向田邦子ドラマ傑作選:『終わりのない童話』~『小鳥のくる日』 @BS12 トゥエルビ

今年に入ってからBSで向田邦子の短編小説などを原案にしたTBSドラマの連続放送があったので、忘備録として簡単な感想などを記しておきます。
ストーリーはBS12からの転載です。
特記以外は脚本・金子成人、監督・久世光彦です。

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1月8日放送『終わりのない童話』 1998年作品

昭和14年。
夫を戦地で失った寺崎かなえ(田中裕子)は、今は東京・池上にある実 家で母親・里子(加藤治子)たちと生活している。
かなえの弟・庄一郎(勝村政信) は亡父と同じ商工省に入り、末っ子の菊江(田畑智子)はまだ女学生だ。
ある日、かなえは津雲浩太郎(石堂淑朗)という初老の男が捨てていった原稿用紙を拾う。
従兄 弟の修造(萩原聖人)によれば、津雲は元大学講師で左翼の理論的指導者だった。
だが、獄中で転向を宣言してからは娘・滝子(小泉今日子)と世間の目を逃れるように 暮らしているという。
気になったかなえが原稿に目を通すと、それは書きかけの童話 だった。
結末が知りたくなったかなえは津雲の住所を調べて、彼を訪ねる...。

【感想】
久世&金子コンビでときどき登場する左翼くずれの男の話だが、転向した左翼の重鎮が初老なので、ドラマに厚みが少なからず厚みが出た感じ。
石堂淑朗は本職は脚本家。無口な初老男を好演している。
とはいえ、このシリーズで左翼が出てくると、変なハナシになっているように感じて、お尻がむず痒い。

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1月15日放送『女の人差し指』 1986年作品 脚本:寺内小春

昭和15年11月。
菊坂家は軍人遺族の一家で、長女・文子(田中裕子)の婚約者・ 三村(小林薫)も上海駐在中だが、出征前に婚約解消を申し出ている。
そんな三村に 文子は「未亡人になっていもいい」と返事をした。
ある日、公用で帰京するといって いた三村から「帰レナイ」と電報が入った。
文子は落胆し、仕方なく母・里子(加藤 治子)、妹・あき子(洞口依子)と提灯行列に参加して気を紛らわせた。
ところが里子たちとはぐれ、帰宅途中暴漢に襲われた文子は、危ういところを連城(四谷シモ ン)という男に助けられる。
数日後、文子は連城の住まいを訪れた。
彼は以前から足 が悪い上、先日の暴漢との格闘で怪我をし寝込んでいた。
連城はどうも貧しい物書き のようで、文子は医師を呼び介抱してあげた。
それ以来文子は連城に親しみを覚え、 彼の元へたびたび通うようになる...。

【感想】
ちょっと夕餉の支度をしながらだったので、はじめの方はチラ見程度。
なので、作品そのものについてはどうこう言えないのだけれども、とにかく四谷シモ ンの男ぶりがいい。
彼はこの後も本シリーズの常連になるのだが、本作の役柄が荷が勝ちすぎたのかどうか、その後は近所の若い医者の役ばかりを演じている。

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1月22日放送『眠る盃』 1985年 脚本:柴英三郎

昭和16年正月、父・完治(小林亜星)、母・里子(加藤治子)、予科練から一時戻 ってきた兄・新一らに囲まれて、陽子(工藤夕貴)は「おせち」の席についた。
何かと言うと怒り出す完治を気遣いながら一同食事を済ませると、陽子は里子の父・周造 (森繁久彌)のところへ料理を届けてほしいと言うのだ。
かつてはトビのカシラとし てその名を馳せた周造だが、軍とケンカしてからは仕事の方もパッとしない。
いまや 弟子の為吉(イッセー尾形)と細々暮らしていた。
その周造もかわいい孫がわざわざ 来てくれたというので喜ぶ。
そして、陽子を引き連れて出入りのお屋敷・中沢家へ年 始の挨拶に出向いた。
かつてそこには里子の友人・静枝(八千草薫)がいたが、その 静枝も軍人の元へ嫁いでもう 20 年になる。
周造は中沢家を訪ねて仰天した。
静枝が 帰ってきていたのだ。
嫁いだ娘が元日から夫を放って実家に戻っているのはおかしい と周造は怪しむが...。

