『ストーカー』 (1979) アンドレイ・タルコフスキー監督:圧倒的な映像と散りばめられた暗喩の数々

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神奈川県の川崎市市民ミュージアムでソ連SF映画の特集上映があるということで出かけてきました。
今回上映されるのは4本。
アンドレイ・タルコフスキー監督の『惑星ソラリス』と『ストーカー』、コンスタンチン・ロプチャンスキー監督の『死者からの手紙』と『ミュージアム・ヴィジター』。
観たのは『ストーカー』と『死者からの手紙』の2本です。
まずは『ストーカー』から。

ソビエトだと思われるが、時代・場所とも不明。
隕石だが宇宙船だかが落下し、落下地点周辺は「ゾーン」と呼ばれ、軍の管理下に置かれ、立入禁止になっている。
ゾーンの奥には、希望が叶えられる「部屋」があると噂されている。
妻と娘と三人で暮らす男(アレクサンドル・カイダノフスキー)は「ストーカー」と呼ばれるゾーンの非合法の案内人。
これまで何人もの人を案内してきた。
今回は「作家」(アナトリー・ソロニーツィン)と「教授」(ニコライ・グリンコ)のふたりを案内することになった・・・

といったところから始まる物語で、初公開からしばらく経った頃に1度観ていますが、内容や映像はあまり憶えていませんでした。

巻頭からしばらくはモノクロ映像で、ベッド脇に置かれた丸テーブルに乗ったグラスがカタカタと動くところ始まり、電車が通る音が大きく聞こえることから、列車通過の振動によるもの、だと思わせます(が、これはラストへの伏線)。
ベッドでは、男の家族三人が寝ています。

作家と教授と合流した男は、警察の追っ手を振り切り、電動トロッコでゾーンの奥へと進んで行き、少し開けたところに出、そこで画面がカラーに切り替わります。
なので、ゾーンの外側がモノクロ、内側がカラーなのか・・・と思い、概ねその通りなのですが、終盤、水辺に男三人が眠ったあたりで、そのモノクロ/カラーの法則は崩れます。

この、モノクロ/カラーの法則が崩れるのも無意味ではないはずで、希望が叶えられる「部屋」に近づくことで、ゾーンの内側と外側に区別がなくなり、ゾーン内部の神秘性が外側に侵食してきた、と思われます。

では、ゾーン内部とは何なのか。

荒廃した外側と比べると、草木も生え、水も流れていて、草はらに朽ちた戦車などがあるところからは「国破れて山河在り」という言葉を連想させます。
そして、件の部屋への道筋は常に変化し、道のガイドはナットを結んだ白い布、概ねの方向は決まるが定かではなく、かつ、後戻りはできない・・・
そういう意味では、人生の暗喩に他ならないでしょう。

件の部屋の直前には長いトンネルがあり、その手前は小さな砂山がいくつも並んだ伽藍洞の空間、その手前が大量の水・・・
この並び、どことなく、人間が生まれ出てくる産道に似ているような気がします。

そして「部屋」の直前の階段手前には、またしても、腰まで浸る水。
これは、もしかして「洗礼」の暗喩なのか・・・
ならは、「部屋」は、告解、懺悔の部屋なのか・・・

けれど、三人は三人とも「部屋」に入らずに戻ってきます。

戻ったゾーンの外側は、モノクロの世界。
そこで、唐突に、男の妻は、男との結婚の成り行きを観客に向かって語ります。
男はあまり取り柄がないが善いひとなので、苦しい生活の中でささやかな幸せが見つけられるだろうと思って結婚した云々、と。

妻が語る話、ゾーンの中で男が引用する聖書の一節などから、キリスト教的宗教の暗喩なのだろうか・・・と思っていると、巻頭の「動くグラス」がもう一度登場。
それは、男の娘が動かしているもので、冒頭のそれもそうだったことがわかります。
ならば、この娘は、ある種の救世主的存在ということなのだろうか。

と、いろいろとわからないことは多いのですが、圧倒的な映像力と緩慢ともいえる語り口で、画面から目が離せませんでした。

評価は★★★★☆(4つ半)です。
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2019年映画鑑賞記録

新作:2019年度作品: 9本
 外国映画 9本(うちDVDなど 0本)
 日本映画 0本(うちDVDなど 0本)

旧作:2019年以前の作品:16本
 外国映画12本(うち劇場鑑賞 4本)←カウントアップ
 日本映画 4本(うち劇場鑑賞 2本)
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  • ストーカー 

    Excerpt: 地上に突如出現した不思議な空間”ゾーン”。 このゾーンの奥には人間の願いをかなえる部屋があるという…。 SFサスペンス。 Weblog: 象のロケット racked: 2019-03-02 09:46