『血ぬられた墓標』『血みどろの入江』:イタリア怪奇映画の父マリオ・バーヴァを観る @特集上映

前回の『ザ・ゴーレム』に続いてホラー映画です。
『血ぬられた墓標』『血みどろの入江』』、いずれも監督はイタリア怪奇映画の父マリオ・バーヴァです。
日本での劇場公開本数は少なく、バーヴァの名前を知ったのは?
遺作の『ザ・ショック』公開の1979年でしょうか(その後、テレビシリーズ1エピソードを監督しています)。
息子のランベルト・バーヴァも『デモンズ』シリーズなどの監督さんですね。
さて、映画。

血ぬられた墓標.jpg

まずは『血ぬられた墓標』(1960年製作、61年日本公開)。

17世紀のバルカン地方。
その地の王夫妻は悪魔とみなされ、弟によって殺される。
その殺害の儀式はおぞましいもので、内側に鉄鋲のついた悪魔の仮面を被せられ、火あぶりに処せられるというもの。
鉄仮面を被せられる直前、王妃(バーバラ・スティール)は、甦り、祟ってやると呪詛の言葉を吐く。
しかし、火あぶりの途中で雷鳴がとどろき火は消え、王は地中に、王妃は城の霊廟に葬られた。

それから2世紀。
クルヴァヤンとゴロベクというふたりの博士が廃墟のような城へ立ち寄り霊廟を探索するうち、王妃の棺を見つけて、こともあろうか、クルヴァヤン博士が負った手の傷から流れ出たわずかな血が王妃を甦らせてしまう。
そして、廃墟と思われた城には、城主と息子と娘がひっそりと暮らしており、娘カーチャ(バーバラ・スティール二役)は処刑された王妃そっくりだった・・・

といったところから始まる物語で、ニコライ・ゴーゴリの小説に基づいています。

とにかく、冒頭の処刑のシーンが素晴らしく、陰影の濃いモノクロ画面はおぞましさに溢れています。

その後の展開は、甦った王妃であるが、まだ血が足りず、棺から出られない。
虜にしたクルヴァヤン博士を使って、カーチャの肉体を手に入れようとするのだが・・・と現在のホラー映画と比べると品のいい展開です。

全編を通じて、カメラマン出身だったマリオ・バーヴァの優れた映像感覚を楽しみながら、かつ肝を冷やすという秀作に仕上がっています。

バーバラ・スティールは、とにかく大きな目が印象的ですが、歯並びが悪く(正面の前歯2本ほどがやや奥に引っ込んでいる)、時折、品のない表情になるのが残念です。

評価は★★★★(4つ)としておきます。

血みどろの入り江.jpg

続いて『血みどろの入江』(1971年製作、日本未公開)。

長い桟橋のある入江近くの屋敷に住む老夫妻。
車椅子の夫人が背後からロープで首を絞められ、梁に半宙吊りの形にされる。
車椅子を蹴り飛ばし、夫人の手による遺書めいた文書を机に置いた犯人。
しかし、その犯人も何者かによって鉈で切り殺されてしまう。
屋敷近くに暮らす在野の昆虫学者夫婦は「夫人は自殺、夫は行方不明」と噂されているというが・・・

といったところから始まる物語で、観客としては「夫が夫人を殺し、その夫が何者かに殺された」ということは知っているわけで、どういう話かしらん?と思っていると、とにかく出てくる人物が次から次へと殺されます。

この作品にインスパイアされたのが『13日の金曜日』だという解説がチラシにはあったので、その手の連続殺人・血まみれスラッシャー映画の先駆けといえます。

が、マリオ・バーヴァ自身も脚本に携わっており、ストーリー的には「連続殺人鬼による連続殺人」ではなく、「誰もがみんな狂っていき、連鎖反応的に殺人事件が連続する、いわば殺人連鎖」みたいなもの。
なので、後のスラッシャー映画とは物語の根本は違うのではないでしょうか。

登場人物を整理しておくと

屋敷の夫人:代々からの入江の所有者。
その夫(屋敷の主人):夫人と別れたがっている、また夫人所有の入江などの土地を金に換えたがっている。

夫妻の弁護士:入江を保養地として開発するために、手に入れたがっている。
弁護士の秘書:弁護士の愛人。弁護士の目論見を達するために屋敷の夫を誘惑する。

在野の昆虫学者:保養地として開発されると生態系が壊れ、昆虫がいなくなるので、屋敷の夫婦とは仲が悪い。
昆虫学者の妻:夫との仲はあまりよくない。

屋敷の主人の娘夫婦:屋敷の主人の前妻の子(らしい。夫人のことは母と呼んでいないので)。トレーラー暮らしで裕福でない。入り江の権利を手に入れたがっている。ふたりの子どもがいる。妻役はクローディーヌ・オージェ

入江近くの小屋に暮らす青年:屋敷の夫人が不倫の末に産んだ子。母を溺愛している。夫人亡き後の入江の正当な権利者。

都会からやって来た4人の男女:うちひとりの女性が入江で屋敷の主人の死体を発見する。

といった人物が、殺し合いをしていく終盤は、もうあっけにとられるというか何というか。

バーヴァ自身の唯一のお気に入り作品らしく、冒頭の入江のパン撮影や、素早いズームアップとの組み合わせなど、撮影技術が凝りに凝っています。
また、今回の上映素材は原盤の発色状態があまりよろしくないのですが、写真で見ると、陰影の濃いカラーで、撮影者としては、ほんとうに大満足のシーンだったのだと思います。

映画の出来という意味では『血ぬられた墓標』に軍配を上げますが、へんてこりんな面白さという意味では、この作品の方を上位にとります。

評価は★★★☆(3つ半)としておきます。

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2020年映画鑑賞記録

新作:2020年度作品: 63本
 外国映画49本(うちDVDなど18本)
 日本映画14本(うちDVDなど 2本)

旧作:2020年以前の作品: 72本
 外国映画47本(うち劇場鑑賞 6本)←カウントアップ
 日本映画25本(うち劇場鑑賞 3本)
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