『タイトル、拒絶』:救いようのない潔さ、または、諦めきった呪詛 @DVD

タイトル、拒絶.jpg

昨年11月公開の日本映画『タイトル、拒絶』、DVDで鑑賞しました。
主演は最近の注目株・伊藤沙莉。
とはいうものの、その実、群像劇。
さて、映画。

東京鶯谷にほど近い雑居ビルの中のとあるデリヘル店。
ここでスタッフとしてして働く若い女性カノウ(伊藤沙莉)は、もともとはデリヘル嬢として応募してきたのだけれど、初日早々怖気づいてしまい、スタッフとして働くことにしたのだった。
振り返ってみれば、自分は学芸会の「かちかち山」でもいち早く立候補してタヌキを演じた身。
周りの女の子たちのようにウサギにはなれない・・・そう思っていた。
そんなウサギのようなデリヘル嬢たちは、何のかんの言っても社会の底辺。
そりゃまあ、稼ぎのいい女の子もいるが、金があるだけ立場は底辺に変わりがない・・・

といったところからはじまる物語で、物語はそこで働く女たちと男性スタッフたちのエピソードの集積。

店いちばんの人気嬢・マヒル(恒松祐里)はいつもニコニコしていて、どんな問題も笑って受け流せてしまうようにみえるが、店長とも寝ていて、当然のことながら寝る度にお金を取っている。
十代の頃は、母親の機嫌を損ねないよう、母親のオトコの言いなりになって寝ていた。
いま稼いでいる金は、後から家を出て、もう子どもをもうけた妹(モトーラ世理奈)に生活費の一部として渡している・・・

もう中年のシホ(片岡礼子)は、その年齢のせいか客あしらいが上手く、稼ぎも悪くない。
事務所では黙っていることが多いが、時折、若い女の子たちを一喝することもある。
かつては人気キャバクラ嬢で、妻子持ちの常連客と不倫関係になって、相手の家庭を破滅させたこともある・・・

中堅どころのアツコ(佐津川愛美)は、とにかく態度が悪い。
客にもそうだが、仲間内にも悪い。
出勤も来たり来なかったりでスタッフ受けも悪い。
こんなところにいたくないのだけれど、こんなところしか自分を受け容れてくれない。
受け容れてくれるわけではなく、いさせてくれるだけ。
いや、いさせてくれているわけでもなく、ただ自分には居場所がないから・・・という思いが強い・・・

そのほか、運転担当の男性スタッフに純愛を寄せる女の子もいるが、彼女の思いは男には通じない。
こんな最下層にいるふたりで、肩ひじ張ってしか生きられないのは、自分も男も同じだと女の子は思うのだけれど、男の方は、その言葉は侮蔑にしか聞こえない。
そんなことは言われなくてもわかっているのだ・・・

また別の男性スタッフは、店の仕事の合間を縫って、店の女の子やスタッフには気づかれず、中年女性に金に買われて寝ている。
金を出してまで女性と寝たいなんて思わない。
いや、そもそも、もう女と寝たいなんて思っているのだろうか・・・

と、かなりの遣る瀬無いエピソードの連続で、日本社会の陰画の縮図のよう。

女性については、搾取されているというよりも、映画の中で使われている言葉どおり、「消費」されていることがよくわかり、消費するのが当然とおもっている男たちがいて、どうにも抗いきれないので消費されるしかないと諦めている女たちがいる。

こんなゴミのような自分の人生にタイトルなんて付けられない、そうモノローグで語るカノウの言葉が『タイトル、拒絶』の意味だが、自分の人生を肯定も否定も出来ないぐらいにどうしようもないのか、と憤りを感じる。
それは、カタルシスではないが、救いようのない潔さともいえるが、諦めきった呪詛ともいえる。

書いていて、ふと思い出したのが森崎東監督の『喜劇 女は男のふるさとヨ』『喜劇 女生きてます』『喜劇 女売り出します』のストリッパー斡旋の新宿芸能社を描いた「女」シリーズ。
70年代に描かれた女のバイタリティは昔物語だ。
ただ生きていくだけでも大変なことに、いまはなったのだと、改めて感じました。

評価は★★★★(4つ)としておきます。

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2021年映画鑑賞記録

新作:2021年度作品:34本
 外国映画20本(うちDVDなど 8本)
 日本映画14本(うちDVDなど 5本)

旧作:2021年以前の作品:67本
 外国映画42本(うち劇場鑑賞 4本)
 日本映画25本(うち劇場鑑賞 5本)←カウントアップ
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この記事へのコメント

ぷ~太郎
2021年08月18日 15:59
伊藤沙莉が好きなので興味をもって観ました。確かに底辺の人間模様。悪くはないが、もっと深堀りしてもよかったのかなとも思います。もう一つ、こっちに響いてくるものが欲しかったかな。
りゃんひさ
2021年08月18日 17:54
>ぷ~太郎さん

あ、響いてこなかったですか。
それはある意味、しあわせ、ともいえるかも。