『帰郷』 ハル・アシュビー監督 (1978) :これもひとつの「戦争映画」 。いま観る意義は大きい@DVD

帰郷ハル・アシュビー.jpg

買い置きDVDでの鑑賞その2。
先に観た『チャンス』に引き続いて、ハル・アシュビー監督作品『帰郷』です。
『チャンス』と同じく初公開時にも観ているので2度目の鑑賞ですが、あれから40年(!)が経ちました。
さて、映画。

1960年代の米国西海岸。
海兵隊の大尉・ボブ(ブルース・ダーン)を夫に持つサリー(ジェーン・フォンダ)。
激化するベトナムに夫を送り出した後、ボランティアとして海兵隊基地内の付属病院で働くことを決意する。
そこに送り込まれてくる兵士たちは、皆、当然にして傷病兵。
その中にひとり、かつてのハイスクールのクラスメートでフットボール部主将だったルーク(ジョン・ヴォイト)と出逢うが、彼は戦場で傷つき、下半身不随になっており、ストレッチャーで這って移動していた・・・

といったところから始まる物語は、いってみれば銃後のメロドラマ風。

公開当時の謳い文句も「誰も傷つけずに愛しあうことが ふたりにはできなかった」であるから、セールスポイントは「恋愛」だろう。

が、現在観てみると、ストーリーはそのとおりなのだが、印象はかなり異なる。
ドキュメンタリー畑で鍛えたハスケル・ウェクスラーのカメラが、登場人物たちをリアルに生々しく捉えていることもあるし、ハル・アシュビーの演出もリアリズムに徹している。
それもそのはずで、巻頭に描かれる基地内附属病院の傷病兵たちは実際のひとびとで、巻頭すぐのビリヤードをしながらの政治論議なども彼ら自身の言葉だから。

病院以外のシーンでもウェクスラーのカメラは冴えている。
独立記念日を祝うお祭りの様子、車いすバスケットボールの様子などは、ドキュメンタリー映画のよう。

そして、そのことが、この映画が「恋愛映画」の枠組みの中にあるにもかかわらず、別種の映画にみせてくれる。
個人的に感じたのは、銃撃戦の出てこない「戦争映画」。

登場人物の誰もが何かと闘っている。
半身不随のルークもサリーも、サリーの友人ヴァイ(ペネロープ・ミルフォード)も彼女の弟で帰還兵のビル(ロバート・キャラダイン)も。
ビルはその戦いに敗れて命を絶ってしまうが、サリーの夫ボブも同じく戦いに破れてしまう。

終局でルークは高校生を前にスピーチするが、その中で「敵は相手ではなく、戦争そのものが敵なんだ」と語る。
「きみたちは未来を選択できる」とも。

ベトナム戦争以後、幾度となく繰り返されてきた戦争を考えると、この言葉の意味は重く、重要度を増しているでしょう。

なお、中盤、ルークがFBIに監視されるのは、ルークの抗議行動が「アカ」とみられたためで、FBIの本来の目的が赤色分子の監視だということがわかる。
また、ボブとともに戦地に赴くヴァイの恋人ディンク役はロバート・ギンティだが、ギンティはこの映画の2年後に『エクスタミネーター』でベトナム帰りの復讐鬼と化している

評価は★★★★☆(4つ半)としておきます。

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2019年映画鑑賞記録

新作:2019年度作品:110本
 外国映画82本(うちDVDなど19本)
 日本映画28本(うちDVDなど 9本)

旧作:2019年以前の作品:81本
 外国映画56本(うち劇場鑑賞14本)←カウントアップ
 日本映画25本(うち劇場鑑賞10本)
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この記事へのコメント

じゃむとまるこ
2019年12月14日 23:34
こんばんは。
高評価ですね~。
今観る意義は大きい、に惹かれますが、DVDを購入しないと観られないんですね。
ハル・アシュビー監督作は「ハロルドとモード」「さらば冬のかもめ」を観ていますが、アメリカンニューシネマ独特のものがあります。
アメリカンニューシネマ的なものって今の時代に必要じゃあないかと思うので、やはり今観る意義は大きいということですね~。
りゃんひさ
2019年12月15日 00:16
じゃむとまるこさん

初公開時それほど話題にはならなかった(当時流行の女性映画の一篇と捉えられていました)のですが、心の釘にひっかかったままになっていた作品です。
TSUTAYAの一部店舗には在庫があるようなのでレンタルでも観ることができます(お取り寄せレンタル、というのもあるようなので)。
「アメリカンニューシネマ的なもの」は現在のアメリカ映画に欠如しているでしょうね。映画に限らず、ある種の内省的な要素といってもいいかもしれませんが。