『由宇子の天秤』:力作であることは間違いないが @ロードショウ

由宇子の天秤.jpg

9月中旬よりロードショウの『由宇子の天秤』、拡大公開のシネコンで鑑賞しました。
友人から聞いたところでは、ファーストランの単館系劇場では連日満席で、当日劇場で席を確保するのは至難の業とか。
数週間遅れでシネコンでも拡大公開されたので、ならば、ということで足を運びました。
さて、映画。

ドキュメンタリー監督の木下由宇子(瀧内公美)は、3年前に起きた女子高生自殺事件を追っていた。
自殺した女子高校生は、「彼女が通う教師と深い関係になり、結果として自殺」というのが世間で言われていることだった。
しかし、彼女の自殺の後、関係を持ったとされる教師は、身の潔白を記した遺書を残して、自殺。
遺書には、「学校に嵌められた」云々が書かれていた。
由宇子は、遺された女子高校生の父親を取材するとともに、教師遺族の取材を試みていた・・・

といったところからはじまる物語で、そんな矢先、学習塾を経営する父・政志(光石研)と塾に通う女子高校生・小畑萌(河合優実)が関係を持ってしまったことを知ってしまう・・・と展開し、ふたつの同じような事件の狭間で、由宇子は揺れ動くことになる。

3年前の事件については「真実」と、事件が引き起こした遺族の困窮した現在の生活を追うのだが、父が引き起こした事件については隠蔽する方向へ動いていく。

緊迫感を生む物語が展開され、観ている間は退屈はしないのだけれど、かといって惹き込まれていくところまではいかない。

どうしてだろうと観終わって考えたのだが、脚本はよく出来ているのだが、どうも頭でこしらえた物語といった感じが強く、描写にリアリティがあるのがかえって、その拵え物感を強く感じさせる結果となったのではなかろうかしらん。
描写的には、教師遺族(教師の母親)の描写がリアルで、演じている丘みつ子のリアルさには胸が痛くなります。

もうひとつ物足りなさの原因となっているのが由宇子のキャラクターで、ジャーナリズムの正当性を通そうとするがゆえのエゴイズムが滲み出す、いわば「汚れ役」なのだが、演じている瀧内公美の硬質的な雰囲気のせいなのか、脚本の書き込み不足なのかはわからないが、灰汁にまみれた感じがしないせいかもしれません。

それでも随所にいいシーンはあり、ここぞというときに由宇子が取り出して相手に本心を告白させるスマホなどは、小道具としても上手く、これがエンディングで効果的に使われている。

どこか物語の奥底や余白に潜む理解はできないが感じさせるものが足りないので、傑作・秀作とまではいかないが、2時間半を超える力作であることは間違いありません。

評価は★★★☆(3つ半)としておきます。

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2021年映画鑑賞記録

新作:2021年度作品:53本
 外国映画31本(うちDVDなど13本)
 日本映画22本(うちDVDなど 7本)←カウントアップ

旧作:2021年以前の作品:77本
 外国映画52本(うち劇場鑑賞 4本)
 日本映画25本(うち劇場鑑賞 5本)
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