『十三人の刺客』(1963年製作):時代劇の形を借りた「戦争映画」だった @東映70周年特集上映

十三人の刺客1953.jpg

1963年公開の日本映画『十三人の刺客』、東映70周年特集上映で劇場鑑賞しました。
ことし最後の劇場鑑賞。
「集団時代劇」の代名詞のような作品で、2010年に再映画化されていますが、どちらも未見。
監督は工藤栄一、脚本は池上金男(池宮彰一郎)。
さて、映画。

長く続く徳川の世の弘化元(1845)年九月、老中・土井大炊頭(おおいのかみ・丹波哲郎)の門前で、明石藩江戸家老・間宮が藩主・松平左兵衛斉韶(なりつぐ・菅貫太郎)の暴虐ぶりを訴えて割腹し果てた。
斉韶は将軍・家慶の弟であり、間宮の割腹は幕閣を動揺させ、土井をして非常手段に出ることを決意させる。
それは「斉韶暗殺」。
命せられたのは御目付役・島田新左衛門(片岡千恵蔵)。
大事のため集まったのは、新左衛門の盟友・倉氷左平太(嵐寛寿郎)、新左衛門の甥・島田新六郎(里見浩太郎)、剣豪・平山九十郎(西村晃)ら十一人。
狙いは斉韶の参勤交代、江戸から明石への帰途とすることとした。
中仙道の渡河を狙って奇襲を決行するも、明石藩側用人・鬼頭半兵衛(内田良平)の働きにより未遂に終わる。
島田新左衛門と鬼頭半兵衛は旧知の間柄。

次に計画したのは中山道尾張藩下の落合宿。
尾張藩家老・牧野靭負(ゆきえ・月形龍之介
靭負は、斉韶に息子・妥女(うねめ)とその妻を理不尽に斬り棄てられた怨みを抱いている。
必ずや味方をしてくれるはずと踏んだ島田新左衛門は、落合宿の宿場全体を買い上げ、罠を仕掛けることとした・・・

といった物語。
落合宿での決戦がはじまるまで刺客は十二人。郷士を自任する木賀小弥太(山城新伍)が加わり、十三人の刺客となる。

とにもかくにも全編に張りつめた緊張感がすさまじい。
そのすさまじさは様式美ともいえるような画面設定・構図による。
画面下半分に大きく庭を写したローアングルなど、おどろくべき構図が随所に登場する。

これが、前半の静的シーンの緊張感を高めます。

動的シーンは終盤の落合宿決戦に集約されるのだが、決戦の場を落合宿と決めるにあたって、街道宿場図を用いて、この経路とこの経路が想定されるが、気位の高い斉韶にはこちらの経路は取らないはず・・・と落合宿であるべき必然性があらかじめ刺客たちに伝えられるのですが、それは観客にも視覚的に伝えられます。
後に描かれる決戦シーンから翻って考えると、このシーンは戦争映画の図上作戦でしょう。

そして、仕掛ける罠。
袋小路などを施し、宿場町全体を迷路のように設える。
斉韶一行、五十数名を袋の鼠として、屋上から弓・槍・丸太落としなどで一網打尽とする計画。

この決戦シーンがこれまたすさまじい。
敵味方入り乱れての戦いで、いわゆるヒーロー活劇のような刺客たちのキャラクターを際立たせることを敢えてしていない。
(敢えてしていないのは、それまでのシーンで、各人のキャラクターを紹介するようなエピソードが描かれていないことからも推察できる)

この決戦シーン、どこかで観たような・・・と思ったが、戦争での塹壕における白兵戦にそっくりなのだ。
ふむふむ、時代劇の形を借りた「戦争映画」だったのか。

戦争映画なので、最後は屍累々であり、それまで刺客の中で剣豪らしい雰囲気を漂わせていた平山九十郎が、斉韶討取の報を聞いた後、無様に殺されてしまうという、戦争映画お決まりの「犬死」まで描かれています。

ただし、戦争映画ではなく、時代劇の矜持を示すシーンがひとつあり、それは島田新左衛門と鬼頭半兵衛の決闘シーン。
どちらも討ち死にするのだが、新左衛門は半兵衛に意図して討たれる。
「いかな主君といえども、主君を討たれた半兵衛は、わしを討たねばならぬ。武士の一分が立たぬ・・・」と。

なるほど。
先の戦争も同じ一分であったということか。

エンディングもまたヒーロー活劇とは程遠く、命拾いをした斉韶一行の武士のひとりが泥田の中で狂ったように笑って卒倒し、画面は白画面。
そこに「斉韶は明石帰藩後、病死とされた」というナレーションが流れる。
虚無感すら漂うエンディング・・・

傑作である。

評価は★★★★★(5つ)としておきます。

------------------
2021年映画鑑賞記録

新作:2021年度作品:73本
 外国映画46本(うちDVDなど18本)
 日本映画27本(うちDVDなど10本)

旧作:2021年以前の作品:113本
 外国映画82本(うち劇場鑑賞 8本)
 日本映画31本(うち劇場鑑賞 9本)←カウントアップ
------------------

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント