『海の上のピアニスト イタリア完全版』:船を降りないことがストンと腑に落ちました @ロードショウ

海の上のピアニスト・イタリア完全版.jpg

ここのところの映画館での鑑賞は旧作に食指が動くことが多いです。
今回はジュゼッペ・トルナトーレ監督1998年製作の『海の上のピアニストイタリア完全版です。

第二次大戦も終わり、しばらく経った頃。
英国の港に近いある町の楽器店にトランペットを売りに来たひとりの男(プルイット・テイラー・ヴィンス)がいた。
彼が、最後の思い出に・・・と演奏した曲にハタと気づいた老店主は、1枚の割れて繋ぎ合わされたレコードを取り出し、蓄音機にかけ始める。
流れるはピアノ曲。
だが、トランペットで男が吹く曲と同じ。
男は「これは俺と同じ船に乗っていた男が演奏したものだ。そして、彼は生まれてから一度も船を降りなかった」と話し出す。
船を一度も降りなかった男(ティム・ロス)は、ラストネームを生まれた年にちなんで、ナインティーンハンドレッド(1900年)と名付けられていた・・・

といったところから始まる物語で、1999年にロードショウされたインターナショナル版よりも50分近く長くなっています。

はじめに断っておくが、2時間のインターナショナル版を観たときの印象は最悪でした。
ある種の寓話であるはずの物語が、悪夢を見たような感じで、主人公が広い世界に降りて行かないあたりに腹立たしささえ感じていました。

ですが、今回の長尺版では、広い世界に降りて行かないことが、ストンと腑に落ちました。

製作されたのは20世紀(1900年代)の終わり。
世はグローバル化が始まった頃。
グローバル・スタンダードの名のもとに、米国流経済の標準化が席巻し始めた時代でした。
その頃のわたしは、バリバリのビジネスマン、昭和流にいうと「モーレツ社員」です(時代は平成でしたが)。
グローバル・スタンダード=広い世界と思いこんでいたので、観ていて、ものすごく居心地が悪かったのです。

20年の時を経て、グローバル化の歪みも多くみるような昨今、ナインティーンハンドレッドが言う「限られた鍵盤だから、無限の音楽を奏でることが出来る」が納得できました。

映画は長くなった分、その限られた鍵盤=海の上の生活を、より長く丁寧に描くことができました。

また、ヴァージニアン号で生まれた赤ん坊は処女受胎に倣っていることもわかり、映画の寓話性も強く感じることができました。
ナインティーンハンドレッドが突然ピアノの超絶技巧を発揮するのも、処女母の息子であるので、然るべきといったところ。
嵐で激しく揺れる船内を事も無げに歩いてくる彼は、水上を歩いたとされるキリストのようにも見えますね。

音楽シーンもたっぷりとあり、堪能の3時間でした。

なお、終盤、短いながらも強烈な印象を残すヒロイン役メラニー・ティエリーは『あなたはまだ帰ってこない』の主役のひとですね。
この作品では、まだ10代後半でした。

評価は★★★★☆(4つ半)としておきます。

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2020年映画鑑賞記録

新作:2020年度作品: 64本
 外国映画50本(うちDVDなど18本)
 日本映画14本(うちDVDなど 2本)

旧作:2020年以前の作品: 75本
 外国映画50本(うち劇場鑑賞 7本)←カウントアップ
 日本映画25本(うち劇場鑑賞 3本)
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この記事へのコメント

2020年09月10日 18:32
今作も鑑賞予定で、楽しみに待っている作品です。
まるっきり未見なので、ならば4K版より完全版を見ようと思っています。良かった!
りゃんひさ
2020年09月10日 21:52
>トリトンさん

完全版をお薦めします。