『質屋』:あなたは「知っている」というが、わたしは「経験した」 @DVD・レンタル

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シドニー・ルメット監督の1964年作品『質屋』、DVDで鑑賞しました。
シドニー・ルメットといえば、『セルピコ』以降の、70年代に入ってからの社会派サスペンス映画がなじみ深いですが、それ以前の作品は『十二人の怒れる男』以外、ほとんど観たことがありません。
この映画もタイトルだけは聞いたことはありましたが、内容はほとんど知りませんでした。
さて、映画。

ニューヨークの下町で質屋を営むソル・ナザーマン(ロッド・スタイガー)。
彼はかつてポーランドで大学教授をし、妻と子どもふたりと幸せに暮らしていた。
が、第二次世界大戦で状況は一変。
ユダヤ人である彼ら一家は収容所に送られ、一家では彼一人だけが生き延びた・・・

というところから始まる物語で、巻頭はナザーマン一家のピクニックシーンから始まり、スローモーションで撮られたそのシーンは美しく儚げ。

下町とあって、彼の店にはガラクタ同然の質草で金を乞う人々が何人も現れる序盤は下町人情喜劇のようだが、その合間合間にナザーマンの脳裏には第二次世界大戦のときのことが思い出される。
それらのショットは短く、瞬時には何が写っているのかがわからないものある。
が、何度も何度も登場するので、後々わかってくるが、それら記憶の断片は収容所のことが多い。

被害者であっても、ナザーマンも過去に苛まれているわけで、戦争の傷跡は深くて大きい。

周囲との関係を断っているナザーマンであっても、彼に関わってくる人物が4人ほどいる。

ひとりは、店の従業員の青年ヘスース(ジーザスのスペイン語読み)(ジェイミー・サンチェス)。
もうひとりは、マリリンという女性の社会福祉事業家(ジェラルディン・フィッツジェラルド)。
もうひとりは、質屋のスポンサーであるロドリゲス(ブロック・ピータース)。
最後のひとりは、収容所で死んだ友人の妻テッシー(マルケータ・キンブレル)。

ヘスースは自分の店を持ちたいと恋人で娼婦のメイベル(セルマ・オリヴァー)に告げ、そこから事件が起こる。
メイベルは肉体を持ってナザーマンに金の無心をするが、その行為は、ナザーマンに過去の記憶を呼び起こさせる。
ナザーマンがナチスの将校たちに肉体を弄ばれたこと、を。
そして、メイベルら娼婦を囲う娼館のオーナーが質屋のスポンサーであるロドリゲスであることを知り、自分が悪徳な社会を担っていることに絶望を感じ、自暴自棄になってしまう。

自暴自棄になったナザーマンは、これまでのがめつい商売から一転、ガラクタに高値を付け、店の質流れ品を安く売ろうとする。
止めにはいったヘスースを、「ナッシング(用無し)」と罵り、それが最後の悲劇の引き金となる・・・

ニューヨークの野外撮影と質屋内のセット撮影が巧みに編集され、全体的にものすごいパンチのある画面づくりになっており、そこへクインシー・ジョーンズの音楽がかぶさる。
ロッド・スタイガーは、この映画の3年後に『夜の大捜査線』でアカデミー賞主演男優賞を受賞するが、この映画の演技の方が優れている。

ナザーマンがマリリンに言う台詞が印象深い。
あなたは「知っている」というが、わたしは「経験した」。

評価は★★★★★(5つ)です。

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2019年映画鑑賞記録

新作:2019年度作品: 4本
 外国映画 4本(うちDVDなど 0本)
 日本映画 0本(うちDVDなど 0本)

旧作:2019年以前の作品: 6本
 外国映画 4本(うち劇場鑑賞 1本)←カウントアップ
 日本映画 2本(うち劇場鑑賞 2本)
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この記事へのコメント

ぷ~太郎
2019年03月27日 15:00
良さげな作品ですね。でもあまりに暗くて、観たらストレスが溜まってしまうかも。すくなくとも私向きではありませんね。残念です。

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