

つまり、カーリンが錯乱の中でみた「神」の姿は、その直前で一線を越えたかのようにみえた弟ミーナスだといえる。

ということは、カーリンにとって、「神」などどこにもいない・・・

神など、どこにもいない・・・そういう映画かと思いきや、ラストシーンで、それまでミーナスにろくに語りかけなかった父ダビッドが、神は愛そのものだと語る。
ただし、その愛は、うまくいった愛、うまくいかなかった愛、崇高な愛、ばかげた愛・・・それらすべて愛である、という語る。

重要なのは、ばかげた愛であろうが、うまくいかなかった愛であろうが、という点。

たぶん、イングマール・ベルイマン監督、ここにきて、これまでの宗教的な神の概念と訣別したように思えます。
なので、この後、どんどんと人間(神と対立する人間ではなく、訣別した後の存在として)の内面を深く掘り下げて描いていったように思いました。

評価は★★★★☆(4つ半)としておきます。
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2018年映画鑑賞記録

新作:2018年度作品:48本
 外国映画39本(うちDVDなど 3本)
 日本映画 9本(うちDVDなど 0本)

旧作:2018年以前の作品:49本
 外国映画42本(うち劇場鑑賞 8本)←カウントアップ
 日本映画 7本(うち劇場鑑賞 1本)
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