『プリズン・サークル』:更生プログラム自体も興味深いし、映画の中で用いられるアニメーションも興味深い @名画座

プリズン・サークル.jpg

名画座ドキュメンタリー映画2本立て、『はりぼて』に続いて鑑賞したのは『プリズン・サークル』。
受刑者同士の対話をベースにて更生を促すTCというプログラムを採用している日本で唯一の刑務所での様子を写したもの。監督は坂上香

この更生プログラムは60年代以降、欧米で広まっているもので、ソーシャルワーカーの助けも借りながら、受刑者同士が事件当日はもとより、自身の生い立ちも含め、
自身がどのように考え・感じてきて、いま現在、どのように考え・感じているか、
被害者・被害者家族、自身の家族が事件をどのように受けとめ、いま現在、どのように考え・感じているか、
それを通じて、ひととしてどうあるべきかを考えて、更生につなげるもの。

刑務所=矯正施設、反省を促し、刑に服する、というイメージだが、おおきく異なる取り組みのように感じます。

個人的には「反省」=自責の念に駆り、「わたしが悪うございました、もうしわけありません」をひたすら繰り返す、そして、それを強要する、というイメージがあるのですが、
そもそもの字面からは「振り返ってかえりみる」なので、何が何でも「わたしが悪うございました、もうしわけありません」というわけではありません。
(自責の念が不要、といっているわけではありません)

なので、このTCプログラムは、自省・内省することで、事件の原因の本質を発見し、復帰後の社会生活につなげようというもの。

ビジネスのPDCAサイクルでいう、C(チェック)からA(アクション=行動)につなげようとするところと同じといえるでしょう。
(なお、Pはプラン=計画、Dはドゥ=実行、です)

で映画は、そのような更生プログラムの様子を4人の20代の若者を通じてみせていきます。

円座になってのプログラム、個人の過去の心境の吐露、なぜ事件に至ったのか・・・ 
そのようなことを、ホワイトボードの前にソーシャルワーカーが立っておこなったり、ソーシャルワーカーの代わりにプログラム経験の長い受刑者が行ったりします。
プログラム経験の長い受刑者は、新たにプログラムに加わった受刑者から話を引き出すのが上手く、そこいらあたりにも驚かされます。

また、監督による個別のインタビューもあり、受刑者が語る子どもの頃の話をアニメーションとしてみせる、という工夫もされています。
アニメーションの監督は若見ありさというひとで、モノクロームを中心とした砂絵とでもいうような雰囲気のあるアニメーション。

このアニメーション部分も魅力的で、映画のオープニングとクロージングも、若見監督のアニメーションで、内容は、4人の受刑者のひとり、オレオレ詐欺詐欺の受け子として逮捕された青年がプログラムを受ける中で創作した物語。
「むかしむかし、あるところに、嘘しかつけない男の子がいました・・・」で始まるその物語は、その青年の心中を物語の形で表したもので、この物語が寓意性も高く、物語としてかなり卓越しています。
刑期が短かったその青年については出所するところまでカメラが写し、本作のエンディングに相応しい映像です。

なお、当該プログラムを受けた後に出所したひとびとの様子もカメラは捉えています。
彼らの中には、結婚し子どもをもうけて社会生活になじんだ者もいれば、出所後すぐに除染作業にまわされ、極悪な環境だったため逃げ出し・・・といったひともいます。
後者の青年は、まだなかなか社会生活になじんだ雰囲気ではありません。

映画のエンドクレジット前に当該プログラムを受けた受刑者の再犯率は他の刑務所を出所した者よりもかなり低いことが字幕で示されますが、受刑者本人が変わることはもちろんのこと、受け入れる社会の側も変わっていかなければならない、と改めて感じました。

評価は★★★★(4つ)としておきます。

<追記>
本年は『すばらしき世界』『ヤクザと家族 The Family』、本作と同系統といってもいいような映画をよく観ているなぁと感じ、国立映画アーカイブスで上映されていた『竜二』の再鑑賞の機会を逃したのが残念です。

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2021年映画鑑賞記録

新作:2021年度作品:12本
 外国映画 6本(うちDVDなど 0本)
 日本映画 6本(うちDVDなど 0本)

旧作:2021年以前の作品:43本
 外国映画30本(うち劇場鑑賞 1本)
 日本映画13本(うち劇場鑑賞 4本)←カウントアップ
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この記事へのコメント

ぷ~太郎
2021年05月25日 16:16
結構混んでいた劇場でコロナを心配しつつ観たのですが、観て良かった作品でした。このプログラムはやる方もされる方も大変なエネルギーが必要だと感じましたが、実行する価値の高いものです。自分と言うものを突き詰めて向き合っていくことは大変なことだと改めて思い知りました。でもそれを乗り越えて社会に復帰している元受刑者達は、皆いい顔をしていましたね。それがすごく印象的でした。
りゃんひさ
2021年05月25日 22:58
>ぷ~太郎さん

なにごとも真摯に向き合えば「いい顔」になるのだろうと思います。