ミス・マープル『パディントン発4時50分』『鏡は横にひび割れて』『カリブ海の秘密』@DVD

1980年代半ば~90年代はじめに製作されたジョーン・ヒクソンによる「ミス・マープル」シリーズを順に観ていますが、今回は3本まとめてレビューです。

ミス・マープル・パディントン発.jpg

まずは『パディントン発4時50分』。
原作ではシリーズ7作目。ドラマ制作では8作目にあたります。

マープルの旧友マクギリカティ婦人がパディントン発4時50分の急行列車に乗り、セント・メアリー・ミードのマープルも元を訪れる。
彼女が言うには、「急行列車が先に出た各駅停車を追い抜こうとして横に並んだとき、その各駅停車列車の中で誰かが女の人の首を絞めているのを目撃したのよ」。
警察では、婦人の言うことは列車の中で読んでいた推理小説の影響、白日夢だとして調査を打ち切り。
しかし、何かひっかかるものを感じたマープルは、独自の調査として、線路沿いの脇のクラッケンソープ邸に姪のルーシー(ジル・ミーガー)をハウスキーパーとして送り込む・・・

といった内容は、お馴染みのもの。
この『パディントン発4時50分』は人気作品なので過去に映画化作品もあるが、マーガレット・ラザフォード版の映画『夜行特急の殺人』、カトリーヌ・フロ版『奥さまは名探偵 パディントン発4時50分』(トミーとタペンスものに改編)のどちらも探偵役本人が邸に潜入しています。
なので、姪のルーシーが登場するのは珍しい。

今回のドラマ版で素晴らしいのは、冒頭の殺人事件の目撃シーン。
2台の蒸気機関車が並走している様子は鉄道ファンなら感涙ものではありますまいか。
蒸気機関車なので、スピードが遅く、追い抜くのに時間がかかり、その分、じっくりと(?)事件を目撃することができます。

邸の潜入捜査以降はあまり面白いものでもないですが、ルーシーのロマンスが物語に花を添えるあたりは微笑ましいです。

評価は★★★(3つ)。

ミス・マープル・鏡は横に.jpg

つづいては、『鏡は横にひび割れて』。
原作シリーズ8作目。ドラマ制作では12作目(最終話)にあたります。

『書斎の死体』事件で死体が投げ込まれたゴシントン・ホール。
所有者のバントリー大佐もいまは亡き人。
残された未亡人ドリーは邸宅を売却するが、買主は大女優マリーナ・グレッグ(クレア・ブルーム)。
夫の映画監督ジェースン・ラッド(バリー・ニューマン)とふたりで暮らすことになった。
お披露目のガーデンパーティのある日、パーティ会場でセント・メアリー・ミードの住人で元・野戦病院勤めの婦人ヘザーが頓死してしまう。
心臓発作によるものと思われていたが、実は毒物による中毒死。
そして、彼女が毒物を飲んだグラスは、もともとはマリーナが手にしていたものだった・・・

といった内容で、マリーナ殺しを狙ったものが誤ってヘザーを殺してしまったのか・・・とミス・マープルは推理します。

ドラマ制作よりも先に作られた映画『クリスタル殺人事件』でもお馴染みの内容なので、犯人もキャスティングで見当がつくはず。

見どころは、事件が起こるガーデンパーティの描写がひとつ。
映画よりもきらびやか華やかな雰囲気で演出されており、村人総出の様子が微笑ましいです。

また、ドラマ版最終話に相応しく、これまでの登場人物が登場。

お馴染みスラック警部は警視に昇格している様子で、今回の捜査は相棒のレイク巡査とマープルの甥クラドック警部。
『書斎の死体』事件のドリー・バントリーに、『牧師館の殺人』の牧師、マープルのもうひとりの甥で作家のレイモンド・ウェストも登場します。
なお、レイモンドを演じるのは本シリーズの脚本家T.R.ボーウェン。
他の作品でもレイモンドは登場しますが、ボーウェンがレイモンドを演じるのはこの1本だけの楽屋オチですね。

評価は★★★★(4つ)としておきます。

ミス・マープル・カリブ海の.jpg

さいごは『カリブ海の秘密』。
原作シリーズ、ドラマ制作とも9作目にあたります。

甥のレイモンドによって転地療養を勧められたミス・マープル。
やってきたのは英領西インド諸島のバルバドス。
しばらくは平穏無事で編み物をするだけの日々だったが、マープル相手に昔話をしていたパルグレイヴ少佐が毒殺される。
少佐は「殺人で罪を免れた男がその後同じような犯罪を犯し・・・」などと植民地警察時代の話をしていたが。
事件を見逃せないマープルは、同じく静養にきていた有力者のラフィエル(ドナルド・プレザンス)の力を借りて、犯人を突き止めようとするが、その矢先、第二の殺人が起きてしまう・・・

といった内容で、配役は違えどもラフィエル氏は『復讐の女神』事件の発端となる人物。

皆が静養しているホテルを経営するケンドール夫妻の妻モリー(ソフィー・ウォード)が妄想を見だし、衰弱していくあたりで犯人の見当は付くでしょう。

事件そのものはクリスティ作品ではよくパターンなので、それほど面白くありません。
なので、舞台をカリブ海の英領西インド諸島にしたのかしらん、と思います。

なお、ヒロイン、ソフィー・ウォードがスレンダー美人で、『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』のヒロイン役のひと。

評価は★★★(3つ)。

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この記事へのコメント

ぷ~太郎
2020年09月09日 15:17
「パディントン発」は仰せの通り冒頭がすばらしい。その分後の展開は平凡ですね。いつも後半は忘れてしまいます。「鏡」はトリック自体はたいしたことがなく、話的にも私はさほど面白いとは思っていませんが、このシリーズの最後という意味合いではよかったと思います。「カリブ海」はもっと毒殺される大佐の義眼について、ここがマープルが犯人を確信する点なので、ていねいに描いてくれたらと思ってしまいました。
りゃんひさ
2020年09月09日 20:36
>ぷ~太郎さん

「パディントン発」は何度も映画化ドラマ化されている割には、後半の展開がいつもいまいちで、本作が面白いほうでした。