【感想】
これもまた、夕餉の支度をしながら前半を観たのだけれど、田中裕子&小林薫のコンビになる前の作品。
年の離れた頭に想いを寄せる八千草薫がよく、『男はつらいよ』でのマドンナ役の延長線上のような感じ。
イッセー尾形と渡辺えり子がちょっと恋仲だったりというのは、当時の舞台事情が窺い知れて面白い。

1月29日放送『冬の家族』 1985年 脚本:柴英三郎

【感想】
昭和 31年を舞台に、桃井かおり主演だが、内容はあまり憶えていません。
父親が小林亜星なので、貫太郎とダブってしまって・・・

2月5日放送『わが母の教えたまいし』 1989年

昭和12年秋。
父を早くに亡くし、三姉妹と母だけの結城家に長女・祝子(田中裕子)の婚約者・川島次郎(小林薫)が訪れる。
祝子は婚約してから3年経つが、健康に自信がないことを理由に結婚を延期してきた。
医師は全快と太鼓判を押すが、なぜか踏ん切りがつかない。
また、三女・いさ子(曽根由加)は"自分はよその家の子なのでは"という妄想が強かった。
亡き父の指は細かったが「自分の揺りかごをゆすってくれた男の指は日に焼けて太かった」と主張するのだ。
そんなある日、亡き父が面倒をみた元ヤクザの仙造(田村高廣)が1年ぶりに福島から上京することに。
母・里子(加藤治子)は気のせいか少しはしゃいでいるように見えた...。

【感想】
田村高廣が『無法松の一生』の延長線上にあるような初老の男を飄々と演じている。
ストーリーの核心は母親にあるのだが、抑制した女の情念のようなものを感じさせる。

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2月12日放送『隣りの神様』 1990年

昭和14年夏。
宮部麗(曽根由加)が女学校から帰ってくると、いつもの通り姉の笙子(国生さゆり)が二階の病室から外を眺めていた。
笙子は心臓の病気で、外出を禁止されている。そんなとき、窓から剣道具を担いだ学生風の青年(中村橋之助)が歩いているのが見えた。
笙子の表情を読んだ麗は、いきなり「こんにちはぁ!」と叫ぶ。青年は驚き、笙子は赤くなった。
同じ日、本郷白山に嫁いでいた長女の彦乃(田中裕子)が離縁して戻って来た。
宮部家には父がおらず、母・里子(加藤治子)と三姉妹の暮らしが再び始まった。
彦乃が戻って半年後、昭和15年の元日の夜。突然、古い知人・大沢(すまけい)の娘・則子(築山万有美)が玄関に飛び込んできた。
則子は「駆け落ちしたので家に置いてほしい」というのだが...。

【感想】
国生さゆりが上手い。2時間サスペンスぐらいでしか見たことがなかったが、かなり上手いし、美人である。
中村橋之助は台詞のない役だが、それがいい。
最後、このシリーズの中では珍しく死人が出て哀しい話なのだけれど、巷をにぎわす「赤マント」のエピソードが剽軽に最後を締めていて、好感なハナシ。

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2月19日放送『華燭』 1992年

太平洋戦争直前の昭和16年10月、溝呂木家では長女・佐和(田中裕子)に見合い話が持ち上がっていた。
しかし、6年前に母の梅子(加藤治子)が家庭を捨て若い画家の元に走って以来、家事の一切を切り盛りしていた佐和は、
大学教授の父親・要(小林薫)と、幼い頃患った熱病の後遺症が残る妹・滝子(相楽晴子)を置いて嫁に行く気など全くない。
植物研究一筋の要も口とは裏腹に佐和を手離したくなかった。しかも、佐和は要の弟子・市太郎(坂東八十助)と密かに付き合っていた。
市太郎は佐和に結婚を申し込んだが、返事は控え、要に相談する。だが要は「佐和次第」と言うばかりで決して賛成しているとは思えなかった。
そんな要の気持ちを察してか、佐和は市太郎に婿養子になってくれなければ難しいと言い出した。
自分も跡取りの身である市太郎は直接要に願い出たが、要は相変わらず「本人次第」と突っぱねる。
そんなある日、家を出て行った母の梅子が6年ぶりに帰ってきた...。

【感想】
今回放送の中でも異色の一篇。
久世版の小津安二郎作品といったところ。
とにかく、小林薫が笠智衆のまんまで、そんな笠智衆的父親が奔放な妻に翻弄されつつも、長女との父娘愛の異様さに気づく・・・と、『山の音』的なところもある。

