『二百三高地』:勝ち戦を題材にしての堂々たる反戦映画 @劇場再上映

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東映本社のビル1階及び地下の封切り劇場では、コロナ禍で封切り作品を延期している影響で、旧作のデジタル上映が行われています。
ひと月ほど前に、今村昌平監督の『楢山節考』に鑑賞しましたが、今回は『二百三高地』、1980年製作の3時間を超える大作です。
公開当時、コテコテの軍国主義映画との批判があったと記憶していますが・・・
さて、映画。

東アジア地域での欧米の植民地政策が活発化した19世紀末~20世紀初頭。
ロシアは南下政策をとり、朝鮮半島の支配権を目指す日本と正面から衝突、外交による交渉も破綻、ついには戦争による解決しか道は残されていなかった。
しかし、大国ロシアとの国力の差は歴然。
開戦直後にロシア軍に大打撃を与え、短期間のうちに講和に持ち込む・・・
目標は朝鮮半島西に集結しているロシアの艦隊群。
その艦隊群を地上から攻撃するための地として、旅順が選ばれた。
指揮官は乃木希典中将(仲代達矢)・・・

といったところから始まる物語は、当時の政治情勢、日本軍の戦闘作戦を地図を用いて紹介しながら、屍累々となった旅順攻囲戦を描いていきます。

たしかに、ロシアの旅順要塞を陥落させ、ロシア艦隊に大打撃を与えたこの戦いは日本軍の勝利を描いているので、コテコテの軍国主義映画・好戦映画のように見えるが、その実、まるで違っていました。
勝ち戦を題材にしての反戦映画です。

軍の上層部の主要人物としては乃木希典のほかに児玉源太郎が登場し、児玉は丹波哲郎の迫力のある演技でカリスマ性をもって描かれますが、直接の指揮官、乃木は愚直な将、多くの兵士を殺してしまった将として描かれます。

対する庶民側は、トルストイを敬愛している小学校教員の小賀(あおい輝彦)を中心として、北陸金沢の地で応召された5人の兵卒たちが物語の中心です。
中でも、小賀は親ロシアから前線での戦闘を潜り抜けるうちに反ロシアに転じ、最終的には、素手での殺し合いにまで達します。
この骨太なドラマツルギーは、昨今は見られないものです。

そして、それより何より、延々と続く屍累々の戦闘シーン。
難攻不落なロシアの要塞に突撃し、銃弾に倒れていく兵士たちの姿が、これでもかこれでもかと繰り返されていきます。

積み重なる死体の山。
戦争の本質、それは殺し合い。
インテリな親ロシアの青年小賀が最期に行った素手での殺し合いと本質は同じなのです。

反戦映画の題材としては、負け戦が選ばれることが多いです。
アメリカのベトナム戦争もの、日本の太平洋戦争もの・・・
そこには、どこか、「負けて」「被害者になった」感がつきまといます。

しかし、戦争の本質は殺し合いです。
勝ち戦であっても、死体の山は築かれる。

さだまさしの歌う主題歌「防人の歌」。

海は死にますか、山は死にますか・・・
春は死にますか、秋は死にますか・・・
愛は死にますか、心は死にますか・・・
わたしの大切なふるさともみんな 逝ってしまいますか・・・

これは

愛するひとが死ぬことで、海も山も、春も秋も、死んでしまうでしょう。
愛も心も ふるさとも みんな逝ってしまいます。

と言っているのです。

勝ち戦を題材にしての堂々たる反戦映画です。

評価は★★★★☆(4つ半)としておきます。

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2020年映画鑑賞記録

新作:2020年度作品: 63本
 外国映画49本(うちDVDなど18本)
 日本映画14本(うちDVDなど 2本)

旧作:2020年以前の作品: 68本
 外国映画43本(うち劇場鑑賞 4本)
 日本映画25本(うち劇場鑑賞 3本)←カウントアップ
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