『ダブル・サスペクツ』:警察の活動を通じて仏北部ルーベの街を描くデプレシャン監督作品 @DVD

ダブル・サスペクツ.jpg

先ごろレンタルリリースされたレア・セドゥが出演の劇場未公開サスペンス映画『ダブル・サスペクツ』、DVDで鑑賞しました。
サスペンス映画の棚に並んでいたのですが、監督はアルノー・デプレシャン
デプレシャンがサスペンス映画を撮るのかしらん?と訝しいのですが・・・
さて、映画。

フランス北部、ベルギーとの国境にほど近い街ルーベ。
その街の治安を預かるルーベ中央警察署の署長はアラブ系フランス人のダウド(ロシュディ・ゼム)。
移民の多いこの街では犯罪が絶え間ない。
署に向かう途中でも、自動車が炎上しているのを発見する。
被害届を提出に来た男を尋問すると、辻褄の合わないところがある・・・

といったところから始まるハナシで、ルーベは監督アルノー・デプレシャンの故郷だそうだ。
冒頭の字幕「この映画の中で起こる小さな事件も大きな事件も、いずれも事実である」が示すように、娯楽系サスペンスではない。

前半はダウド署長を中心に様々な事件が描かれていきます。
中庭のある集合住宅での火災騒ぎ、署長の姪の失踪事件、未成年女子の暴行事件と複数の事件が並行します。

数々の事件と警察の活動を通じて、故郷ルーベを描こうとするのがデプレシャン監督の試み。
原題も「ROUBAIX, UNE LUMIERE」(ルーベ、ある一条の光)であり、製作者のパスカル・コシュトゥーグレゴワール・ソルラもケン・ローチ監督作『家族を想うとき』『わたしは、ダニエル・ブレイク』などを手掛けているので、娯楽系サスペンス映画ではなかったわけ。
近いのはことし2月にロードショウされた故郷モンフェルメイユ舞台にしたラジ・リ監督の『レ・ミゼラブル』だろうが、それよりももっと生っぽい感じがします。

後半になると、前半で登場した中庭のある集合住宅で老女の殺害死体が発見され、容疑者が近所に暮らすふたりの女性クロード(レア・セドゥ)とマリー(サラ・フォレスティエ)で、ここにきてようやく『ダブル・サスペクツ』と相成る次第。

ここからのデプレシャン監督の演出は粘り強い。
ふたりの容疑者から自白を引き出そうとする警察陣の取り調べと、二転三転、さらに互いに食い違う証言が見どころ。

デプレシャン監督の演出は、ひとつのシークエンスを長めに撮るのが特徴で、それは『そして僕は恋をする』の恋愛グダグダはなしでも、この映画でも変わらない。
そして、そのような中から、人物ひとりひとりの心底が表れてきます。
心理分析的にみるとふたりの関係は共依存のように見えるのだが、それをただのネタとして扱わないあたりが興味深く、事件に対するサプライズやどんでん返しといったドラマとしての面白さを超越していきます。

惜しむらくは、やはりデプレシャン監督作品としては尺が短いことで、特に前半、数多の事件が説明的・散文的に描かるだけで、この部分もあと1時間、少なくとも30分ほど欲しかったところです。
ま、そんなに長くなると、商業映画としては不向きなんですが、ならばデプレシャン監督作品はそもそも商業映画としては不向きといえるかもしれません。

評価は★★★☆(3つ半)としておきます。
ダブル・サスペクツ仏版.jpg

本国版ポスターにはサスペンス色が乏しいです。
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2020年映画鑑賞記録

新作:2020年度作品: 58本
 外国映画47本(うちDVDなど17本)←カウントアップ
 日本映画11本(うちDVDなど 0本)

旧作:2020年以前の作品: 67本
 外国映画43本(うち劇場鑑賞 4本)
 日本映画24本(うち劇場鑑賞 2本)
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この記事へのコメント

ぷ~太郎
2020年08月17日 16:13
そうですね、デプレシャン監督は商業映画には不向きなのかもしれません。ひと昔前なら、3時間の作品でも観る人はいましたが、今はほとんど歓迎されませんね、特に若い子には。私は筋があってないようなデプレシャン監督作品はやたら好きですが、2時間くらいの作品はあまり面白いとは感じません。確かに尺が短すぎるのです。この作品も勇んで借りてきましたが、物足りない結果となりました。どんでん返し系のサスペンスだと思って借りた人にとっては、ひどい作品となったことでしょうね。