『若者のすべて』: ネオ・レアリズモの根底に流れるデカダンス @名画座

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ことしは旧作を劇場で観る機会が例年よりも多いですが、この映画もそんな1本。
映画は、ルキノ・ヴィスコンティ監督の1960年作品『若者のすべて』。
東宝東和によりリヴァイバル上映された1983年に一度観ているので、35年ぶりの再鑑賞ということになります。
さて、映画。

イタリア南部で貧しい生活を続けていたパロンディ一家。
家長である父親が亡くなったことから生活はさらに苦しくなり、一家は、北部の大都市ミラノへ出稼ぎに出ていた長男ヴィンチェントを頼って、やって来る・・・

というところから始まる物語で、映画は5人兄弟の名前をとって5部構成になっています。

兄弟は順に、ヴィンチェント(スピロス・フォーカス)、シモーネ(レナート・サルヴァトーリ)、ロッコ(アラン・ドロン)、チーロ(マックス・カルティエ)、ルーカ(ロッコ・ヴィドラッツィ)。

第1部「ヴィンチェント」では、出稼ぎ中の彼が、美しい娘ジネッタ(クラウディア・カルディナーレ)と恋仲になり、彼女の家に身を寄せ、今日まさに婚約の祝い。
そんなところへ、一家がどやどやとなだれ込んで、祝いの席は混乱。
挙句、ヴィンチェントもろとも一家は追い出されてしまう、という一幕。
ここいらあたりはヴィスコンティ監督の第3作『ベリッシマ』を彷彿とさせる喜劇調もある。

第2部「シモーネ」。
安いが狭い部屋を借りた一家。
ある雪の夜、家を追い出された娘ナディア(アニー・ジラルド)を助けたが、一攫千金ならばボクシングに限ると吹き込まれ、シモーネたちはボクシングジムに見学に行く。
そこで、体格を見込まれたシモーヌはスカウトされ、ボクサーとしてトレーニングを積むとともに、ナディアと恋仲になる。
しかし、ナディアは娼婦で、彼女にのめり込むシモーヌは、いっときの栄光の手放してしまう・・・

と、この第2部の途中からドラマは急速に悲劇の方に傾いていき、第3部にはいると、ナディアを挟んでのシモーヌとロッコの愛憎劇が繰り広げられることになる。

シモーヌの前から姿を消したナディア。
兵役中のロッコは、ミラノから遠く離れた町で彼女と再会する。
ナディアは、実は服役していたのだった。
家族から遠く離れた場所でロッコとナディアは急速に愛し合うようになり、退役後も愛し続ける・・・

堕落したシモーヌは、ロッコとナディアが恋仲なのを知り、遂には、ロッコの目の前でナディアを犯す・・・
このシーンは強烈なインパクト。
凄まじい暴力と怒りが噴出している。

ナディアはロッコの許を去る。
さらに堕落し、どうしようもなくなったシモーヌは、それでもナディアを忘れられず、町はずれの湖近くで街娼行為をしていると聞き及んだ彼は、ナディアを湖の辺で刺し殺してしまう。
このシーンも強烈。

しかし、もっとも強烈なインパクトを残すのは、その後、ロッコがボクシングで勝利し、地方チャンピオンになった祝いの席に、ナディアを殺したシモーヌがやって来てからのシーン。
血まみれのコートを着たシモーヌを抱き留め、放心するシモーヌとともにベッドに横たわるロッコ・・・

このシーン、あまりに強烈で、ここへきてこの映画の通底に流れる、ある種のどす黒さが前面に出てくる。

シモーヌに対するロッコの想いは、ある種、無条件の愛なのだが、兄弟愛・家族愛というものを逸脱しており、どこかしら背徳感があった。

前半、「アポロのような」と形容されるシモーヌに対して、「弱弱しい」と形容されていたロッコ。
この形容は、背徳感への重低音であり、後半、このベッドで横たわり抱擁しあうロッコとシモーヌは、近親相姦的な、それも男性間の匂いが感じられるのだ。
ナディアは、その代理のようにも思われてくる。

イタリア・ネオ・レアリズモの系譜でその総集編のような映画でありながら、後年の『熊座の淡き星影』から『ルードウィヒ/神々の黄昏』へと繋がるヴィスコンティ監督独特のデカダンス・頽廃趣味。
そういったものが根底に感じられたのでありました。

評価は★★★★★(5つ)です。

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2018年映画鑑賞記録

新作:2018年度作品:81本
 外国映画65本(うちDVDなど 8本)
 日本映画16本(うちDVDなど 2本)

旧作:2018年以前の作品:78本
 外国映画68本(うち劇場鑑賞17本)←カウントアップ
 日本映画10本(うち劇場鑑賞 4本)
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