『ゾンビ ディレクターズ・カット版』: 西部劇の砦ものの変型ではありますまいか @DVD

ゾンビ・ディレクターズカット1.jpg

日本初公開復元版も全国公開中の『ゾンビ』。
その版は観ているし、昨年秋に友人と会った際、「いろいろ版のある『ゾンビ』でいちばんいのはどれ?」と訊いたところ、「やはり、ロメロのディレクターズカット版でしょう」との意見をいただきました。
ま、そもそも、『ゾンビ』は初公開の時にしか観ていないので、ならば・・・ということで観たのが今回。
さて、映画。

原因不明だが、生者の肉を食らうだけのために死者が蘇った米国。
フィラデルフィアのテレビ局に勤めるフランシーン(ゲイラン・ロス)は、恋人のスティーヴン(デイヴィッド・エンゲ)から、「夜に友人ともにヘリコプターで脱出する。ついては、一緒に逃げないか」と誘われる。
ふたりとともにヘリで脱出したのはSWAT隊員のロジャー(スコット・H・ラインガー)とピーター(ケン・フォーレ)。
燃料も物資も乏しい彼ら4人が辿り着いたのは、郊外にポツンと建つショッピングモール。
モールのオープンスペースにゾンビたちは彷徨していたものの、メインのマーケットエリアは施錠されていたため、ゾンビの群れはいなかった。
フランシーンを含む4人は、そこでしばらくの間、立てこもることにした・・・

といったところから始まる物語で、日本における「ゾンビ映画」のエポックメイキング作品なので、いまさらの開設は不要かもしれない。
「日本における」と書いたのは、この作品に先立つロメロ監督の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』が劇場公開されていないから。
この映画が公開されるまでのゾンビといえば、ブードゥー教のそれで、呪文か何かで甦るパターンが多かったが、この映画では理由は「なし」。
とはいっても、日本初公開版では、冒頭に『メテオ』の一シーンを流用して、謎の惑星からの宇宙線か何かで死者が蘇るようになった・・・云々の説明がついていた(はず)。

だが、死者が甦る理由など不問で、映画中盤で「地獄が満員になったので、死者が行き場をなくして、地上にあらわれる」というような話を老いた祖父から聞かされたとSWAT隊員のひとりが言う。
それぐらいの理由で十分。
ゾンビ・ディレクターズカット3.jpg

映画は、『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』がスリラー・サスペンス要素が濃厚だったのに対して、アクション映画の要素が高い。

そもそも、立てこもり映画は西部劇でよくみられる形式で(西部劇で立てこもるのは砦ですね)、ショッピングモールを砦とみればまさしく同じ形式。
物資不足を解消のために、移動ルートを確保し、モール内のショッピングセンターゾーンへ物資調達しに行くあたりは、もっとハラハラドキドキのサスペンスがあってもいいんだが、ショット自体も拙く、編集も上手くないので、それほどハラハラ感はない。
(前半のアパートメントでの銃撃戦なども、位置関係がよくわからない)

モールの出入り口をすべて封鎖し、内部に侵入したゾンビも撃退して、快適な空間を得て数週間過ごすうち、どこからともなく、荒くれの生存者の一行がモールを襲撃し、ゾンビを交えての阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されるのが終盤。
(時間の経過は、カレンダーに×印をつけるのと、妊娠初期のフランシーンの下腹部が膨らむことで簡潔に示される)
終盤の三つ巴の地獄絵図は中盤以上に演出も荒っぽく、混乱に次ぐ混乱で、これは演出意図だろう。

最終的に、後からやって来た荒くれ集団はゾンビたちは略奪の限りを尽くした上で、かなりの犠牲者も出してモールから去ってい行くが、先にモールを占拠した4人も、ゾンビの侵入を食い止めることはできずに、生き延びたフランシーンと黒人SWAT隊員のふたりがヘリコプターで去って行くところで映画は終わるが、その後のエンドクレジットのタイトルバックでは、モール内に集まったゾンビの群れの画に、かなりお気楽なサーカスもどきの音楽が被さります。

この映画を、西部劇の枠組みで捉えなおすと、

ショッピングモール=砦=アメリカ大陸
ヘリコプターでやって来る4人=幌馬車に乗ってやって来た開拓民
荒くれ集団=開拓者が開拓した土地を奪おうとする無法者
ゾンビ=先住民

となるだろう。
とすると、最後にゾンビたちが勝利するこの映画、奥底で意味するところは、はなはだ興味深い。
ゾンビ・ディレクターズカット2.jpg

なお、この映画におけるゾンビに対する巷間の解釈のうち、以下は誤りだと思います。

「ゾンビに噛まれるとゾンビになる」

ゾンビに噛まれたからといってゾンビになるわけではなく、噛まれると傷が重篤なため二・三日で死んでしまう(これは台詞で語られる)。
また、早ければ、わずかな時間で、失血死してしまう。
死ぬと、それが動ける状態であれば、ゾンビとなって甦る・・・

というわけで、伝染性ではないでしょう。
ただし、劇中で、伝染性ではないか、という専門家の意見がテレビで流されるので、「ゾンビに噛まれるとゾンビになる」と解釈され、後々のゾンビ映画では基本設定として盛り込まれたものではないかしらん。
(吸血鬼の設定との混同かもしれませんが)

エポックメイキング的作品ですが、演出や編集などはやはり相当荒っぽいので、評価としては★★★☆(3つ半)としておきます。

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2020年映画鑑賞記録

新作:2020年度作品: 8本
 外国映画 5本(うちDVDなど 0本)
 日本映画 3本(うちDVDなど 0本)

旧作:2020年以前の作品: 8本
 外国映画 4本(うち劇場鑑賞 1本)←カウントアップ
 日本映画 4本(うち劇場鑑賞 0本)
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