『リグレッション』:オカルト映画のように始まりながら、最終的には米国の暗部を描く @DVD・レンタル
昨年秋に小規模ロードショウされた『リグレッション』、DVDで鑑賞しました。
タイトルのリグレッションとは、後戻り、退行、改悪などの意味です。
ポスターデザインが不気味な上、監督・出演者とも興味が惹かれたので、DVDになったら観ようと思っていた作品です。
さて、映画。
1990年、米国ミネソタ州の田舎町。
17歳の娘を暴行したと父親が出頭してくる。
刑事のブルース(イーサン・ホーク)が取り調べるが、父親は当時の記憶がないという。
そこで心理学者レインズ教授(デヴィッド・シューリス)の支援を得て、退行催眠療法を施し、事件前後の記憶を引き出すことにした・・・
というところから始まる物語で、引き出された記憶によれば、父親は悪魔崇拝集団の一員で、儀式のために娘に暴行を働いたと告白する。
一方、教会に匿われている娘アンジェラ(エマ・ワトソン)に聴取を行うが、彼女も当時のことについては語らない。
悪魔崇拝集団に生命を狙われる危険があり、聴いたブルースにも被害が及ぶとも言う・・・
映画冒頭で、米国では多数の悪魔崇拝集団による事件が起きていて、この物語も実際に起こった事件に基づいている、と字幕で出るので、早々にネタバレかぁとガッカリして観はじめたのだけれど、アレハンドロ・アメナーバル監督の粘りつくような陰鬱な雰囲気の演出で引き込まれてしまいます。
悪魔崇拝集団は、どんなことをしているのか? 儀式とは、どんなものなのか・・・・
少しずつ事件の端々がみえてくるにしたがって、ブルース刑事はどんどんと憔悴していき、遂には、実際に起こったのか、それとも幻覚なのか、儀式の一端を垣間見るようになります。
こうなると観ている方もどんどんと陰鬱になっていきますが、そこいらあたりがこの映画の面白さ。
しかし、実際に起こった事件に基づいている・・・と冒頭に出たので、着地点は実際的なところのはず。
つまり、モンスター的な悪魔は出てこない。
出るとしても、悪魔崇拝集団の全貌が明らかになるぐらい、と予測していると・・・
ここからはネタバレ。
ひとは見たいものしか見ない。
逆にいうと、見たくないものは見えない。
見たいとと思うと、何でもかでも、そのように見える。
いわゆる、幽霊の正体見たり枯れ尾花・・・なのだけれど、みんながみんな枯れ尾花を幽霊だと信じ込んでしまうと、枯れ尾花を「幽霊」と呼んでしまう。
劇中、台詞で登場する「集団ヒステリー」もそのひとつで、「悪魔崇拝集団の仕業」と思い込むように、世論も刑事の見立ても操られている。
いや、今回の事件で操っていたのは「犯人ひとり」だけなのだが、事件捜査に用いられた退行催眠療法がそれを増長していた。
そして、もっと世論を操作しているのが、神の名の下で活動している教会で、かれらはそれを無意識下で行ってる・・・と事件が解明されます。
オカルト映画のように始まりながら、最終的には米国の暗部を描いたアトム・エゴヤン監督『デビルズ・ノット』『白い沈黙』に近い着地点です。
アレハンドロ・アメナーバル監督自身のフィルモグラフィでいうと、記憶を主題にした『オープン・ユア・アイズ』の系列で、『アザーズ』に近い演出作品といえるでしょう。
なお、製作はスペインとカナダの合作。
米国ハリウッド資本では、さすがに製作できない内容でしょう。
評価は★★★☆(3つ半)です。
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2019年映画鑑賞記録
新作:2019年度作品: 8本
外国映画 8本(うちDVDなど 0本)
日本映画 0本(うちDVDなど 0本)
旧作:2019年以前の作品:12本
外国映画10本(うち劇場鑑賞 3本)←カウントアップ
日本映画 2本(うち劇場鑑賞 2本)
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