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2月26日放送『空の羊』 1997年

昭和13年、東京・池上。12年前に父を亡くした桂木家は、女ばかりの4人家族。
長女・松乃(田中裕子)は夫が戦死し、いまは実家に。そして母親の里子(加藤治子)と次女・五海(戸田菜穂)、三女・七重(田畑智子)とつつましく暮らしていた。
そんなある日、叔父の富之介(名古屋章)が酔っぱらって磯島光太郎(小林薫)という落語家を引っぱってきた。
その磯島は池上で探し物があるという。松乃は、がさつで調子がよくて、どこか信用できない磯島を好きになれなかったが、その後も磯島はおかまいなしに桂木家にやってきた。
奇妙な関係が続くうちに、磯島が天涯孤独の身だと知った桂木家の人々は次第に磯島と打ち解けていくが...。

【感想】
シリーズ常連の小林薫なら、どんな役でもできるんじゃないか・・・などと思ったかどうかしらないが、久世&金子のコンビが彼に無茶振りをした感もある作品。
落語家なので、これまでとは口調が一変。
さらにカッポレまで踊らされる・・・
兄・妹の間の恋愛・・・ならば、ちょっとヴィスコンティ的だが、そこいらあたりを巧みに回避しているあたり、脚本も上手い。
光太郎の修正の秘密を知るかんざし職人の親方の三木のり平もいい味である。

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3月5日放送『風を聴く日』 1995年

原沢家の長女・絹子(田中裕子)が母・里子(加藤治子)の看病を口実に実家に戻ってきた。
絹子の夫・安村は 1 年前に中国で戦死し、今は義弟・公作(鶴見辰吾)との再婚話が持ち上がっている。
次女・晶子(小泉今日子)は出版社に勤め、末っ子の愛子(林美穂)はまだ女学生だ。
家長であるはずの父・浩二郎(菅原謙次)は 1 年半前に出奔したきり音信不通で、一家の生活は浩二郎の弟・浩三(藤田敏八)が面倒を見ている。
そんなある日、晶子が女連れの浩二郎を見かけたと絹子に打ち明けた。
絹子と晶子は里子に内緒で浩二郎を待ち伏せし、その家を探し出す。
突然訪れた二人の娘に驚きの色を隠せない浩二郎。久々に再会し家族の現状を語る娘に、浩二郎は身勝手を詫びるが...。

【感想】
出奔した父が帰ってくるハナシなのだけれど、ま、こういうハナシでは「いけしゃあしゃあと帰ってくるなぁ」と思う方なので、話自体もこの間観たばかりなのに忘れてしまっている。
だが、そういえば、最後に父親は、雪の日に行倒れてしまい、そこいらあたりは、なんとなく潔い結末のように感じたりもする。
次女の勤務先の同僚で、彼女に気を寄せている男性役に中村扇雀。
このシリーズ、よく歌舞伎俳優を起用する。

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3月12日放送『小鳥のくる日』 1999年

昭和 15 年。東京・池上で神林里子(加藤治子)は 3 人の娘たちとつつましく暮らしている。
最初の夫との死別のあと、彼女は順造(小林薫)と再婚したが、彼は 17 年前に失踪し行方不明になっていた。
里子は近所の娘たちに裁縫を教え、長女のみさお(田中裕子)は嫁いで数年で夫が病死、今は実家に戻っていた。
そんなある日、順造がひょっこり家に戻ってくる。

【感想】
再び、小林薫が父親役。演技の質はやはり笠智衆。
元中堅官僚で出奔したが、ひょんなことで帰還する父親だけれど、往生際が悪い。
いや、そういっちゃいけないのかも、「どの面下げて帰ってきてるんじゃ!」と母親も娘も言って欲しいところ。
ま、次女の戸田菜穂は、面と向かって言うけれど。
田中裕子とは血の繋がっていない親子という設定なので、どこか危うい方向に行きそうだけれどいかない、微妙なところ。
いつもは小林亜星のテーマ曲がのべつ鳴りやまないのだけれど、本作では内容にあわせて洋楽「モッキンバード・ヒル」が使われている。

ということで、一応、今回放送分はこれで全部。

かならずドラマに登場する池上本門寺裏の階段は、全六段の「大坊坂」のよう。
機会があれば訪れてみたいところです。

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