『1987、ある闘いの真実』:民主主義=ひとりひとりの人権を認めるかどうか @名画座
名画座2本立て鑑賞の2本目は『1987、ある闘いの真実』。
こちらも力作。
2本立てでお得感ありですが、続けて観ると少々疲れてしまいますね。
さて、映画。
1987年の韓国。
光州事件から7年を経て、全斗煥大統領による軍事独裁政権はますます色濃くなっている。
現政権に反対する民主化運動も激しくなってきているが、政府はその取り締まりを強化している。
名目は、北との連携、共産主義者、いわゆる「赤色分子(アカ)」である。
そんな中、公安部に相当する警察部門内で、暴力的な取り調べにより、ひとりの大学生が命を落としてしまう。
警察組織は、心臓麻痺による病死と片付けようとしたが、実際は拷問であったことが新聞記者のひとりに漏れてしまう・・・
というところから始まる物語で、事件隠蔽に奔走する警察及び政府関係者と、事件の真相を追う検事や記者、さらには行き過ぎた軍事政権に疑問を抱いている看守や、民主化運動の中心人物や学生たちといった多岐多様な人々が描かれていきます。
事件の真相が世間に公表されるのか・・・といったサスペンスで始まった映画は、先に挙げた人々の多層的な行動により、ひとつの事件だけでなく、民主主義の根底、つまりは、ひとりひとりの人権を認めるかどうか、という問題へと発展・深化していきます。
なので、誰が主役、誰が脇役、ということはなく、最初に登場し、主役かと思われた検事は途中はまるで登場しないことになります。
また、民主化運動側だけでなく、警察側組織もほぼ同じ程度の割合で描かれ、体制維持のためにトカゲの尻尾斬りにあう下級刑事などの処遇も見どころが多いです。
このような民主主義を獲得するための運動が韓国で行われていたのが、わずかに30年前、というのも驚かされるわけですが、さて、現在の日本に目を向けると、はてさて・・・。
民主主義=ひとりひとりの人権を認めるかどうか、ということを考えると、なんだか格差が広がってしまって、ひとりひとりの人権なんて認めていられないよ、というようなところまで来ているような感じがするのですが。
評価は★★★★(4つ)です。
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2019年映画鑑賞記録
新作:2019年度作品: 4本
外国映画 4本(うちDVDなど 0本)
日本映画 0本(うちDVDなど 0本)
旧作:2019年以前の作品: 8本
外国映画 6本(うち劇場鑑賞 3本)←カウントアップ
日本映画 2本(うち劇場鑑賞 2本)
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この記事へのコメント
これは本当にみどころがある作品でした。
このような史実を隠すことなく映画化できる時代が来て本当に良かったと思います。
このような暗黒時代を描けるようになったのは本当によかったと思います。
日本映画でも一時期、この手の実録物も撮られたこともあったのですが、そんな力はもう望めないのでしょう・・・