『楽園』:島国ニッポンのムラ社会を描く力作 @ロードショウ・シネコン

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『菊とギロチン』『64 ロクヨン』の瀬々敬久監督最新作『楽園』、ロードショウで鑑賞しました。
原作は『怒り』『悪人』『さよなら渓谷』の吉田修一
映画化作品をこのように並べると、自ずと今回の作品もどのような映画かわかるというもの。
さて、映画。

近くに山並みが続く田舎町。
ある日、ふたりの小学生女児がY字路で別れた後、ひとりが行方不明になってしまう。
町では捜索隊を組織して懸命に探すが、赤いランドセルが川端で見つかったほかは何も持つからなかった。
それから12年。
再び同じY字路で、またもや女児が行方不明になってしまう・・・

といったところから始まる物語は、いわゆる犯人探しのミステリーのようにみえるが、映画の焦点はそこにない。

描かれるのは、島国ニッポンのムラ社会。
小さな共同体を維持するために余所者・異分子を徹底的に排除する、というもの。

物語は概ねふたつで、それぞれ吉田修一の連作短編に基づいている。

ひとつめは先に書いたY字路の物語。
余所者と目されるのは、文字どおり移民(本人たちは難民と言っているが)の青年。
タケシという青年を綾野剛が演じている。

12年後に起こった事件、そして12年前の事件の犯人と決めつけられ、村人たちに追われ、結果、焼身自殺をしてしまう。

ふたつめは、親の介護のために故郷に戻った中年男の物語。
介護のためのUターンを村のひとびとは、「立派だ」とはいうものの、一度村を棄てて出ていったことに変わりはない。
さらに、養蜂で村おこしをいうに至って、異分子とみなされる。
徹底的な排除により、怒り心頭に達した男は、村人たちを惨殺してまわる・・・

戦前に起こった「津山三十人殺し」を彷彿させる中年男・善次郎を演じているのが、佐藤浩市

このふたつの物語で描かれる排他的悪感情は凄まじい。
田舎のことだと決めつけることはできず、現在の都会のコミュニティやSNSのなかでも同様のことは起こっている。
SNSでは、ただ直接的な接触がないだけ。

だから、観ていて恐ろしい。よそ事、とはおもえないから。

そして、ふたつの物語をつなぐ役割が杉咲花演じる紡(ツムグ)という少女(12年後には成人しているが)。

紡はタケシにも善次郎にも悪感情は抱いておらず、むしろ、他の国から来た存在、別の世界をつなぐ人としてみているのだろう。
なので、紡は都会へ出て、ひとりで生きていこうと決意する。

タイトルの「楽園」という言葉は終盤2度登場する。

ひとつは、タケシが語る台詞の中。
そこでは、「ディストピア」としての意味を語るのに用いられている。

ふたつめは、ラスト。
紡の幼馴染のヒロ(村上虹郎)が彼女に投げかける台詞で、ここでは文字どおりの意味で使われているが、これはこの作品では余計なことだったのではありますまいか。
製作者サイドは、いわゆる「明るい希望」を表すようなラストにしたかったのだろうが、この台詞でガクッと腰砕けになってしまいました。

とはいえ、かなりの力作です。

評価は★★★★(4つ)としておきます。

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2019年映画鑑賞記録

新作:2019年度作品:83本
 外国映画64本(うちDVDなど11本)
 日本映画19本(うちDVDなど 4本)←カウントアップ

旧作:2019年以前の作品:77本
 外国映画52本(うち劇場鑑賞13本)
 日本映画25本(うち劇場鑑賞10本)
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この記事へのコメント

2019年10月26日 12:41
確かに、広呂のあの一言は余計でしたね。
それぞれが描く「楽園」とは?と思わせるだけで、充分だったと思います。
力作ではあるのですが、腑に落ちない部分が多くて、私はツッコミだらけのレビューになってしまいました。(笑)
りゃんひさ
2019年10月26日 14:05
トリトンさん

コメントありがとうございました。
たしかに、ツッコミだらけのレビューでしたね。ひとつのところでツッカカッてしまうとツッコミ続けてしまいますね。わたしも、よくあります。
そういうのは精神衛生上よくないので、ありそうだなぁという映画はできるだけ観ないようにしていますが。
じゃむとまるこ
2019年10月26日 22:44
☆4、評価高いですね。
近所の映画館でも上映しているし観たいのですが、今は出かけるわけにいかず家に詰めています。
仕事も忙しくなってきていて観るのは難しいかな、でもDVDになってからだと多分観ないかな、という・・・
綾野剛が観たいのですけど。

排他的悪感情は日本全体を覆っているように思います、全体が内向きの村社会になっている気がします・・・ネット村だとか・・
これって戦前と同じような状況になってきているな~、映画も暗いけれど現実も暗い・・というか酷いというか・・
りゃんひさ
2019年10月26日 23:47
じゃむとまるこさん

コメントありがとうございました。
「島国ニッポンのムラ社会」というのは、一応、日本全体の意味で記しました。
しばらくは上映していると思うので、落ち着いたならばご鑑賞くださいませ。